遺伝の常識からの逸脱
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遺伝の常識からの逸脱
- 塩基配列の変化なしに遺伝するもの -
武村 政春 (著)
DNAとはなんだろう
「ほぼ正確」に遺伝情報をコピーする
巧妙なからくり
ブルーバックス 講談社

(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
は、前回書いた通り、
前半、
「遺伝子の本体はDNAである」とか
二重らせん構造からの
巧妙な複製のしくみとか、
基礎知識としての
教科書的説明をしてくれている本だが、
後半、
話は意外な方向に話が広がっていく。
なので、本ブログでは
この「意外な方向」の話を
紹介したいと思っているのだが、
その前に、
どうしてもコレには触れておきたい。
2022年1月の記事
エピジェネティクス - 世代をこえて
でも記事ネタにした
「エピジェネティクス」についてだ。
本書においても
『エピジェネティクス
-「遺伝の常識」からの逸脱』
なる題のコラムで取り上げられている。
そして親から子へと遺伝するのは
DNAの塩基配列だけではなく、
DNAという物質に生じる
〝ある化学的変化〞
もまた引き継がれる、ということが
わかってきている。
細胞のDNAに、メチル化やアセチル化という
化学修飾が起こる。すると、
数ある遺伝子のなかであるものは発現し、
あるものは発現しないという選択が起こる。
その化学修飾のパターンがそのまま
子孫の細胞へと引き継がれることにより
たとえば、肝細胞は分裂しても
肝細胞のままでいられるわけだ。
(ここでいう化学修飾のパターン)が、
細胞が分裂してもそのまま
次の細胞に引き継がれるような
現象のことを、あるいは、
この現象を研究する学問分野を
「エピジェネティクス(後成的遺伝学)」
という
従来、ある個体が、
外部からなんらかの作用を受けて
ある形質を獲得したとしても、
その形質が生殖細胞の遺伝子に
塩基配列の変化として伝わらない限り、
「獲得形質の遺伝」はありえない、
とされてきた。
そうした「形質」の
もとになるとするならば、
獲得形質の遺伝という現象も、
エピジェネティクスの側面から見れば
「ありうる」ということになる。
いわば
「遺伝の常識からの逸脱」である
ともいえる。
たとえば、現在では、細胞のがん化にも
エピジェネティクスが関わっていると
考えられるようになってきたようだ。
塩基配列そのものは変化しなくても、
これらの遺伝子発現を調節するための
化学修飾が異常をきたすことで、
通常は発現しないはずの遺伝子が
発現してしまったり、
ふつうは発現するはずの
がん抑制遺伝子が発現しなくなって
しまったりすることが
発がんの原因になる、
ということも知られるようになってきた。
* DNAの塩基配列は
タンパク質の設計図ではあるけれど、
それに基づいて何が作られ
どう振る舞うようになるのか、
については、
塩基配列の情報だけが
すべてを握っているわけではない。
ということ。
* その発現に深く関わる
化学修飾自体が、
子孫の細胞へも引き継がれると
考えられている。
ということ。
遺伝まわりはまだまだワクワクするような
謎ばかりだ。
現在の分子生物学のなかでも
特に活発に研究がおこなわれている分野
らしい。
当初は、
「常識からの逸脱」だったかもしれないが、
その研究には、今は大きな期待しかない。
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