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2025年1月

2025年1月26日 (日)

黒目川 (3) 遡行

(全体の目次はこちら


黒目川 (3) 遡行

- 旧川越街道と市境 -

 

国土地理院のページ
「好きな色で標高を色分けした地図が作れる」
の機能をフル活用し、
低いところに集中してみようと
標高0mから5mおきに60mまで色を変えて
高低差地図を作ってみたら
こんな感じになった。

この図で、埼玉県と東京都の境、
埼玉県の新座市、朝霞市あたりに注目すると
Kuromegawakousei
大きく削られた二本のノの字が見える。
左側が柳瀬川で、右側が黒目川によるもの。

黒目川の方を
新河岸川との合流地点から
遡行してみよう、と
Kuromeday2j
その様子を
(1) 赤矢印から茶矢印
(2) 茶矢印から紫矢印
に書いて来た。

3回目の今日は、紫矢印
埼玉県 朝霞市 膝折(ひざおり)町
あたりから始めたい。
(ちなみに、黒目川全体の始点終点を示すと
 最上流:水源「さいかち窪」 :黄矢印
 最下流:新河岸川との合流地点:赤矢印
 となり、全長で約17kmとなる)

これまで、
まさに黒目川に沿って遡行してきたわけだが、
ここでちょっと黒目川を離れ
旧川越街道沿いを歩いてみよう、と
いうことになった。

川沿いから旧街道沿いに、の
浮気(?) のきっかけはこの本。

昭文社 旅行ガイドブック
 編集部 (編集), 吉村 忠 (監修)
埼玉スリバチの達人

(高低差散策を楽しむバイブル)
昭文社

(書名または表紙画像をクリックすると
 別タブでAmazon該当ページに。
 以下、水色部は本からの引用)

NHKの番組「ブラタモリ」の影響か
本屋では高低差をネタにした本を
よく見かけるようになった。
これもその一冊。

まずはこの膝折(ひざおり)という
名前の由来から教えてもらおう。

奇妙な地名の由来は
「小栗小次郎なる者が
 名馬鬼鹿毛で逃げてきたが、
 この地で膝を折って死んだ」
という話による。

膝が折れたのは人でなく馬だ。
東武東上線の朝霞駅は
かつて膝折駅だったが
1932年に改称されている。

14世紀、南北朝時代の戦乱で
高麗から来た5人の家臣が落人として
この地にたどりつき、原野を切り開いた、
との伝承が近くの一乗院にはあるらしい。

室町時代には記録もあるとのことだが、
いずれにせよ、江戸時代よりも
ずっと前から開けた場所
だったようだ。

【高麗家(こまけ)住宅 膝折宿 脇本陣】
Pa273931s
旅寵の建築様式を残す建物は
18世紀末のものと考えられているが、
内部は公開されていない。

【膝折宿 本陣牛山家があった場所】
Pa273929s
江戸時代に幕府が整備した宿場町は、
大名や天皇の勅使などが宿泊する
本陣と脇本陣がある。
本陣は土地の名主が務め、
膝折宿は牛山家

明治以降は政府に協力して建物が
郵便局になっているケースが多い

写真を撮ったのは2024年10月27日。
確かに郵便局の面影はあるが、
「局舎の老朽化に伴い
 2024年10月26日から閉鎖」
の張り紙があり、まさに閉鎖された直後。
元・膝折郵便局と呼ぶのが正確か。
ちなみに、左隣の門の表札には
しっかり「牛山」とある。

ところで上記の本の他に、
立教大学と武蔵野銀行が
産学連携により制作した
「ぶらって朝霞 朝霞の坂」まち歩きMAP
という小冊子も2024年10月に完成している。
Asakanosakas
表紙には
「本紙の情報は
 学生の取材や主観に基づくもので、
 必ずしも正確ではありません」
とあるが、
学生さんの主観も一緒に楽しみながら
いくつか坂を見てみよう。
(以下緑色部は冊子からの引用)

【かせぎ坂】
Pa273934s
車の後ろ押し専門の人夫がいて
駄賃を稼いだといわれるほどの急坂。

現在は急勾配がわかるのは
坂の上あたりのみになっている。

傾斜を
横から見ることができる坂はレア!
分度器で測ってみてはいかが?

この部分だけでも確かに急坂で
荷車の後ろを押して駄賃を稼いだ、は
容易に想像できる。

坂の上には
「膝折不動尊」が祀られている。
Pa273935s

【卵塔(ラントゥ) 坂】
Pa273940s
卵塔とは台座上に卵型の塔身をのせた、
禅僧に多く用いられた墓石のこと

路地裏に潜む坂、通学する中高生・・・
よみがえる青春の記憶と
この先にある青春の予感。
みんなの青春を重ねていこう!

確かに青春と坂道はなぜか絵になる。
坂の下には一乗院という寺院と墓所がある。

 

さてさて、坂道も堪能できたので、
旧川越街道への寄り道から
黒目川の遡行に戻ろう。

国道254号線と交わるあたりから、
上流を見るとこんな感じ。
Pa273941s

蛇籠による護岸部分もある。
Pa273943s

相変わらず流れは速く、
サギの仲間か白い鳥もいる。
Pa273945s

樋管も多く、
あちこちから流れ込んでいる。
水門がないと逆流も心配だが。
Pa273946s

【複雑な市の境界線】
ところで、このあたりは、
新座市と朝霞市の市境となる。
Mapionの地図で境界線を見てみよう。
Niizaasakasakaikurome
中央縦の緑帯が黒目川。
赤い線が市の境界線。
(左が新座市、右が朝霞市)

いったいどうしてこんな複雑な曲線と
なってしまったのだろう。

Pa273948s

川越街道やら坂道やらに寄り道しながら
紫矢印から深緑矢印まで歩いてきた3回目。
Kuromeday3j
黒目川歩きの見どころのひとつ、
妙音沢までもう少しだ。

黒目川遡行、次回も続けたい。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2025年1月19日 (日)

黒目川 (2) 遡行

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黒目川 (2) 遡行

- 崖線と急流 -

 

国土地理院のページ
「好きな色で標高を色分けした地図が作れる」
の機能をフル活用し、
低いところに集中してみようと
標高0mから5mおきに60mまで色を変えて
高低差地図を作ってみたら
こんな感じになった。

この図で、埼玉県と東京都の境、
埼玉県の新座市、朝霞市あたりに注目すると
Kuromegawakousei
大きく削られた二本のノの字が見える。
左側が柳瀬川で、右側が黒目川によるもの。

右側の黒目川の側を
新河岸川との合流地点から
遡行を始めたのが 前回
赤矢印から茶矢印まで来たので、
Kuromeday2j
第2回目の今日は、
茶矢印から紫矢印までの遡行について
記録しておきたい。

ちなみに、黒目川全体の始点終点を示すと
最上流:水源「さいかち窪」 :黄矢印
最下流:新河岸川との合流地点:赤矢印
となり、全長で約17kmとなる。

というわけで、
前回の続き、茶矢印の位置、
黒目川が東武東上線と交わる直前、
浜崎黒目橋あたりから始めたい。
Pa273898s

東武東上線をくぐると
並木に沿った道が続く。
桜の季節には賑わうことだろう。
Pa273901s

【崖線】
ところで、本ページ最初の高低図を
少し拡大して、
現黒目川の流域を赤の線で描くと、
こんな感じ。
Kuromegawakoutei1j
今は赤線の部分を流れているが、
過去、川が大きく暴れていたことが
削られた幅を見るとよくわかる。
川から見ると、崖が左側に現れたり、
場所によっては右側に現れたり、
今の流域からは少し離れていたり、
ほんとうに変化に富んでいる。

こんな感じで
Pa273913s
西側の川岸が続いているが、
よく見ると、崖線として
川から少し離れた部分が
かなり高くなっていることがよくわかる。
Pa273915s

下の写真、ちょっと見にくいが
正面中央の真っ直ぐに伸びる
長い階段がまさにその高さを物語っている。
Pa273914s

川岸から少し離れた建物が
どこから建っているのか、
つまり一階部分がどの高さにあるのか、に
注目しながらの川歩きが続く。
Pa273910s
崖線見学、といった感じの川歩きだ。
Pa273919s

【急流】
崖線と共に、歩いていて目に付くのは
「音を立てて流れる」急な流れだ。
それだけ急勾配ということなのだろう。

白く波を立てて流れている部分もある。
Pa273903s
Pa273918s
これらの音、どんな日本語で表現するのが
適切なのだろう?
語彙が貧弱で、いい言葉が浮かばない。
「せせらぐ」「せせらぎ」は
どうもfitしない気がするのだが。
Pa273920s
Pa273922s

【新高橋】
「Shintaka Brdg.」との表記がある新高橋。
高橋姓がポピュラーなせいか
「新=高橋」が最初に浮かんでしまうが、
もちろん正しくは「新高=橋」。
この橋、車道の両側に歩道用の橋が2本、
計3本の独立した橋が、
同じ位置に掛かっている。
(加えて水道橋も)

地上からの写真ではわかりにくいので、
Googleマップの航空写真に
助けてもらおう。
Shintakahashi
左から歩道、車道、水道、歩道。

地上から写真を撮るとこんな感じ。
Pa273909s
Pa273908s
なぜこんな贅沢な構成になったのだろう?

【アユを増やそう】
「年ねん減少する天然アユの増殖のため、
 アユが産卵した卵が、
 ふ化しやすいしやすい環境づくりです」
なる説明があり、アユを増やすための活動が
予告されているが、
最終的には 「無料アユの塩焼き 200尾」が
振る舞われるようだ。

ブラックジョークか、とツッコみたくなる。
Pa273917s

【河川敷占用許可標識】
川歩きをしているとよくみかける
河川敷占用許可標識だが、
Pa273905s
よく見ると「許可の目的」が
垂れ桜2本・藤4本・つつじ・・・」
になっている。
2本、4本と、なんとも細かい。
形式の堅苦しさと中身のアンバランスが
妙におもしろい。

茶矢印から歩いて、
紫矢印まで来た。
Kuromeday2j

黒目川遡行、次回も続けたい。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2025年1月12日 (日)

黒目川 (1) 遡行

(全体の目次はこちら


黒目川 (1) 遡行

- 古墳に寄り道してからのスタート -

 

国土地理院のページ
「好きな色で標高を色分けした地図が作れる」
の案内に従うと、標高を色分けした地図を
誰でも簡単に作ることができる。

色ごとに標高値の細かい設定が
自由にできるので、設定を変えるたびに
地形の様々な姿が色で浮かび上がり、
何時間でも遊べてしまう。

低いところに集中してみようと
標高0mから5mおきに60mまで色を変えて
高低差地図を作ってみたら
こんな感じになった。

この図で、埼玉県と東京都の境、
埼玉県の新座市、朝霞市あたりを
中心に見てみると、
大きく削られている二筋がはっきりわかる。

武蔵野台地の東端になるが、
まさに河岸段丘による崖線だ。
Kuromegawakousei
二本見えるノの字、
左側が柳瀬川によるもの、そして
右側が黒目川によるものだ。

というわけで、今回はこの黒目川の方を
歩いてみよう、ということになった。

黒目川は、東京都の
小平霊園内「さいかち窪」を水源とし、
埼玉県朝霞市で新河岸川に合流する
約17kmの川。
Kuromeday1j
最上流:水源「さいかち窪」 :黄矢印
最下流:新河岸川との合流地点:赤矢印

第1回目の今日は、
赤矢印から茶矢印の遡行について
記録しておきたい。

まずは最下流、
新河岸川との合流地点を目指す。

いつもの川歩きメンバで集まり、
JR武蔵野線 北朝霞駅より、
朝霞市コミュニティバスわくわく号に乗った。

今回は、合流地点に行く前に、
ちょっと寄り道をすることにした。
バス停「第二小学校」で下車。

【一夜塚古墳】
現在の朝霞第二小学校の
敷地内に位置するため
校内までは入れないが、
「一夜塚古跡保存会」による掲示板が
校外からも読める位置に立っている。

「朝霞第二小学校児童の皆さん、
 この小学校は今から1500年程前に
 この地方を治めていた
 豪族のお墓だったといわれる
 一夜塚古墳跡に建っています
・・・」

「この小学校は元お墓」、小学生なら
それだけでかなり盛り上がれそうだ。

そこから歩いて2分ほどのところには、
こんな案内図があり
Pa273847s
【柊塚(ひいらぎづか)古墳】
がある。
案内図の左下丸くなっている緑の部分は、
前方後円墳の円墳の部分だ。

後円部の径48m。
この円墳部分を含め今は整備された
歴史広場という公園になっている。
Pa273849s
中には、古墳の復元模型とともに
朝霞市教育委員会による
Pa273851s
「柊塚古墳は、黒目川を臨む
 武蔵野台地の東端に位置し、
 今から約1500年前に造られた
 有力者の墓
です。

 古墳の形は前方後円墳で、
 前方部の墳丘は
 後世の耕作などにより削られていますが、
 後円部の墳丘は、
 よく保存されています」

という丁寧な説明もある。

かつては、周辺に一夜塚古墳をはじめ、
多くの古墳が造られ、柊塚古墳を中心に
根岸古墳群を形成していたらしい。

まさに武蔵野台地の東端、
ここから川に向かって一気に下るが
古墳は高台にあり、
埼玉の大宮、浦和方面を臨むと
さいたま新都心の高層ビル群も小さく見える。
Pa273854s

古墳への寄り道はここまで。

そこから黒目川と新河岸川の
合流地点までは歩いて10分ほどだ。

途中、川岸を見ると、
二ヶ領用水の時も見た
蛇籠が護岸に使われている。
Pa273861s

川沿いの一部は、2024年10月27日時点で、
キバナコスモスをはじめコスモス満開で
ほんとうに美しい。
Pa273870s

合流点までやってきた。
Pa273874s
左側が新河岸川で、右側が黒目川。
手前から奥に流れている。
ちょっとわかりにくいので、
Googleマップの衛星写真に助けてもらおう。
Kuromegoryuu
川は左から右(⇒)に流れており、
上が新河岸川、下が黒目川、
合流点の写真は、Y字の股の先端から
下流方向を撮ったものだ。
上流方向にV字に見える細い道と
黒目川を見ると
Pa273873s
こんな感じだし、
まさにV字の道をセンターから見ると
Pa273872s
こんな感じ。
ここを黒目川最下流のスタート地点として、
ゆっくり遡行することにした。

黒目川の最も下流、
最初に出合う橋が東(あずま)橋
Pa273878s
ここには大きな水道管(水色)が
並行して走っており、
水道橋にもなっている。
これは荒川で取水した水を
都内の浄水場に送る導水管らしく、
そう聞くと、立ったまま人が歩けるほどの
巨大とも思える太さも頷ける。
Pa273880s
帰ってから調べてみると
(1) 埼玉県朝霞市にある
  東京都水道局の朝霞浄水場 から
(2) 東京都板橋区にある
  東京都水道局の三園浄水場 まで
の導水管らしい。

試しに(1)と(2)の浄水場間を
直線で結んでみると
まさに東橋の部分を通過している。
Kuromejousuis
水道橋以外の管の敷設位置はわからないが、
最短経路の一部であることは
間違いなさそうだ。
それにしても(1)、
東京都水道局の浄水場が埼玉にあるなんて。

途中、コサギかダイサギか
白い鳥をよく目にする。
Pa273886s

黒目川には付近の多くの水が流れ込むのか
こういった樋管(ひかん)
両側の土手に数多くある。
Pa273889s
よく見ると、
「きけん・ひなん」
「ちゅうい」「たいき」と
水位を測るゲージまでついている。

もちろん、黒目川の水位上昇時
逆流しないよう樋管として仕組みも
ガッチリ万全だ。
Pa273890s

水位のゲージはあちこちにある。
Pa273887s

下の地図、赤矢印から茶矢印まで、
Kuromeday1j
まだ河口から2km程度しか来ていないが、
黒目川遡行、次回も続けたい。

 

 

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2025年1月 5日 (日)

どんな読み方も黙って受け入れる

(全体の目次はこちら


どんな読み方も黙って受け入れる

- 読み手を否定しない -

 

いまや貴重な存在になってしまった
「大きな書店」のカウンタ横にあった
小冊子
100demeichotekefrees
の中から、最後にもうひとつ、

小川洋子(小説家)
人生の豊かさを示す秤


にある言葉を紹介したい。
(以下、水色部は小冊子からの引用)

本の再読に関して、
小川さんはこう書いている。

本そのものは一字も変わっていない
同じ姿でそこにあり続ける。
にもかかわらず、
読み手の心持ちの違いによって、
いかようにも変化してゆく。

見えなかった風景が浮かび上がり、
記憶から消えていた登場人物に
親愛の情がわき、
小さなシーンが持つ特別な意味に
気づかされる。

本当に同じ本だろうか、
と信じられない思いにとらわれる。
神秘的な体験ですらある。

ほんとうに神秘的で不思議な体験だ。
中身はよくわかっているつもりだし、
相手(本)は何一つ変わっていないのに
好きな本を読み返すと
いつも新しい発見があり、
新鮮な気持ちになる。  

読み方の変化は、自分自身の
人間性の変化につながっている。

自分の人生がどういう場所に
向かおうとしているのか、
本が教えてくれる。

そして本は決して、
読み手を否定しない。

どんな読み方をされても、
黙って受けとめる


移り変わってゆく読み手に、
辛抱強く寄り添ってくれる。

「一文字も変わっていない」
「決して否定しない」
「黙って受け止める」
うまい表現だし、本が人なら
これこそがまさに圧倒的な性格と
言えると思うが、
いい本に出会うと、なぜかその本と
対話できるような気がするのはなぜだろう。

こちらの問いかけに、実際には
本は何も返してくれてはいないのに。

 

 

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