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2023年9月10日 (日)

対照的な2つの免疫作用

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対照的な2つの免疫作用

- いったいどうやって連携を? -

 

椛島(かばしま)健治さんが
皮膚について広く書いている

椛島 健治 (著)
人体最強の臓器
皮膚のふしぎ
最新科学でわかった万能性
講談社 ブルーバックス

(以下水色部、本からの引用)

の中から、
食物アレルギーの原因が
「食べること」ではなく
「皮膚から」だったという
興味深い話を
前回紹介した。

その最後に

 経皮と経口、皮膚と腸内、
 意外なものを並べて考えてみたくなる。

 体の外と内の話、
 と考えてしまいがちだが、
 よく考えてみると実はコレ・・・

と書いたので、
今日はそこから始めたい。

そう、トポロジー的に考えてみると
人間の体は「一本の管」とも言える。
口から肛門に穴が抜けているわけで、
 管の外側が皮膚、
 管の内側が腸管、
ということになる。
どちらも外界との境界を構成しており
一見内部に思える腸管も
実際には外部と接している、
体の表面、一番外側だ。

そう思うと、
「意外なものを比べている」
というわけではないことがよくわかる。

というわけで、
まずは皮膚から見てみよう。

皮膚免疫では
デフォルト(標準)の免疫反応は
「アレルギー反応」
です。

皮膚は、細菌やウイルス、寄生虫、
有害な化学物質やホコリなどに
常時さらされています。

そのため皮膚のバリア機能を突破され、
体内にこうした異物が侵入すると
ゆゆしき事態になるため、
これを直ちに除去する免疫反応が
発動されるように
プログラムされています。

一方、腸のほうはと言うと・・・

「腸管免疫」では「免疫寛容」が
デフォルト
になります。
(中略)
腸管で体外と体内を隔てているのが
腸粘膜です。

その点では、腸粘膜は
体外と体内を隔てる皮膚と
何ら変わりません。

皮膚と腸管の最大の違いは、
異物への許容度です。

腸管には、
経口摂取した飲食物が流れ込み、
小腸の徴絨毛(びじゅうもう)で
栄養分が取り込まれます。

皮膚のように異物だからといって
すべてを排除するような杓子定規な
アレルギー反応を起こしていたら、
必要な栄養分が摂取できずに
栄養失調になってしまいます。

異物であっても、
栄養分を含む食物については、
免疫応答を和らげて体内に
取り込まなければならないのです。

これを可能にするのが
「免疫寛容」です。

皮膚と腸管、
その働きを見る限りにおいては
同じ外界との境界ながら、
大きく違っている面があるわけだ。

皮膚免疫と腸内免疫の
基本的性格は対照的
です。

外部からの侵入を許さないように、
外来抗原の侵入を
極力排除する皮膚免疫に対して、

腸内免疫は、外来異物に対しては
比較的寛容です。

両者の性格は大きく異なり、
一見するとなんの接点もないように
見えます。

おもしろいのは、
この対照的で大きく違っているものが
なんらかの方法で連携することで
アレルギー反応が起こっている点。
ほんとうに不思議だ。

しかしアレルギー反応は、
皮膚の表面から侵入した異物で
感作が起きて、
それがきっかけで食物摂取を通じて、
食物アレルギーが起きます。

皮膚感作によって、
通常なら寛容だった腸内免疫が
外来抗原に
厳しく反応するようになったのが、
アレルギー反応の本質です。

両者の間には目に見えない
ミッシングリンクが存在するのです。

ミッシングリンクとは
連続性が欠けていることを指している。
鎖をつなぐ輪(リンク)は
見つかるのだろうか?

著者椛島さんは、
皮膚常在菌と腸内細菌との
相互関係を探る研究に期待している。

皮膚常在菌は、
1cm2あたり数十万〜数百万個棲息。

腸内細菌数は
体内におよそ40兆個もあり、
その重さは約1~1.5kgにもなるという。

つまり我々は数十兆個の
微生物と一緒に生きているわけだ。

皮膚感作がどのようにして、
腸内免疫に影響を与えているのかは、
まだまだ未解明な部分が多いようだが、
これらの菌が関係している可能性もある。

もしかすると、皮膚常在菌
あるいはその代謝産物が
腸内にデリバリーされて、
それが腸内細菌の活動に
影響を与えているのかもしれません。

皮膚常在菌の代謝産物といえば、
以前、
便は便りで、かつ・・・
という記事の中で、
 「しっとりつやつやの肌」は、
 皮膚上にある常在菌のおかげ。
 常在菌の「オシッコやウンチ」が
 さらに汗や皮脂と混ざって、
 皮膚はしっとりするのだ

なる、話を

青木 皐 (著)
人体常在菌のはなし
―美人は菌でつくられる
集英社新書

から紹介した。

「しっとり肌」をめざして
「きれいな」肌ケアをしている人は
読みたくない事実かもしれないが。

いずれにせよ。常在菌の働きからは
目が離せない。

 

本を読んでいると、
「全体のバランスを維持することが重要」
という表現が繰り返しでてくる。
 全体とは?
 バランスとは何と何の?
ここを固定観念に囚われずに
柔軟に考えていく視点が特に重要だし、
そこにこそ新しい大発見が
あるような気がする。

 

 

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