『プシコ ナウティカ(魂の航海)』
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『プシコ ナウティカ(魂の航海)』
- イタリアでの精神病院廃絶の物語から -
寡聞にして全く知らなかったのだが、
イタリアでは、1999年に
イアリア全土の公立精神病院が
すべて閉鎖されたという。
1978年に成立した
180号という法律が契機となって
精神病院を廃絶。
その過程と背景を丁寧に追いながら
単なる制度の改革だけでなく、
正常と病(やまい)、
精神と身体、
地域と社会、
抑圧と自由
などについて深く考察している
松嶋 健 (著)
プシコ ナウティカ
―イタリア精神医療の人類学
世界思想社
![]()
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
は、読み応えのある良書だった。
その中から、
印象的な言葉をいくつか紹介したい。
まず最初に書名。
「プシコ ナウティカ」って何?
書名に限らず、本書はその内容が
イタリアでの話ゆえ、当然ながら
すべてがイタリア語ベースになっている。
松嶋さんはその都度
丁寧に説明してくれているが
日本語、英語とは違った
言葉のグルーピングや
背景を感じることも多く、
それだけでも新しい発見がある。
もちろん医療そのものが言語、
つまりイタリア語に
依存しているわけではないが、
医療制度の整備もその変革も
イタリア語が持つ発想に支えられて
進められてきたわけで、
松嶋さんは
そういった言語が持つある種の価値観にも
細かく神経を配っている。
で、最初の疑問に戻るが
プシコ ナウティカ(psico-nautica)は
イタリア語で「魂の航海」を意味する
らしい。
目的地も知らないまま
人々のあいだで続いていく
航海であるといえるだろう。
そうした、
人間の「生」そのものとしての
航海のアンソロジーであり、
同時に航海術でもありうるような
ものとして本書は書かれている。
最終的に精神病院の全閉鎖に繋がる物語は、
「社会」中心から「人間」中心への
転換の物語として捉えることもできる。
「人々のあいだで続いていく」
という言葉が、全編を読み終わった後、
改めて深く響いてくる。
そう、生きていくって
目的地も知らない航海なのだ。
イタリアでの出来事を通じて、
航海とそこから見える景色に
新たな角度から光があたる驚きを、
発見を、新鮮さを、
しばし楽しんでみたい。
次回に続く。
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