誕生ホヤホヤ合衆国の使節団
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誕生ホヤホヤ合衆国の使節団
- ヴェネツィア大使の先見の明 -
前回
22歳のウィトゲンシュタインと
63歳のフレーゲとの対面について書いたが、
「年齢差のある対面」で
思い出した話があるので
今日はそれについて書きたいと思う。
参考図書はコレ。
塩野七生 (著)
イタリア遺聞
新潮文庫
の中の一篇
「ベンジャミン・フランクリンの手紙」
(以下水色部、本からの引用)
時は1783年。当時のアメリカ合衆国は、
8年も続いた独立戦争が終結し、
ヴェルサイユで調印された「パリ条約」で
独立を承認されたばかりの
まさに誕生ホヤホヤの国だった。
国号をアメリカ合衆国とすることも
決まってはいたが、
議会も連邦政府もなく、
もちろん大統領も
まだ存在していなかった。
ワシントンが
初代大統領に就任するのは、
この6年後の1789年に
なってからである。
このとき、
「パリ条約」調印のために
フランスに来ていた合衆国使節団が
パリに派遣されていた
ヴェネツィア共和国の大使に
送った文書が紹介されている。
ベンジャミン・フランクリンの筆になる
この外交文書は、
次のようにはじまっている。
アメリカの各州の代表は、
ヴェネツィア共和国と
アメリカ合衆国との間に、
平等と相互理解と友好に基づいた関係が
成り立つことは、
両国いずれにとっても
利益になるであろうとの
結論に達しました。
(中略)
閣下には、本国政府の意向を
ただされることを願うばかりです。
アメリカ合衆国使節
ジョン・アダムス
ベンジャミン・フランクリン
トーマス・ジェファーソン
すごい文書だ。
合衆国の
* 第2代大統領になる
ジョン・アダムス
* 避雷針の発明者としても有名な
ベンジャミン・フランクリン
* 第3代大統領になる
トーマス・ジェファーソン
の3名が名を連ねている。
さて、ここで問題。
「新興国家合衆国の使節団と
歴史ある国家ヴェネツィアの大使、
どんな年齢関係だったでしょう?」
新興国からは元気な若者集団、
ヴェネツィアからは風格のある老大使
をついついイメージしてしまう。
著者塩野さんもこう書いている。
代表するのだから、
現代から想像すると、
なんとなく、
血気盛んな若い世代に属する
人々ばかりであったように思え、
それに反して、
歴史の舞台から去りつつあった
老国を代表する人物となると、
保守的でがんこな老人で
あったにちがいないと思うが、
実際はまったく逆なのである。
合衆国使節団
ジョン・アダムス:48歳
トーマス・ジェファーソン:40歳
ベンジャミン・フランクリン:70歳代
駐仏大使
ダニエル・ドルフィン:35歳
平均寿命が40代だった時代における
[35歳] 対 [48,40,70代]
を正確にイメージすることはできないが、
別格のフランクリンも含めて
合衆国使節団は十分老人と呼ばれる
年齢だったようだ。
いずれによせ、予想ははずれたものの
想像するとなぜかうれしくなる図だ。
老国の方が若いなんて。
このダニエル・ドルフィン、
友好通商条約を結びたいと申し入れてきた
この合衆国の文書を本国に送る際、
外交官としての自分の意見も
書き添えているという。
その内容は以下の通り。
世界で最も怖るべき力を持つ
国家になるでありましょう」
さすが大使、若いだけではない。
もう一度書く。
ワシントンが
合衆国初代大統領に就任する
6年前のコメントだ。
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