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2020年3月 1日 (日)

第11回「日本語大賞」

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第11回「日本語大賞」

- 「あなたを思っているよ」 -

NPO法人・日本語検定委員会による
第11回「日本語大賞」の入選作が
2020年2月19日に発表された。

テーマは、
小学生、中学生の部「おもしろい日本語」
高校生、一般の部「美しい日本語」
計4065点の応募があったという。

文部科学大臣賞受賞作品は
読売新聞教育ネットワークのサイト
全文が読めるので、興味を持たれたら
ぜひ全文をお読みいただきたいが、
リンク先がいつまで公開されているのか
わからないし、その中には
印象深い言葉や表現もあったので
自分へのメモとして
一部をここに残しておきたい。

(以下水色部は受賞作品からの引用)

 

小学生の部の受賞は
シアトル日本語補習学校 小学6年の
川澄美紅(かわすみ・みく)さん。

日本語補習学校ということは、
月-金の平日はシアトル近郊の
現地校に通っているのであろう。
英語と日本語の両方を
真摯に学んでいることが
文章から伝わってくる。

川澄さんはアメリカ在住ゆえ
現地で英語字幕付きの「名探偵コナン」を
楽しんでいるようなのだが、
見ていると「字幕がヘン」と思うことが
あるようだ。

特に挨拶、

「いってらっしゃい」
「ただいま」
「おかえりなさい」
「おつかれさま」

などに対する英語字幕。

どうしても英語に
しっくり当てはまる言葉がありません


「あえて言うならこう言うかも。」
というのはないわけではないですが、
その場に合いません。

その結果、字幕でも
無理やり当てたような
おかしな英語が出てきます

 

一対一で正確に訳せない、と
言い放つだけでなく
「あいさつ」が持っている意味を
次のように感じ取っている。

生活の中のあいさつは、
日本独特の表現方法で、
あなたを思っているよ。」
というメッセージがかくされています。

「あなたを思っているよ」か。

シンプルながらなんとも核心を突いた
鋭い指摘だ。

メール等で気軽に使ってしまっている
「よろしくお願いします」
という言葉についても・・・

確かに、相手に
「適当に済ませておいてね。」と
お任せする時に言うのですが、
ただ無責任に「お任せ」するのではなく、
「ご苦労やご面倒をおかけします。」
という相手を思いやる気持ちも
ふくむといいます。

「あなたにやっていただくけれども、
 その責任は私にもある。」

という宣言で、言ってみれば

「私とあなたで一緒に
 その問題を解決しましょうね。」

という
前向きな態度なのかもしれません。
「あなたを思う気持ち」が
言葉に息づいていることを知りました。

英語環境で育ちながら
日本語についても
ここまで考察できるなんて。

 

中学生の部の
南雲円香(なぐも・まどか)さんは
「仕事の虫」「勉強の虫」とは言うけれど
「料理の虫」「スポーツの虫」と
は言わないのはなぜだろう、
の疑問に向き合いながら
『蝶に化けるかもしれない私の「虫」を
 堂々と大事に育てたいと思う』

力強い決意を聞かせてくれている。

 

高校生の部の
ミノヴィッチ たまらさんは、
勉強熱心なセルビア人のお父さんを通じて
日本語の豊かなオノマトペや、
断定を避ける「かも」など
日本語のおもしろさに気づいていく。

ほかにも

多くを語らない反面、
日本語に感情を伝える為の言い方が
数多くある事には驚きます。

他言語よりも
気持ちを伝えることに関しては
より熱心かもしれない
と思います。

日本語には心や胸という言葉を
含んだ表現が多い
からです。

例えば「胸をなでおろす」という言葉は
胸に手を当ててホッとしている様子が
目に浮かびます。

「待ってます」と言わず
心待ちにしています」だと、
言われた相手もこちらも
温かい気持ちになります。

他にも
心温まる、心が通じる、心が晴れる、
心が狭い、心配り、
胸を打つ、胸に迫る、胸に沁みいる、
など
思い出せる範囲でも沢山あります。

心や胸を含む多くの言葉。
言葉がコミュニケーションの質に
影響する例として実にいい。

 

一般の部の
星野有加里(ほしの・ゆかり)さんは
雪を背景に、
「ひとひら ふたひら」
「風花」
などの美しい言葉を
卒業間際の教え子と交わす。

教え子の

「こうやって先生と一緒に
 雪を眺めたこの瞬間も、
 忘れないと思う。

 卒業して何年か経っても、
 雪を見たらきっと思い出すよ

の言葉が、
ひとひら、ふたひら、風花
といった単語の美しさを越えて
響いてくる。

 

それぞれの生活の中で、
日常の言葉を豊かに感じる感性。
どれも素敵なエッセイだ。

 

 

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