大塚国際美術館 (1)
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大塚国際美術館 (1)
- 本物が一枚もなくても -
前々回、季節外れの
2018年紅白歌合戦の話を書いたが、
2月になってから、ニュースサイトでも
紅白関連の小さなニュースを目にした。
発信は、徳島の大塚国際美術館。
紅白で米津玄師さんが
生中継で「Lemon」を歌った、
あの会場となった美術館だ。
美術館の広報担当者によると
紅白の影響か、
2019年元日の美術館Webページへの
アクセス数は過去最高、
1月の来館者数は前年1月の約1.5倍に
なったという。
多くのろうそくを並べた
バチカンのシスティーナ礼拝堂を模した
ホールからの美しい映像だったが、
「空間」が持つ独特な空気感は
TV画面を通してでも
充分に伝わってきていた。
大型ディスプレイや
プロジェクションマッピングを使った
演出ばかりになってしまっている中、
だからこそ
逆にリアルな「空間」の持つ力が
際立っていた気がする。
ところで、この
徳島県鳴門市にある
「大塚国際美術館」
ご存知だろうか。
私も一度しか行ったことはないが、
これを機会にぜひ紹介したい。
この美術館、
「日本一高い入館料なのに、
本物は一枚もない」
と揶揄されることもある
ちょっと変わった美術館だ。
ところが、美術に明るい知人も含めて
行った人からは
「たしかに本物はない。
でも、とにかく一度は観てみて!」
「半信半疑だったけれど、
実際に行ってみたら驚いた」
と、いくつもの強いお薦めコメントを
いただいていた。
いったいどうなっているの?
まずは、館長自らの言葉で、
他に類を見ない
この美術館を紹介してもらおう。
入館時にもらったパンプレットから。
「大塚国際美術館」は大塚グループが、
創立75周年記念事業として
徳島県鳴門市に設立した
日本最大級の常設展示スペース
(延床面積29,412m2)を有する
「陶板名画美術館」です。
館内には、
6名の選定委員によって厳選された
古代壁画から、世界25ケ国、
190余の美術館が所蔵する現代絵画まで
至宝の西洋名画1,000余点を
大塚オーミ陶業株式会社の
特殊技術によってオリジナル作品と
同じ大きさに複製しています。
それらは美術書や教科書と違い、
原画が持つ本来の美術的価値を
真に味わうことができ、
日本に居ながらにして
世界の美術館が体験できます。
また、元来オリジナル作品は
近年の環境汚染や
地震、火災などからの退色劣化を
免れないものですが、
陶板名画は約2,000年以上にわたって
そのままの色と姿で残るので、
これからの文化財の記録保存のあり方に
大いに貢献するものです。
門外不出の『ゲルニカ』をはじめ
戦争で散逸していた工ル・グレコの
祭壇画の衝立復元など
画期的な試みもなされ、
1,000余点の検品のために、
ピカソの子息や各国の美術館館長、
館員の方々が来日されたおりには、
美術館や作品に対して
大きな賛同、賛辞を頂きました。
このように「大塚国際美術館」は、
技術はもとより構想においても
世界初の
そして唯-の美術館といえます。
大塚国際美術館館長 大塚一郎
簡潔に言うと、
「厳選した世界の名画を
原寸大で陶板に複製。
その数、実に1,000余点。
その陶板名画を並べた美術館」
というわけだ。
すべてが陶板、
つまり焼き物なので保存性が極めて高い。
「陶板名画は約2,000年以上にわたって
そのままの色と姿で残る」
とは館長の言葉だが、
展示作品には触ることすらできる。
と、ここまでの説明を聞いても、
肝心な画質、つまり絵のクオリティが
イメージできないと
「再現って言えるの?」の疑問は
拭えないであろう。
まさに訪問前の私がそうであった。
陶磁器の絵皿、の延長線しか
浮かばないのでどうしても名画とは
結びつかない。
というわけで、
まずは、実物を観てみよう。
(館内は写真撮影も自由にできる)
これが陶板、つまり焼き物なのだ。
もちろん写真だけでその「凄さ」を
伝えることがむつかしいことは
よくわかっているが、
次回、もう少し詳しく観てみたい。
加えて、陶板による複製は
単なる複製以上の価値も生み出している。
複製だからこそ、
本物にはできないこともできる。
そのあたりも含めて、次回へと続けたい。
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