穴があったら
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穴があったら
- リアルな書店で -
書店が減っている。
ここのデータによると、
2015年5月時点で全国で1万3千店、
1999年と比較するとその数 約6割、
つまりたった17年で
4割の書店がなくなってしまった。
この数には外商のみの本屋も含まれているため、
実際に本を並べて売っている
「店売している書店」はさらに少なくなるらしい。
ここのデータによると、2011年時点で
実店舗数はすでに1万1千店ほど
になってしまっている。
ちなみに、ここのデータによると、
2015年のコンビニの数は5万4千店以上。
Amazonをはじめとするネット書店の台頭や、
購買層の人口減など
いろいろ理由はあるのだろうが、
作品としての「本」を実際に手にできる
書店でのワクワク感は、
ネットにはない魅力なので
なんとか活路を見つけ出して欲しいと、
願わずにはいられない。
とは言え、やはり状況は厳しい・・・か。
東京駅前の丸善の中に2009年にオープンした
松岡正剛さんプロデュースの
実験的な店舗「松丸本舗」も
本との出逢いへの期待感という意味では、
私にとって最高にワクワクできる場所だったが、
残念ながら2012年にはクローズしてしまった。
2011年にオープンした「代官山 蔦屋書店」も
書店の数が少なくなる中、
画期的な品揃えとレイアウトで、
目一杯ワクワクさせてくれたが、
2015年にオープンした「二子玉川 蔦屋家電」の
本屋さんは、そこそこの規模ながら、
あまりに独創的な分類による陳列で、
私のような時代遅れのオジさんには、
目的の本に辿りつけない本屋さんになってしまった。
既存の分類にとらわれない
テーマ中心の本の選択と配列は、
「おもしろい!」とは思うものの、
眺めていて、
「意外な本と出逢えるかも」の期待値が
なぜか「松丸本舗」のように上がってこない。
「選んで並べる」ことの難しさと価値を、
松岡正剛さんの力を、
改めて感じることはできるのだが。
週末、リアルな書店をウロウロしていたら、
新刊のこの本を思わず手に取ってしまった。
映画監督の想田和弘著
「観察する男
映画を一本撮るときに、監督が考えること」
ミシマ社
なぜ、手に取ったのか。
上の写真ではわかりにくいが、
表紙右側の青く丸い部分、
実はこれ、表紙に丸い穴が開いていて、
次のページの写真が穴から見えている状態なのだ。
平積みされていた本は、
偶然表紙がちょっと浮いたようになっていたので、
大きな穴が余計に目立っていた。
ネット書店だったら、
絶対に気がつかなかったであろう
装丁の工夫の一つだ。
手にとって改めて、表紙の穴から
次ページの瀬戸内海の写真を覗き込んでいたら、
同僚のある言葉が急に頭に浮かんできて、
思わずひとりで苦笑してしまった。
以前、エンジニア仲間で呑んでいたとき、
女性技術者のひとりが言った。
ほんとうに覗くのが好きよね。
望遠鏡だって、洞穴(ほらあな)だって、
カメラだって、顕微鏡だって、
スカートの下だって、女風呂だって、
覗いてきたのは男ばっかり」
ハイ、思わず手にとって、
穴から覗いてしまったのは、
男である私です。
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