日英混在でも本の向きはそのままだったり、秘密の日記だったり
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日英混在でも本の向きはそのままだったり、秘密の日記だったり
- 英国の景色を眺めて -
4月上旬、出張でドイツとイギリスを回ってきた。
今回、ドイツ・デュッセルドルフからロンドン・ヒースロー空港へのフライトは、
午後のまだ明るい時間帯だったため窓側の席にしたのだが、
これは大当たりだった。
ヒースロー空港着陸直前、ロンドン中心部上空を大きく旋回するコースを取ってくれたのだ。
おかげで街の景色をおおいに楽しむことができた。
上空からの景色は「行ったことのある人向け」ではあるが、しばしお許しを。
(一度でも地上での観光経験のある街だと、上空からの景色もすごく楽しめるのに、
未経験だと多少地理に詳しくても、ぼーっと眺めるだけになってしまうのは
なぜなのだろう。
実際に行った場所を上空からなんとか探しだそうとする集中力は、
同時に別な楽しみをも運んできてくれるような気がする)
ロンドンが近くなってきた。
大きく旋回して、最初に見えてきたのはタワー・ブリッジだった。
ロンドン中心部(INNER LONDON)
中央がテムズ川、中央一番下に見える橋がタワー・ブリッジ。
この橋は、ロンドンの観光用ポスターによく使われている。
そのせいか、この橋を「ロンドン橋」だと思っている人が多いが、
これは「タワー・ブリッジ」で「ロンドン橋」ではない。
ロンドン橋はタワー・ブリッジのお隣り、この写真で言うとひとつ上の橋になる。
ローカルな橋にもかかわらず「ロンドン橋」の名をだれもが知っているのは、
子どものころに歌った歌「ロンドン橋落ちた」が記憶の片隅にあるからだろう。
「ロンドン橋落ちた」は、イギリスの伝承童謡「マザーグース」のひとつ。
意味を考えながら読むと奇妙な歌の多いマザーグースだが、
それについて詳しく知りたければ、
平野敬一著「マザー・グースの唄 -イギリスの伝承童謡-」中公新書がお薦めだ。
40年以上も前に発刊された本なのに、いまだに版を重ねていることが
まさにその質の高さを証明しているとも言えるが、
この本、編集というかレイアウトの点でもほんとうにすばらしい。
参考までに「ロンドン橋落ちた」を含む2ページを選んでみた。
英文がでてくるページはすべてがこんな感じのレイアウトになっている。
縦書の日本語の本文に、横書きの英語の原文が混在しているのに、
本の向きを変えることなくスラスラと読むことができる。
本作りのことはよくわからないが、このように組むことはきっとむつかしいのであろう。
本を縦にしたり横にしたりしながら読まずにすむ
こういったレイアウトには、ほとんどお目にかかったことがない。
内容の充実度だけでなく、英文混在での読みやすさ、自然さという点でも
ぜひ見習ってもらいたい良書だと思う。
「タワー・ブリッジ」に続いて見えてきたのはセントポール大聖堂。
ロンドン中心部(INNER LONDON)
中央小さな白いドームがセントポール大聖堂。CITYと呼ばれる金融街。
真ん中に架かるウエストミンスター橋の左上がビッグベンのある国会議事堂。
左上に見える緑の中にバッキンガム宮殿。
左側グリーン・パークと右側セント・ジェームズ・パーク、
そして中央にバッキンガム宮殿。
2012年ロンドンオリンピックでのマラソンのゴール地点。
ちょうど真ん中にバッキンガム宮殿前のロータリーが見える。
セント・ジェームズ・パークと言えば、17世紀のイギリスの官僚ピープス氏は
この公園のことを「驚くほど色々な鳥のいる公園」と日記に記している。
サミュエル・ピープス(Samuel Pepys, 1633-1703)
ご存知だろうか? 彼は暗号を使って日記をつけていた。
それが後に解読され、本になって出版までされている。
臼田昭著 「ピープス氏の秘められた日記 17世紀イギリス紳士の生活」 岩波新書
「だれにも読まれない」を前提にしたら、人はいったい何を日記に書くのだろうか。
どんな経緯があるにせよ、それを本人の死後、解読して読もうというのだから、
決して趣味がいいとは言えないが、
飾らずに正直に書かれた日記というのは、めっぽうおもしろい。
ピープス氏は、一平民からイギリス海軍の統括責任者にまでのぼりつめた官僚で、
王立協会の会長まで務めたような人物だが、
日記に登場するご本人は、じつに人間味に溢れている。
ペストの流行やロンドン大火についてのリアルタイムでの記述は、
史料としての側面においても大きな価値があるが、
宮廷や上流社会を厳しい目で見つめる一方、芝居や酒の誘惑に弱く、
妻の目を恐れながらも自身の女性関係を赤裸々に、となると、
覗き見趣味的ゴシップとしても、おおいに楽しめる。
というわけで、たいへんおもしろい本なのに、こちらは残念ながらすでに絶版。
ご興味があれば、下のリンク先の中古か図書館でどうぞ。
ロンドン中心部を東から西へと飛んできたことになる。
ハイド・パーク
私が地理的に追えるのはこのあたりがもう限界。
ハイドパーク手前、ロイヤル・アルバート・ホールが見えないか探してしまった。
近くで見るとあんなに大きいのに、さすがに上空からでは確認できなかった。
このあと飛行機はまっすぐヒースロー空港へ。
空港からは訪問先であるChertseyという街へ寄り道せずに向かったので、
今回、ロンドン中心部は「上空からの景色だけ」になってしまった。
ちなみに「ヒースロー空港」「Chertsey」「ロンドン」はこんな位置関係になる。
時間に余裕のない出張の中、この位置関係では「ついでにロンドンに寄る」というわけにもいかない。
今日はロンドンの景色を見て思い出した、二冊の古い本の紹介まで。
と、終わりにしようと思ったのだが、
せっかくイギリスに上陸(!?)したので、
初めて訪問したChertseyという小さな街の様子を、少しだけ添えておきたいと思う。
観光地ではないため、観光のガイドブック等にもおそらく出ていないと思われるので。
【イギリスの街:Chertsey】
Chertseyの町並み 小さな商店が多い。
住宅にもホテルにも、歴史を感じさせる建物が多い。
今回利用したChertseyのホテル
メインの通りから一本入ると、
正真正銘の「イングリッシュガーデン」と一般住宅が。
町外れには、緑の美しいサッカーグラウンド
ほんとうにサッカーがよく似合う。
そんな中、ちょっと気になった景色は・・・
【ちょっと気になった景色:1】
これらは煙突だろうか? 注意して見ると多くの建物の上に並んでいる。
【ちょっと気になった景色:2】
セブン-イレブンのような日米で見るコンビニはないが、こんなお店があった。
Chertseyのコンビニか。定休日なし、毎日朝6時から夜10時まで営業。
【ちょっと気になった景色:3】
コンビニ、マクドナルドに代表されるファストフード、日本車、などなど
「あっ、日本と同じ!」というものは驚くほど目にしない。
KFCもスターバックスコーヒーもない。(もちろんその方がいいのだけれど)
そんな中、唯一目にした同一チェーン店。
右端の看板「Curves」。
日本でも「女性だけの30分健康体操教室」として、
最近あちこちでよく見かけるようになった。
それにしても、「色を含めたロゴ」のインパクトは大きいものだ。
紫色かつあの字体でなければ気がつかなかっただろう。
【ちょっと気になった景色:4】
住宅街の入り口の車幅制限。
ただ、この写真でも感じられると思うが、
その先の住宅街の道は道幅も広く、結構ゆったりしている。
駐車場を含む広場もある。
車幅を制限するのには、幅以外の理由があるのかもしれない。
以上 Chertseyのスナップのオマケでした。
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