10puzzle 「おもしろい問題」って?
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10puzzle 「おもしろい問題」って?
- 解ではなく問題を探す。 -
今日は算数パズルの話題。
Google Nexus7のCMでこんな内容のものが放送されていた。
【1,1,5,8で10を作る】
この問題、私が学生のころは電車の切符でよくやった。
この切符なら【6847】を解く。
切符に印刷されている4つの数字を使って四則演算だけで10を作る式を探す。
それだけの問題だ。
ご存じない方のために、例を示すと、
【 1234 】の場合、
「 1 + 2 + 3 + 4 = 10 」 でもいいし、
「 (2 x 4) + 3 - 1 = 10 」 でもいいし、
「 ((3 x 4) - 2) x 1 = 10 」 でもいいし、
とにかく、4つの数字を全部、一度だけ使って四則演算のみで10にする式を見つければいい。
数字を使う順番は問わない。
(この問題、実際にそう呼んだことはないが、
「10puzzle」、「make10」、「テンパズル」、「10 Puzzle」、「Ten Puzzle」などと
呼ばれているようなので、
このブログでも「10puzzle」を使わせていただくことにする)
だれが早く解を見つけられるか仲間で競争したり、
目的の駅までに解けず、モヤモヤした気分のまま電車を降りたり、
いろいろな思い出がある。
Suicaの登場以降、切符を手にする機会はすっかり減ってしまって、
もうずいぶん長い間、この問題で遊んではいない。
CMを見て、久しぶりに思い出した。
【解法プログラム】
当時、理系学部の学生だった私は、
友人とこの問題をプログラムで解くことにも挑戦した。
「マイコン」なんて言葉がようやく知られるようになった
そのころのコンピュータの思い出話を始めると、それだけでキリがなくなるので
ここでは全部省略するが、メモリわずか数KBという貧弱なハードウェアリソースでも
なんとか解が導ける手頃な問題であった。
ちょうどそのころ、共立出版から「bit」という雑誌が出版されていた。
(2001年に休刊となってしまったのだが、)
計算機に関するかなり硬派な内容の雑誌だった。
この雑誌がこの問題(10puzzle)を解くプログラムを募集していたことがある。
自分が応募したわけではないが、応募作品が掲載された号の、
その解説を興味深く読んだ記憶がある。
いかにエレガントに解くか、
アルゴリズムに「美」を求めていたような時代だった。
と、ここまでは単純な問題解決プログラムの話。
切符の数字の例:
もちろん、JR以外の切符にも4つの数字はある。
この切符の場合は【9468】が問題となる。
【雑誌「bit」が出した次の問題】
ところが、「bit」は、この問題をこれで終わりにしなかった。
「10pluzzle」、実際にいろいろな問題に挑戦してみるとわかるが、
このパズルには「おもしろい問題」と「つまらない問題」とがある。
上に挙げた
【1234】の出題に対して
「1 + 2 + 3 + 4 = 10」と解けても、「おもしろい問題だ」とは思えないだろう。
ところが、CMで取り上げられている【1,1,5,8】に挑戦して、
自らの力で解の式に到達できれば、思わず「おもしろい!」と声をあげるはずだ。
雑誌「bit」が着目したのはこの点。
「10puzzleにおいて、『おもしろい問題』を探すプログラムを作れ。」
いい問題だ。解ではなくて、問題のほうを探すプログラム。
そもそも挑戦したときに、
「おもしろい」と感じるポイントはどこにあるのだろうか。
すぐに解ける簡単な問題は、多くの場合「おもしろい問題」ではない。
【1234】はまさにこのグループだ。
ある程度の困難さは必要な気がする。
では、難しければそれだけで「おもしろい」のだろうか。
そもそも「難しい問題」とは、どう定義すればいいのだろう。
「解の式がただひとつ(1種類)しか存在しない組合せ」
「解の式に引き算や割り算を多く含む組合せ」
「計算の途中で整数以外を経由する組合せ」
「いかにもすぐに解けそうなのになかなか解がみつからない組合せ」などなど。
もちろん「おもしろい」の定義に絶対的な正解があるわけではない。
「おもしろい問題」をみつけるための評価関数について
仲間内で、あれやこれや議論したりもした。
<ひとこと補足>
解の式の「かず(種類)」の定義については、
ここでは深く述べないことにする。
(1+2)+3+4=10 と (1+4)+2+3=10 は同じ式(1種類)だが、
(1+2)+3+4=10 と (2x3)+(4x1)=10 は違う式(2種類)とする、程度の意味。
たとえば
【5558】の場合、
((5+5) - 8) x 5 = 10
((8-5) x 5) - 5 = 10
((5+5) / 5) + 8 = 10
と「解は3種類ある」と数えることにする。
さて、いくつかの具体例で「おもしろさ」について見てみよう。
【例題1:1167】
【1167】
ちょっとお考えあれ。
それほど時間をかけなくても解けることだろう。
答えは
6/(1+1) + 7 = 10
この問題、実はこの1種類しか解がない。
1種類しか解がないのに、たいていの人はあまり時間をかけずに簡単に解けてしまう。
解が1種類しかないのに、比較的簡単に解ける組には、
【1116】
【1149】
【1555】
【1566】
【1599】
などがある。
解が少ないことが、難しさやおもしろさと直接繋がっているわけではない。
【例題2:2477】
【2477】
「簡単、簡単」と思った方、浮かんだ解はおそらくこれだろう。
(7/7 + 4) x 2 = 10
ところがこの組合せには、もうひとつ別な解がある。
(2 - 4/7) x 7 = 10
解はこの2種類のみ。一方は易しいのに、
もう一方を探そうとするとかなりの難問だ。
最初にこちらの解が浮かぶ人がどの程度いるのかわからないが、
この式で解けた人は「おもしろい問題だ」と思ったことだろう。
同じようなパターンには、
【2334】もある。
解は全部で4種類あるが、
(3x3 - 4) x 2 = 10
(3/3 + 4) x 2 = 10
は簡単。ところがこの問題には
(2 + 4/3) x 3 = 10
(4 - 2/3) x 3 = 10
という解もある。こちらの方はなかなか思いつかない。
10puzzleは、ひとつでも解が思いついた時点で「わかった!」となって終わってしまうので、
これらは「つまらない問題」に分類されてしまいがちだが、
おもしろい解を含んでいる問題であることに間違いはない。
【2477】の (2 - 4/7) x 7 = 10
や
【2334】の (2 + 4/3) x 3 = 10
などは、
「おもしろい問題か?」において、どのように扱うのが適切なのだろう。
このように、「おもしろい問題」を少ない条件だけで定義することはむつかしい。
むつかしいからこそ、考えるのはおもしろい、とも言えるのだが...
というわけで、いまだにプログラムで「おもしろい問題」を自分が納得できるかたちで、
すっきりと選ぶことはできていない。
しかし、経験的に「おもしろい」と思ったものを選ぶことはできる。
10puzzleの「おもしろい問題」、お薦めは以下の組合せだ。
【3478】
【1158】
【1199】
【2289】
【6699】
【4466】
【7899】
【9999】
ネットで解を「探す」のではなく、
自身の頭で解を探してみて下さい。
どの組合せも「解ける」問題です。
どうしても、の方はこちらをどうぞ。
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このブログを拝読し、高校の探究活動で「10puzzleのおもしろい問題」について考えてみようと思いました。そのため原典である「bit」も確認しようとしたのですが、何月号に掲載されているのかが分かりませんでした。そこでご質問なのですが、本文中に
①「この雑誌がこの問題(10puzzle)を解くプログラムを募集していたことがある。」
②「自分が応募したわけではないが、応募作品が掲載された号の、その解説を興味深く読んだ記憶がある。」
③「雑誌「bit」が着目したのはこの点。「10puzzleにおいて、『おもしろい問題』を探すプログラムを作れ。」
とありますが、それぞれbitの何年の何月号に掲載されていますか?
投稿: のこ | 2023年3月30日 (木) 15時03分
のこさん、コメントをありがとうございます。
探究活動がどんなものか全くわかっていませんが、
高校生がどんな視点でこの問題を捉えるのか
たいへん興味があります。
さてさて、お問い合わせの件。
掲載は1981年か82年だったと思うのですが、
40年以上も前の古い話ゆえ自信がありません。
「ナノピコ教室」のコーナだった気がします。
掲載号が特定できず申し訳ありませんが、
逆に、もし、もし、記事を発見された際には、
PC版本ブログの右側「メールを送信」機能にて
お知らせいただけませんでしょうか?
記事に再会(?)できれば
これほどうれしいことはありませんので。
投稿: はま | 2023年3月31日 (金) 21時17分