「こんにちは」と声をかけずに相手がわかるか
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「こんにちは」と声をかけずに相手がわかるか
- 「ダンゴムシに心はあるのか」から -
森山 徹 (著)
ダンゴムシに心はあるのか
新しい心の科学
PHPサイエンス・ワールド新書
PHP研究所
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
は、題名の通り、
ダンゴムシに心があるか?
の研究に挑んだ記録だが、
研究成果そのものよりも、
「心」という捉えどころのないものを
どうやってダンゴムシから
観測しようというのか、
そのアプローチ自体に興味があって
手にしてみた。
まずは、「はじめに」にある
たとえ話について考えてみよう。
見知らぬ人物が現れたとします。
皆が、彼の正体を知りたいと思います。
さて、どうすれば彼のことがわかるか?
まず思いつくのは観察だ。
またある人は生活を分析します。
写真機の性能と撮影技術、
生活の分析手法は
日増しに向上するでしょう。
こうして膨大な、そして正確な
彼の記録が集まります。
しかし、肝心の彼の「正体」は、
なかなか明らかになりません。
記録の方法は適切で、
その技術は進化し続けました。
しかし、技術の進化とは裏腹に、
皆さんは、その先に彼の正体を
つかめる未来がなさそうなことを、
薄々感じ始めるでしょう。
「正体」とは何か?といった
硬い定義はともかく、
「彼ってどんな人?」の
軽い質問に答えようとしても
観察記録だけでは、
質問者の期待に応える回答が
できるような気は確かにしない。
彼の正体を知るには、今や、
だれかが彼の肩を直接叩き、
「こんにちは」と
声をかけることが必要だと。
彼に気づかれないよう、
彼を記録することは、
観察者の影響を受けない
手つかずの彼を知る最善の手段です。
しかし一方で、
最も知りたい彼の正体や本質を
知ることはできません。
観測対象に影響を与えずに
観測対象を知ることはできるのか?
量子力学の観測問題とは別次元なるも、
観測や計測を最大の拠り所として
成り立っている自然科学の
最も根本的な課題のひとつだ。
彼の挙動や生活は、
観察者の影響を受け変化するでしょう。
しかし、その変化とは裏腹に、
正体は揺らぐことなく、
現前するのです。
揺らがないからこそ、現前するそれは、
正体、あるいは本質と言われるのです。
自信満々で言い切ってしまっている
この最後の段の内容はともかくも、
相手を知るために「こんにちは」と
声をかけることの価値や効用は
誰にでもイメージしやすい
わかりやすい事例と言えるだろう。
もちろん声をかけるだけで
すべてがわかるわけではないが、
仮にたったひと言の往復であったとしても
客観的な観察だけのときに比べて、
ぐっと距離が近くなるような経験は
確かにある。
どんな「こんにちは」で
ダンゴムシの心を探ろうというのか。
うまい導入だ。
次回、もう少し先を読んでみたい。
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