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2024年10月

2024年10月27日 (日)

新東名高速道路 中津川橋 工事中

(全体の目次はこちら


新東名高速道路 中津川橋 工事中

- トンネル口径の大きな違い -

 

前回、建設中の新東名高速道路

E1A 新東名高速道路(新秦野IC-新御殿場IC)の進捗状況
Icicb
 3️⃣「河内川(こうちがわ)橋」を見学した話を
山北事業PR館で聞いた説明を添えて書いた。

今日はその続き。

山北事業PR館で詳しい説明を聞いたあとは、
1️⃣「中津川橋」を目指した。

それぞれの位置をもう少し詳しく
地図上に示すと
Shintomei2409b
JR御殿場線谷峨(やが)駅から
松田駅へは電車で移動。

松田駅からはバス。「寄」行のバスに乗り、
「萱沼入口」で降りる。
ちなみに、「寄」は「やどりき」と読む。

バス停「萱沼入口」は
バスがグイグイと山を登る坂道の途中にある。
バスを降りるとすぐに
中津川橋の工事現場が目に飛び込んできた。
大きく見上げた河内川橋とは違って、
中津川橋は見下ろす形。
P9133653s
手前左側が中津川橋。
2つの口が見える奥のトンネルが
高松トンネル東側口。
2024年9月13日の様子だ。

高松トンネルは、地質がもろく、
掘削面の崩落や大量の湧水の発生などで
特に工事が難航しているトンネルだ。

注目してほしいのは、
ふたつある坑口の大きさの違い。
左の下り線の方が右の上り線よりも
かなり大きくなっている。

ちょっとズームしてみよう。
P9133653ss
なぜこんなに左口が大きいのか?

実はこれ、手前の中津川橋の構造が
大きく関係している。

中日本高速道路会社が公開している図面
B
現場は中津川に沿って
断層破砕帯(図の濃い茶色部分)
があるため、
主塔を立てようとすると
断層破砕帯を避けて
高松トンネル側に寄せるしかない。

その結果、バランスを取るために
橋桁の一部を
トンネル内に延伸する必要
が生じ、
図にあるように
トンネル口を大きくせざるをえなくなった、
との説明を
午前中に見学した山北事業PR館で聞いた。

当初の計画では、
もっと大きな口にする必要があったようだが、
図にある「バタフライウエブ構造」を
採用することで軽量化を図り、
今の径にまで縮小できたとのこと。

ちなみに、中津川橋近くには、
「松田事業PR館」もあるのだが、
当日は閉まっていたため、
中の展示を見ることはできなかった。
(スタッフが重なっているのか?
 午前中に見学した山北事業PR館と
 松田事業PR館が
 同時に開いている日はないようなので、
 1日で両地を回ろうとすると
 どちらかを選ぶことになる)

近くには民家もないため、
湯触トンネル西側口のそばにあった
「防音ハウス」もない。

なので
P9133659s
発破の時は大きな音が響くことだろう。

爆音も気になるが、
5分前、1分前に流れる(音楽)も
ちょっと聞いてみたい。

そうそう、山北事業PR館の説明を聞いて
すっかり関心の度合いが高くなった
「資材を運び込むためのルートの確保」
はどうなっているだろう?
P9133655sb
詳しいことはわからないが、
大型ダンプが通れるような
工事専用ルートもよく見える。

下の公式動画、4:00を見ると


トンネルの反対側(西側口)には
Takamatsunishi
こんな作業用道路まで造られているようだ。
いかに急坂の現場なのかがよくわかる。

上の動画 4:31では
工事用道路や仮橋の設置などの
 準備工事に5年をかける

とまで言っている。

 

2回に渡って書いた
新東名高速道路の河内川橋と中津川橋の
建設現場見学記。
大きな土木工事は
実物を前にすると独特な興奮がある。
「あの迫力」は生でないと伝わらない。

また、
その技術やプラニングについては
土木素人に向けて、
もっともっとアピールしても
いいのではないだろうか。
「PR館」での10名程度を定員にした
小さな説明会だけでは
あまりにももったいない。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2024年10月20日 (日)

新東名高速道路 河内川橋 工事中

(全体の目次はこちら


新東名高速道路 河内川橋 工事中

- 資材を運び込むためのルートの確保 -

 

東名高速道路にほぼ平行する形で建設中の
新東名高速道路は、
 神奈川県の海老名南JCTから
 愛知県の豊田東JCTを結ぶ
 全長約253kmの高速道路だが、

2024年9月時点で未開通なのは
神奈川県の新秦野ICから
静岡県の新御殿場ICまでの
約25kmだけとなっている。

この部分、急峻な山岳ルートゆえ
トンネルや橋梁といった構造物比率が高く
工事に多くの時間がかかっている。
(秦野工事事務所が担当する神奈川県側
 14kmにおける構造物比率は約8割。
 並行する現東名高速道路においては約3割)

全線開通は2027年度の予定とか。

NEXCO中日本の
E1A 新東名高速道路(新秦野IC-新御殿場IC)の進捗状況
にある地図を借りると、
Icicb
の赤い部分が未開通工事中の区間。

今回、この記事をはじめ、
これまで何本もの川を一緒に歩いてきた
川歩き仲間と、
「建設中の橋を見に行ってみよう」、
ということになった。

具体的なターゲットは、上記地図
1️⃣の「中津川橋」 と
3️⃣の「河内川(こうちがわ)橋」。

それぞれの位置をもう少し詳しく
地図上に示すと
Shintomei2409b
最寄り駅は、それぞれJR御殿場線の
松田駅と谷峨(やが)駅となる。
3️⃣→1️⃣の順で回ることにした。

2024年9月13日
まずは、JR御殿場線、谷峨駅から
歩いて河内川橋を目指す。約2km弱。
今回は橋のすぐ下にある
 NEXCO中日本 秦野工事事務所
 新東名高速道路 山北事業PR館
で開催されている「見学コース」という
説明会への参加を予約していたので、
その時間に合わせて到着をめざした。

この見学コース、ここで事前予約できる。
約1時間のコースになっており、
PR館内のパネルを中心に
工事中の橋やトンネルごとに
規模や工法の話を聞くことができる。

ジオラマやタッチパネル、
VRゴーグルを使った説明も含まれており、
土木工事の素人でも
楽しめる工夫がいっぱいだ。

「館内の写真撮影は自由ですが、
 ネットへのUpはご遠慮下さい」
とのことだったので、
残念ながら説明パネルの画像を
貼ることはできないが、
説明を聞いて記憶に残ったことを
いくつかメモしておきたい。

なお、写真は、PR館の説明を聞いた後、
実際の現場を訪問して撮影したものだ。
つまり、
2024年9月13日時点での記録でもある。

(1) 新東名高速道路 谷ヶ山トンネル 2.8km
(1-a) 県境による工事の分担

静岡県と神奈川県をまたぐトンネル。
 * 静岡県 側を沼津工事事務所
 * 神奈川県側を秦野工事事務所
と県境を境にトンネル工事を
ふたつの工事事務所が分担している
とのこと。
地図上確かに県境が通っているとはいえ、
ひとつのトンネルの工事なのだから
分担しないほうがいいような気がするが、
まぁ、いろいろ事情があるのだろう。

(2) 新東名高速道路 河内川(こうちがわ) 橋
(2-a) 日本最大のバランスドアーチ橋

PR館の目の前に広がる長さ770mの橋。
川面からの高さは120m。
近くで実物を見るとすごい迫力だ。
(北側から撮影した写真)
P9133621srb
最大支間220m。
つまり橋脚と橋脚の間が220mもある。
この長い支間を支えるために
鋼コンクリート複合連続バランスドアーチ橋
を採用。

バランスドアーチ橋とは
アーチリブと呼ばれる円弧の腕を
橋脚から左右にバランスを取りながら
伸ばしていって造られる橋のこと。

2024年9月13日時点で、
220m離れた2本の橋脚から伸びた腕は
あと10mでくっつく、というところまで
来ていた。(南側から撮影した写真)
P9133643sb
が、実際にくっつくのは
年末か年始、になるらしい。
とにかく全体の規模が大きいので
10mが「ほんのわずかの隙間」に見える。

(2-b) 東側橋脚にあるインクライン
下の写真、東側橋脚下にある、
斜面に沿って登る急角度のレールに
ご注目あれ。
P9133628s
大型ダンプ4台を一度に運べる
日本最大のインクライン

工事資材を運び込むために使われる
「ダンプごと運ぶ斜めエレベータ」
といった感じか。

イメージできない、という方は
下記動画の3:08あたりをご覧ください。

映像は河内川橋ではなく、
皆瀬川橋工事で使われている
インクラインだが、
「ダンプごと運ぶ斜めエレベータ」は
理解いただけると思う。
河内川橋のものはこれよりも大型で、
大型ダンプ4台が乗る

(2-c) 西側橋脚の奥にあるトンネル
P9133638sb
上の写真ではわからないが、
この橋脚の奥には
「資材を運び込むためのトンネル」
が掘られている。

東側はインクライン、
西側はトンネル、
とにかく現場は急な山の斜面の途中ゆえ、
資材を運び込むためのルートの確保」が
いかに重要な課題か、が
説明を聞くとよくわかる。

(3) トンネル工事の工法
出水や断層等、トンネル工事でも
苦労が続いているようだが
工法についても説明があった。

(3-a) 山岳トンネルには発破
山岳トンネルでは今でも発破が主流。
費用対効果で選ばれている。

「シールド工法は使わないのか?」と
よく質問されるらしいが、
「大きなシールドマシンを山の上まで
 持ってこられないので
 山岳トンネルには向かない」
とのこと。なるほど。

河内川橋に連結する
湯触トンネル西側口のそばには
人の住む集落があるため、
民家への音の軽減を目的に
トンネル口には「防音ハウス」
造られている。

(3-b) NATM(新オーストリアトンネル工法)
ナトム(NATM)とは、
New Austrian Tunneling Method
(新オーストリアトンネル工法)のこと。
ロックボルトという鉄の棒を打ち込むことで
トンネルの崩壊を防ぐ、
山岳トンネルでよく使われる工法が
使われている。

たくさん打ち込まれるとはいえ、
ロックボルトの直径は25mm程度。
小さな模型を使って、
ロックボルトの効果を説明してくれたが、
トンネルの規模から見ると、
針のようにしか見えない25mmの鉄棒が、
あの大きなトンネルの
崩落防止に効果がある、
というのは不思議な感じだ。

(4) VRゴーグル
PR館では、
「VRゴーグルを使って、
 あの巨大な河内川橋を、
 上から下から、まさに自由な視点で
 眺め回すことができる」
そんな展示も用意されていた。

人数分用意されていたVRゴーグル。
両眼で覗くので立体的に見え、
ちょっと慣れると
まさに空を自由に飛び回っているような
錯覚に陥る。

気分が悪くなったり酔ったりする人もいる、
との注意があったが、
それも頷けるレベル。
仮想現実で遊び回れるこのVRゴーグル、
パカッと開けると
装置としては
中にスマホが一台入っているだけ。

スマホの画面を、ゴーグルについた
両眼視用のレンズで覗く、
たったそれだけの簡単な機構で
酔ってしまうほどの映像世界が
作り出せるなんて。

帰ってきてから
「スマホ VRゴーグル」で検索すると、
山のように商品が出てきて驚いた。
しかも、ゴーグル自体はわずか数千円。
再生画像をどう作るかの問題は別とはいえ、
スマホにはこんな利用例もあるようだ。

 

山北事業PR館で詳しい説明を聞いたあとは、
中津川橋を目指すことにした。

次回に続く。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

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