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2024年6月

2024年6月30日 (日)

二ヶ領用水(5) 橋の上のバス停

(全体の目次はこちら


二ヶ領用水(5) 橋の上のバス停

- 安全に待つ場所の確保 -

 

二ヶ領用水歩き
* 二ヶ領用水(1) 三沢川との立体交差まで
* 二ヶ領用水(2) 向ヶ丘遊園駅付近まで
* 二ヶ領用水(3) 久地の合流地点まで
* 二ヶ領用水(4) 久地円筒分水をメインに
で、ルート上スキップしてしまった部分と
時間切れで歩けなかった残りの部分を
日を改めて歩いてみよう、
ということになった。

2024年5月の日曜日、
いつもの川歩き仲間と
下のGoogle Mapの図
青丸(小田急線の向ヶ丘遊園駅そば)の位置で
再度待ち合わせた。
Nikaryogmap31
青い線のルートはすでに歩いたので、
まだ歩いていない
青丸 (小田急線の向ヶ丘遊園駅そば)から
赤丸 (JR南武線久地駅そば)までの
未踏部分(黄色線)をまずは歩いてしまおう、
というわけだ。

上河原堰取水口からの用水の
向ヶ丘遊園駅そばからスタートし、
宿河原堰取水口からの用水と合流する
赤丸を目指すことにする。

スタート地点は、
二ヶ領用水(2) の最後に書いたここ。
P3313118s
右上高架が府中街道で、
用水はその下を流れている。

P5123325s
高架のすぐ横には、昭和を感じさせる
錆びたトタンに覆われた建物。
ここまで錆びたものは最近あまり目にしない。
「Modern JAZZ ガロ」の看板が残っている。

P5123328s
府中街道の高架下から出てきた二ヶ領用水。

P5123329s
府中街道に沿って幅広く流れている。

まもなく、用水沿いがいっきに華やいできた。
【生田緑地ばら苑】と呼ばれるエリア。
P5123330s
この先には、かつて
向ヶ丘遊園という遊園地があった。
1927年から2002年までの営業。

その向ヶ丘遊園まで、
小田急線の向ヶ丘遊園駅から
向ヶ丘遊園モノレール線」と呼ばれる
モノレールが走っていた時期がある。
1966年開業、2001年廃止。

そのモノレール線の跡地が
今は「ばら苑」になっている。
P5123334s
狙ったわけでもない単なる偶然ながら、
ちょうど時期がよかったのか、
まさに満開。
P5123339s
バラの種類も多く、
「ボランティアの会」が
短い説明を添えた名札を立ててくれている。

有名チェリストと同じ名前
ジャクリーヌ・デュ・プレ
というバラがあることも初めて知った。
白い花に赤い雄しべが印象的だ。
P5123340s
「市民のみなさまとの協働のもと、
 ボランティアの方々によって
 手入れが行われており」
との説明があったが、
ほんとうによく手入れされている。
当日も何人もの方が黙々と作業をしていた。
P5123344s

幅の広い用水からは
さらに支流もある。
P5123337s
一部残っている錆びついた水門の装置が
活用されていた歴史を感じさせる。
P5123338s

このあたりが、
向ヶ丘遊園モノレール線の終点。
向ヶ丘遊園の入口跡。
閉園から20年以上も経っているのに
「遊園地入口跡地」を感じさせる。
斜面右側はエスカレータの跡地だろう。
P5123353s

「遊園地入口跡地」のすぐ横には、
ドラえもんで知られる
【藤子・F・不二雄ミュージアム】
まさに二ヶ領用水のすぐ横に建つ。
P5123354s

【府中街道沿いのバス停】
今回のルートでは、二ヶ領用水が
府中街道のすぐ横を流れているのだが、
その間に歩道がないため、
バス停の設置には苦労しているようだ。

普通に設置すると下の写真のように
なってしまうが、車の交通量も多いので
この隙間で待たされる人は、
かなりヒヤヒヤの思いをするはずだ。
P5123366s
そこで?か、どうかわからないが、
二ヶ領用水に架かる橋を
バス停に活用(?)している例を
いくつも見かけた。
たとえば、こんな感じ。
P5123346s
上のバス停、バスはもちろん
橋を渡るわけではない。
バス停の奥、左右に走る府中街道の
右から左に走るルートのバス停だ。

ここにも
P5123368s
ここにも
P5123378s

そしてここにも。
実際に待っている人がいる。
橋の上なら安心して待っていられる。
P5123374s
バスの運転手は、
待っている人がいるかどうかを
確認するのがたいへんだろうけれど。

 

用水にある
* 氾濫危険 水位
* 避難判断 水位
* 氾濫注意 水位
* 水防団待機水位
の表示が氾濫の可能性を感じさせる。
P5123364s

途中、「長尾橋」手間左側に
水門が見えてきた。
P5123358s
寄って見るとかなり大きな水門だ。
P5123360s
しかも、水門のすぐ奥には
一般住宅が密集して建っている。
P5123361s
流れ込んだ水は
いったいどこに流れていくのだろう。
地図を見ただけではわからない。
調整池でもあるのだろうか。
それにしても一般住宅が近すぎる。

歩いていたら、
こんな自動販売機を発見。
「もつ煮込み」冷蔵パック
3人前600gで1,100円。
P5123367s

東名高速道路が見えてきた。
P5123369s

高速道路下は、
テニスコートになっていたが、
橋桁含め妙にきれいで明るく
高架下感がない。
P5123371s

奥の水色の橋がJR南武線の鉄橋。
宿河原堰取水口からの用水と合流地点が
見えてきた。
P5123376s

下の地図(Google Map)、青丸から歩いて
赤丸 (JR南武線久地駅そば)まで
来たことになる(黄色線)。
Nikaryogmap31
ようやく、
宿河原堰取水口からの前回のコース
つながった。

続けて
二ヶ領用水のその先を歩くその前に、
ちょっと寄り道をしてみよう、
ということになった。

次回に続く。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2024年6月23日 (日)

長野県軽井沢 野鳥の森を中心に

(全体の目次はこちら


長野県軽井沢 野鳥の森を中心に

- 写真は撮れなかったけれど -

 

写真の整理をさぼっていたら
もう6月も後半になってしまったので、
実際の訪問時から
ずいぶん時間が経ってしまったが、
当時のメモを読んで思い出せるうちに、
小旅行の一部を記録として残しておきたい。

 

2024年のゴールデンウィーク(GW)は
長野県軽井沢に行ってきた。

早朝の雲場(くもば)池
散歩コースにお薦めだ。
P4293249ss
早朝なら、狭い遊歩道で
すれ違う人もまだ少ない。
P4293256s
ゆっくり歩いても20分もあれば一周できる。
P4293262s
よく見ると、まだまだ小さい新緑の葉は、
朝日を反射してまさに輝く光の粒。

 

昼は、野鳥の森ピッキオで開催される
ネイチャーウォッチングツアー
参加してみることにした。
駐車場付近の桜が美しい。
P4293296ss
野鳥の森までの道も
若い緑がなんともやさしい。
P4293265ss

途中こんな標識が。
P4293267s
「カエル横断注意」
これは、
【ヤマアカガエル】というカエルが
道路を横断することに対する注意なんです、
と、のちのツアーで
ガイドさんから教えてもらった。

ネイチャーウォッチングツアーの
スタート地点まで来た。
P4293268s
ここから先は小グループに分かれて
ガイドさんと一緒に森の中を歩く。
「この池には
 【シュレーゲル アオガエル】という
 カエルがいるんです」
との説明からツアーがスタートした。

P4293271s
とにかく、森の緑が気持ちいい。

ガイドさんによると、
* まだ葉が小さく、
 森の中が透けて見えること。

* 「キビタキ」に代表されるような夏鳥が
 渡来してきた時期であること。
などから、GWはバードウォッチングに
最適の季節だという。
なるほど、注意してよく見ると
「森が透けている」の感じがよくわかる。
P4293269s
森の中では、本格的な双眼鏡や
大きな望遠レンズをつけたカメラを抱えて、
個人でじっくり鳥を待つ人を
何人も見かけた。

たまたま話を聞いたひとりの方は、
1200mmにもなるズームレンズで
「オオルリ」「キビタキ」を
狙っているとのこと。
撮れた写真を見せてくれたが、
オオルリの青、キビタキの黄色を見ると、
魅了される理由がわかる気がする。

【コクサギ:小臭木】
P4293270s
途中、ガイドさんが「ニオってみて」と
皆に実体験を促していたのがこの葉。
枝や葉に独特なニオイがある。

ミカン科らしい。
柑橘系の爽やかなニオイではないが、
クサい、というほどのニオイではない。
なのに「小臭(こクサ)木」とは
あまりにものネーミングだ。

ニオイは一般的には防虫効果があるらしいが、
逆に
「他が食べないなら」の生物はいるわけで
カラスアゲハはこの葉を独占的に食べる、
という。

【オニゼンマイ(オシダ)】
P4293272s
30cm以上もあるちょっとグロテスクな形。

ツアーに参加すると、
森歩きの間、この本を貸してもらえる。
P4293282s
ガイドさんは、
鳴き声が聞こえると、立ち止まって、
「この鳴き声は**で」と
鳥の名前や特徴(大きさ、飛び方、色)を
わかりやすく説明してくれる。

もちろん、説明を聞きながら
鳴き声の方向に鳥を探すのだが、
発見はかなりむつかしい。

ツルルルル・・スピスピスピと
張りつめた大きな声を響かせていた
【ミソサザイ】という鳥が
実は体長が10cmほどしかない
日本でも1,2を争うほどの小さい鳥、
と聞いた時は、その声量とのギャップに
ちょっと驚いた。
スズメより小さな身体からあの声が
発せられているなんて。

それでも、鳥に関して言うと
【ミソサザイ】の他、
黄色いくちばしの【イカル】
胸の黄色が美しい【キビタキ】
などは実際に肉眼や双眼鏡にて
確認することができた。
【オオルリ】も「あれ!」と
教えてもらったのだが、
見る角度の問題か、残念ながら
美しい青色までは確認できなかった。

 

森の奥の「どんぐり池」には
本記事の最初に書いた
「カエル横断注意」の
【ヤマアカガエル】
オタマジャクシが
黒い塊のようになって泳いでいた。

「これだけいるオタマジャクシのうち、
 カエルになれるのはたった・・・」
とガイドさんが説明を始めたそのとき、
そのすぐ横で、
ザザッと何かが動いた。

見るとヘビ【ヤマカガシ】
まさにカエルとなった
貴重な(?)【ヤマアカガエル】を
食べている最中だった。
片足は完全に飲み込まれているのに
残りの体で必死に逃げようと
もがくカエル。

ツアーの名前通りの
「ネイチャーウォッチング」だ。

ガイドさんも、ヘビもカエルも
よく見かける生き物ではあるものの、
捕食の瞬間はめずらしいと興奮気味。

しかもこのあと、少し森を下ったところで
再度、
ヤマカガシがカエルを食べている瞬間を
目撃することになる。

わずか2時間程度のうちに
ヘビがカエルを、のその瞬間を
二度も目撃。印象深いツアーとなった。

 

川のそばにはこんな窪地も。
P4293285s
これは【ぬた場】と呼ばれる。
【イノシシ】
身体に付いているダニ等の寄生虫を
体に泥をなすりつけて落とす場所らしい。

キビタキを始めとする美しい鳥たちも、
2度も目撃できたヘビの捕食の瞬間も、
私の小さなカメラでは
Upできるほどの写真を撮ることは
できなかった。

でも、実際に見られたので満足だ。

ネイチャーウォッチングツアーのあとは、
新緑の軽井沢の散歩を気ままに楽しんだ。
P4303312s

こちらも小さくて写真では伝えきれないが、
さまざまな野草に花が咲いていて
ほんとうに美しい。
P4303313s

2024年4月末 軽井沢にて。
まさにリフレッシュできた小旅行だった。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2024年6月16日 (日)

「言語の本質」(4)

(全体の目次はこちら


「言語の本質」(4)

- 人類だけがなぜ言語を持つのか -

 

「げらげら」とか「もぐもぐ」といった
言語学の中では周辺的なテーマと
考えられてきたオノマトペをキーに
「言語の本質」を考えていこうという

今井むつみ, 秋田喜美 (著)
言語の本質

-ことばはどう生まれ、進化したか
中公新書

(書名または表紙画像をクリックすると
 別タブでAmazon該当ページに。
 以下、水色部は本からの引用)

は、終章に向けて、
「人類だけがなぜ言語を持つのか」という
大きな問題に独自の視点で取り組んでいる。

キーワードは
「AA:アブダクション推論」と
「BB:対称性推論」


推論には、
よく聞く「演繹」と「帰納」に加えて
「仮説形成推論
 (アブダクション abduction)」
という推論形式が提唱されているらしい。

【AA-1:演繹推論】

① この袋の豆はすべて白い 
 (規則)
② これらの豆はこの袋の豆である 
 (事例)
③ ゆえに、これらの豆は白い
 (結果)


【AA-2:帰納推論】

① これらの豆はこの袋の豆である
 (事例)
② これらの豆は白い
 (結果)
③ ゆえに、この袋の豆はすべて白い
 (観察からの一般規則の導出)


【AA-3:アブダクション推論】

① この袋の豆はすべて白い
 (規則)
② これらの豆は白い
 (結果)
③ ゆえに、これらの豆は
  この袋から取り出した豆である
 (結果の由来を導出)

これらのうち、
常に正しい答えを導けるのは演繹推論だけ
帰納推論とアブダクション推論は
常に正しい答えに辿り着けるわけではない。

しかし、この三つの推論のうち
新しい知識を生むのは、
帰納推論とアブダクンヨン推論であり、
演繹推論は新たな知識を創造しない


帰納推論は
 観察される部分を、
 全体に一般化しており、
アブダクション推論は
 観察データを説明するための、
 仮説を形成する。
しかし、仮説なしに帰納的方法は
成立しないので、

帰納推論とアブダタンョン推論は連続し、
混合している


【対称性の一般化】

赤くて丸い果物はRINGOであると
教えたとき、その逆のRINGOという音は
赤くて丸い果物なのだと
思いこむことを想定している。

でも、この一般化は
論理的には正しくない。
「ペンギンならば烏である」が正しくても
「烏ならばペンギンである」は正しくない。

対象→記号の対応づけを学習したら、
記号→対象の対応づけも
同時に学習する。

人間が言語を学ぶときに
当然だと思われるこの想定は、
論理的には正しくない
過剰一般化なのである


【BB 対称性推論】
前提と結論をひっくり返してしまう推論は
「対称性推論」と呼ばれる


店の前の長い列を見て
「おいしいから混んでいる」ではなく
「混んでいるからおいしい」と
考えてしまうように。

 

オノマトペから話を始めた筆者は、
オノマトペの役割を次のように
書いていた。

言語の進化においても、
今を生きる子どもの
言語の習得においても、
オノマトペは
言語が身体から発しなから
身体を離れた抽象的な記号の体系へと
進化・成長するつなぎの役割
果たすのではないか。

その言語の習得は、
推論による自律的な成長や
対象の一般化と深く関係している。
そのうえで、
「人類だけがなぜ言語を持つのか」という
大きな問いに、

対称性推論をしようとする
バイアスがあるかないか。

このような、
ほんの小さな思考バイアスの違いが、
ヒトという種と
そのほかの動物種の間の、
言語を持つか持たないかの違いを
生み出す


そして言語によって、
人間がもともと持っている
アブダクション推論が

目では観察できない
抽象的な類似性・関係性を発見し、
知識創造を続けていくという
ループの端緒になるのだと
筆者たちは考えている。

と答えていた。

ヒトの乳児は対称性推論をするのに
チンパンジーはしない。
ヒトは、アブダクションという、
非論理的で誤りを犯すリスクがある推論
ことばの意味の学習を始める
ずっと以前からしているらしい。

知識を創造する推論には
誤りを犯すこと、失敗することは
不可避なことである。

それを修正することで
知識の体系全体を修正し、再編成する。

この循環が
システムとしての言語の習得にも、
科学の発展にも欠かせない

キーワードをもう一度、繰り返したい。
「非論理的で誤りを犯すリスクがある推論」
が大きな力を持っている。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2024年6月 9日 (日)

「言語の本質」(3)

(全体の目次はこちら


「言語の本質」(3)

- 英語のオノマトペはどこに? -

 

「げらげら」とか「もぐもぐ」といった
言語学の中では周辺的なテーマと
考えられてきたオノマトペをキーに
「言語の本質」を考えていこうという

今井むつみ, 秋田喜美 (著)
言語の本質

-ことばはどう生まれ、進化したか
中公新書

(書名または表紙画像をクリックすると
 別タブでAmazon該当ページに。
 以下、水色部は本からの引用)

の中で、
「英語にオノマトペの体系がない理由」
をたいへん興味深く説明してくれていた。

言語には大きく分けて
動詞枠づけ言語
  verb-framed language」と
衛星枠づけ言語
  satellite-framed language」
という二つのタイプがある。


【動詞枠づけ言語】

動詞枠づけ言語では、
「プラブラと公園を横切る」のように
移動の方向をおもに述語動詞で表す

日本語のほかに、
ロマンス諸語(フランス語、スペイン語、
イタリア語、ポルトガル語など)、
アルタイ諸語(トルコ語、
モンゴル語など)などが該当する。

確かに、日本語では「降りる」「入る」
「横切る」「越える」など、
どれも方向が入っている
一方で、「トボトボ」「足早に」
「片足を引きずりながら」のように
様態は述語以外で行うことが多い

【衛星枠づけ言語】

衛星枠づけ言語では、
stroll across the park のように
方向をおもに述語以外で表す

ゲルマン諸語(英語、ドイツ語、
オランダ語、デンマーク語、
スェーデン語など)や
スラブ諸語(ロシア語、
チェコ語など)などが該当する。

なるほど。英語では、動きの方向性が
down, in, across, overといった
述語動詞以外の要素で表されている。

英語には
〈歩く〉や〈走る〉といった
様態を細かく区別した動詞が
140以上ある


これらを日本語に訳そうとすると、
 amble (のんびり歩く)、
 tiptoe (抜き足差し足で
      そろりそろりと歩く)、
 sashay (しゃなりしゃなり歩く)、
 stroll (ぶらぶら歩く)、
 swagger (ずんずん歩く)、
 toddle (よちよち歩く)のように、

「オノマトペ+歩く」
などとなることが多い。

他にも、
* 「ぺちゃくちゃ」と
 chatterの「チャ」も同種の音のように、
 日本語のオノマトペの音と
 動作の様態を表す英語の動詞には
 共通性があること

* 英語では
 擬音語「ピーッ」「ガラガラ」なども
 一般動詞となっている
などの話が紹介されている。

そう言えば、本ブログでも以前
英語のオノマトペについて
書いたことがあった。

宮ザワザワ賢治 - 擬態語の音とイメージ -

リンク先の記事の後半では、
米国出身のオーストラリアの作家
ロジャー・パルバースさんが、
オノマトペを多く含む
宮沢賢治の「注文の多い料理店」の一節、

「風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、
 木の葉はかさかさ、
 木はごとんごとんと鳴りました」

を英語に訳して
英語で朗読してくれている。

ご興味があればぜひリンク先の
音声ファイルを聴いてみて下さい。

英語のオノマトペを知るためには
「音」で聞くことに大きな意味がある、
に気づかせてくれる朗読だ。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

2024年6月 2日 (日)

「言語の本質」(2)

(全体の目次はこちら


「言語の本質」(2)

- オノマトペ、多くの例を多角的に -

 

「げらげら」とか「もぐもぐ」といった
言語学の中では周辺的なテーマと
考えられてきたオノマトペをキーに
「言語の本質」を考えていこうという

今井むつみ, 秋田喜美 (著)
言語の本質

-ことばはどう生まれ、進化したか
中公新書

(書名または表紙画像をクリックすると
 別タブでAmazon該当ページに。
 以下、水色部は本からの引用)

オノマトペの「アイコン性」と
「感覚イメージを写し取る」ことを
多角的に掘り下げた第2章は
例を見ているだけでも楽しいので
代表例を整理しながら並べてみたい。

<単語の形のアイコン性>
重複形:「ドキドキ」「グングン」
単一形:「ドキッ」 「ドキリ」

日本語オノマトペの代表的な辞典である
Dictionary of
Iconic Expressions in Japanese
を見てみると、
1620語の収録語のうち571語(35%)が

「ドキドキ」「グングン」といった重複形。
「ドキッ」「ドキリ」といった単一形は
547語(34%)。

<音のアイコン性>
== 清音:濁音 ==
「コロコロ」:「ゴロゴロ」
「サラサラ」:「ザラザラ」
「トントン」:「ドンドン」

gやzやdのような濁音の子音は
程度が大きいことを表し、
マイナスのニュアンスが伴いやすい

濁音のみで「大きく」なっている感が
共通に現れてくるというのはおもしろい。

Dictionary of
Iconic Expressions in Japanese
から抽出できる598個の語根のうち
311個(52%)が「コロ/ゴロ」のように
語頭の清濁についてペアをなす。

清濁は、日本語の音象徴の「軸」
と言ってよいほどの重要性を持つ

清濁によるニュアンスの差は、
オノマトペ以外でも同じように
現れることがあるようだ。

「子どもが遊ぶさま」の
さま」に対して、
「ひどいざま」の「ざま」は
軽蔑的な意味合いを持つ。

「疲れ果てる」の「はてる」に対する
ばてる」にも
ぞんざいなニュアンスが伴う。


== nから始まる ==
「のろのろ」「にょろにょろ」
「ぬるぬる」「ねばねば」

nから始まるこれらのオノマトペからは、
遅い動き、あるいは滑らかさや
粘り気のある手触りという意味

取り出せそう

動詞:「塗る」「練る」「舐める」
形容動詞:「滑らか」
にも共通する意味の傾向

== 母音「あ」:「い」 ==
「パン」:「ピン」
「パチャパチャ」:「ピチャピチャ」
「ガクガク」:「ギクギク」

「あ」は大きいイメージと、
「い」は小さいイメージと
結びつくようである。


== 二つめの子音がr ==
「コロコロ」「クルクル」「ポロポロ」
「ヒラヒラ」「チュルチュル」

回転、落下、吸引など
スムーズな動きを表すことが多い。


== 阻害音と共鳴音 ==
阻害音:「バクバク」「カサカサ」
    「ゴトゴト」「プチプチ」
共鳴音:「ムニャムニャ」「ユラユラ」
    「リンリン」「ワンワン」

子音には大きく分けて
「阻害音」と「共鳴音」の
二種類がある。

阻害音は角張っていて硬い響きの音、
共鳴音は丸っこい柔らかい響きの音
と考えるとよい。

阻害音としてはp,t,k,s,b,d,g,zなど、
共鳴音としてはm,n,y,r,wなどがある。

== ハ行、バ行、パ行 ==
「ハラハラ」「バラバラ」「パラパラ」
「ヘラヘラ」「ベラベラ」「ペラペラ」
「フラリ」 「ブラリ」 「プラリ」

目的のなさが強いのは「フラリ」、
のんびり楽しむ感じが強いのは
「ブラリ」、
ややいい加減な感じがするのは
「プラリ」。


筆者らは、これらの感覚が
聾者とも共有できるか、の実験まで
実施している。

驚くことに、聾者たちは
健聴者の大学生とほほ同じように
音象徴的な結びつけを
行うことができた


「マルマ」は丸っこい、
「タケテ」は尖っている
といった具合である。

補聴器や
人工内耳の使用による聴覚的な経験、
発音のシミュレーションの影響等を
考慮した実験も行われているようだが

発音のアイコン性によって
音から意味が取り出せることを示す
重要な結果

が得られているのも興味深い。

「オノマトペは、なぜ非母語話者には
 理解が難しいのか」
という第1章での疑問が
スッキリと解決されるわけではないが、
多くの例を多角的に見ることで
オノマトペには、

言語の差を越えて
感知できるアイコン性と、
各言語にチューニングされて、
その言語の話者だからこそ
強く感じられるアイコン性

共在する

ことがわかってくる。

「各言語にチューニング」こそが
母語話者と非母語話者の理解の差、
「しっくり感」の差を
生みだしているということなのだろう。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

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