二ヶ領用水(4) 久地円筒分水をメインに
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二ヶ領用水(4) 久地円筒分水をメインに
- 円弧の比率で分水 -
二ヶ領用水歩き、
* 二ヶ領用水(1) 三沢川との立体交差まで
* 二ヶ領用水(2) 向ヶ丘遊園駅付近まで
* 二ヶ領用水(3) 久地の合流地点まで
と、
JR南武線久地駅のそば、
下の地図の赤丸地点まで来た。
向ヶ丘遊園の方から流れてきた
二ヶ領用水(上図黄色線:下写真左)と
歩いてきた二ヶ領用水(青線:下写真右)が
合流している。
今日は、この合流地点から
スタートしたい。
合流した二ヶ領用水は
こんな大きな流れとなって
JR南武線久地駅から先、流れていく。
【久地(くじ)の横土手】
「多摩川に対し直角につくられた横土手。
江戸時代、洪水の水勢を弱める目的で
つくられた。
この土手を挟んで利害の対立が激しく
工事は約300m進んだところで中断した」
との説明が添えてあるが、はて?
水勢を弱める目的で多摩川に直角、は
いいとしても、300mで中断、の
300mがどこの長さなのか、
図がないと全くイメージできない。
そのすぐ先には、
【久地分量樋(ぶんりょうひ)】跡の碑が。
「久地で合流した二ヶ領用水の水を
4つの幅に分け、
各堀ごとの水量比率を保つための施設で、
江戸時代中期に田中休愚(丘隅)によって
作られました。そして、
昭和16(1941)年、久地円筒分水の
完成により役目を終えました」
と説明がある。
円筒分水までは、歩いてもう数分だ。
この碑の横には、
高層マンションが二ヶ領用水(右下)に
覆いかぶさるように建っている。
平瀬川(左側)と二ヶ領用水(右側)の
との合流地点。
そのすぐ横に
【久地円筒分水】がある。
中央の円筒部だけでも直径8m。
外側の円は直径16m。
送水されてくる流量が変わっても、
分水比が変わらない
定比分水装置の一種で
昭和16(1941)年に造られた。
完成から80年を越えている。
近くの案内板にある構造図を
拡大して載せておこう。
左側の二ヶ領用水から流れて来た水は
平瀬川の下を通って、
円筒から吹き上げる。
円筒は完全な水平に施工されており、
放射状にあふれ出た水は、
円弧にそって配置された
* 川崎堀
* 根方堀
* 六ヶ村堀
* 久地堀
の4つの堀に分水されることになる。
そのとき、各堀に流れる水は
上の写真にあるように、
垂直に造られた壁がなす
円弧の長さによって、
その比率が決まってくることになる。
円弧の長さに比例して
一定の比率で4つの堀に
分水するしくみ、というわけだ。
当時の最先端をいく装置で、
平成10(1998)年に、
国登録有形文化財となっている。
2枚上の写真の平面図を見ればわかる通り、
平瀬川の下をくぐって
円筒分水に流れ込む水は、
二ヶ領用水のごく一部だ。
二ヶ領用水の円筒分水への取水口は
こんな感じ。写真右の水門部。
今でも円筒の縁の水平度は美しく、
まさに均一に流れ落ちている。
ここから先は、
円筒分水で一番多くの水をわけてもらえた
「川崎堀」に沿って歩く。
国道246号との交差部は
二ヶ領用水は国道の下、
人間は歩道橋で国道の上を通る。
JR武蔵溝ノ口駅に近くなると、
民藝運動で知られる
第1回人間国宝の陶芸家、濱田庄司が
溝の口で生まれ、
溝の口の宗隆寺に眠っていることから
それを顕彰しての「浜田橋」という
小さな橋もかかっている。
少し先、「石橋供養塔」という
小さな供養塔のそばには、
「この緑道が、
かつて二ヶ領用水の本流だった。
昭和16年、用水は今の流路に
つけ替えられた」
なる説明が。
その緑道がこれ。
ちょっとわかりにくいが
緑道が左、
今の二ヶ領用水が右、
真ん中は用水沿いの道。
かつての本流、今緑道、も時間があれば
追ってみたいものだが・・・
その後も静かな流れが続く。
農業用水として使っていたころは、
こういった簡単に流れの制御ができる
小さな堰が活躍したことだろう。
数は多くないが、水門もある。
JR武蔵中原駅の近くまで来ると、
武蔵小杉の超高層ビル群が
大きな塊で見えてきた。
と、この地点まででは、
二ヶ領用水歩きとしては
かなり中途半端なのだが、
日もかなり傾いてきたため
日没タイムアウト、ということになった。
JR武蔵中原駅前の居酒屋で
一緒に歩いた仲間と乾杯。
中途半端な地点での切り上げでも
丸一日歩いた後のビールはうまい。
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