「言語の本質」(1)
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「言語の本質」(1)
- オノマトペも母語依存? -
「げらげら」とか「もぐもぐ」といった
言語学の中では周辺的なテーマと
考えられてきたオノマトペをキーに
「言語の本質」を考えていこうという
今井むつみ, 秋田喜美 (著)
言語の本質
-ことばはどう生まれ、進化したか
中公新書
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
は、二人の筆者によるものだ。
章を分担して別々に書くことが多いが、
本書は、二人の筆者が
思考のキャッチボールをしながら、
言語という高い山に挑戦すべく、
すべての章をいっしょに執筆した。
というスタイルで書かれたものらしい。
まずは具体的なイメージがわきやすいよう、
日本語のオノマトペの例を見てみよう。
本文に出てきた例を並べてみると
擬音語:
「ニャー」「パリーン」「カチャカチャ」
聴覚情報
擬態語:
「ザラザラ」「ヌルッ」「チクリ」
触覚借報
擬態語:
「スラリ」「ウネウネ」「ピョン」
視覚情報
擬情話:
「ゾクッ」「ドキドキ」「ガッカリ」
第六感とでもいうべき身体感覚や心的経験
どれも馴染みはあるが、何がオノマトペか、
を定義しようとすると難しい。
オランダの言語学者
マーク・ディンゲマンセは
オノマトペを
特徴的な形式を持ち、
新たに作り出せる語
と定義しており、これが広く
受け入れられているらしい。
「ニャー」「ザラザラ」「スラリ」など
母語話者にはしっくりくる。
まさに感覚経験を
写し取っているように感じられる。
ところが、本文には
中央アフリカのパヤ語
「ゲンゲレンゲ」は何を表しているか?
といった外国語の例も挙げられており、
必ずしもわかりやすいとは限らない。
ことが実感できる。ちなみに
「ゲンゲレンゲ」は「痩せこけた様子」
だとか。
確かに日本語を母語とする私には
イメージしにくい。
なぜ非母語話者には理解が難しいのか。
この疑問に
基本的に物事の一部分
で、一度に複数の要素を
写し取ることができないため、
と解説し、
物事の一部分を
「アイコン的」に写し取り、
残りの部分を換喩的な連想で
補う点が、絵や絵文字などとは
根本的に異なる
と冒頭の第一章をまとめている。
換喩(メトニミー)とは、ある概念を、
それと近い関係にある
別の概念で捉えることで、
「鍋が食べたい」といえば、
料理を作るための器である鍋でもって、
その中味の料理を指す、を
例として挙げている。
アイコンと違うことも、
物事の一部分しか音声化できないことも
まさにその通りだと思うが、
そのことと
非母語話者には理解が難しいこととは
どう結びつくのだろうか。
疑問を抱えたまま
先のページに進むことになる。
この本の話、次回も続けたい。
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