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2024年4月21日 (日)

音語りx舞語り「春」日本舞踊編

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音語りx舞語り「春」日本舞踊編

- 芸は人を大きく見せる? -

 

(2024年5月6日 更新版)

(a) ヴィヴァルディ作曲/「四季」より「夏」
の音楽に
(b) 能 土蜘蛛
(c) オリエンタルダンス

を合わせるという大胆な企画を
2023年9月に実現した「音語りx舞語り」。

「こんな異質なものが合うの?」の
当初の疑念というか戸惑いを払拭した
驚きのパフォーマンスについては
こちらに記事として書いたが
今度は、

(c1) コラボ1
 ヴィヴァルディ x 日本舞踊

(c1-a) ヴィヴァルディ作曲/
    「四季」より「春」
(c1-b) 日本舞踊

(c2) コラボ2
 バッハ x 謡「吉野天人」x 日本舞踊

(c2-a) バッハ作曲/
    無伴奏ヴァイオリンのための
    パルティータ
(c2-b) 謡:吉野天人
(c2-c) 日本舞踊

に挑戦するという。
企画の本郷幸子さんの挑戦心、
イマジネーションには驚かされるばかりだ。

というわけで、
さっそく聴きに(観に)行ってきた。
印象的だったことを
忘れないうちに書いておきたい。
2404s

開催は、2024年4月13日。

(1) 会場
会場は東京・上野の
東京藝術大学のすぐ横にある
市田邸。

この市田邸、
築100年を越える木造建築で、
明治時代の日本橋・布問屋
市田善兵衛の私邸だったらしく
国登録有形文化財建造物になっている。

今回はここの
1階の和室8畳間を公演用ステージに、
隣接する和室6畳間を観客席にと、
まさに演者と観客の間に隔たりのない
アットホームなセッティング。

座布団または小さな丸椅子に座って
観覧する。

床の間の前の畳の間、
会場選択からして日本舞踊を活かすための
配慮が行き届いている。

 

(2) 計14畳の和室の空間
主宰の本郷幸子さんは企画のほか、
当日もヴァイオリン、お話と大活躍。

小学校5年生の時から教えているという
教え子の森永かんなさんとの共演
 ルクレール作曲
 2つのヴァイオリンのためのソナタ
で演奏会が幕を開けた。

上に書いた通り、観客含め全員が
(外廊下部分もあるとはいえ)
計14畳の和室の空間の中にいるので、
2台のヴァイオリンが、
お互い聞き合って合わせようとする
視線や息遣いまで細かく伝わってくる。

絶妙な2台のバランス、
先生にとっても、教え子にとっても
感無量の時間だろう。


さてさて、コラボ企画に関しては
前回同様、それぞれの分野の演者から
曲だけではなく各分野についての
初心者向けの解説があった。

解説して下さったのは演者でもある
 ヴァイオリン:本郷幸子さん
 日本舞踊:坂東三奈慧(みなえい)さん
 謡:大金智さん


(3) 語りから音楽へ
清元、長唄の披露のあと、
 (s1) 義太夫
 (s2) 常磐津 (ときわづ)
 (s3) 清元 (きよもと)
 (s4) 長唄
の違いについて、
三奈慧さんはこんな説明をしてくれた。

語りの要素が一番強いのが義太夫。
(s2),(s3)と語りが洗練されていき、
音楽の要素が強くなってくる。
聞く音楽として発展したのが長唄。

厳密な定義や分類はわからなくても
「語り」と「音楽」のある種の比重で
分類や推移があることを知るだけでも
三味線音楽への関心の度合いが
ぐっと深くなる。


(4) 型の存在
「型の存在」についても
たいへん興味深い話があった。

クラシックバレエには
1番、2番と番号がついている
足のポジジョンを始めとして、
最初に学ぶべき基本的な型がある。

能にも、
「サシ込開(さしこみひらき)」の
組合せのように型はあります、と
大金さん。

一方、日本舞踊のほうは、
型だけをくり返しお稽古したり、
型をマスターしてから
作品に入ったりはしない。

作品をお稽古しながら
型を自然に覚えていく、
という世界らしい。

とは言え、時代とともに、
お稽古の回数が少なくなってきたり、
畳がない暮らしなど
生活環境も変わってきている。
なので
日本舞踊にも型をお稽古するような
お稽古の仕方があってもよいのではないか

という意見も
昨今聞かれるようになってきた、とのこと。

芸の伝承とはどうあるべきなのだろう?

当日の内容と
のちに三奈慧さんから補足していただいた
「型」の説明とを合わせて考えると、
素人の私にもそんな疑問が浮かんでくる。

作品や技術の伝承のみが
その本質ではないとはいえ、
伝えるための工夫は
時代に合わせて必要なのかもしれない。


(5) 鏡の存在
理論ではなく、体が覚えるまで繰り返し
身につけるのが日本舞踊。

近年、稽古の環境が変わり、
鏡やビデオを使うこともあるけれど、
基本はご法度。

客観視しないで自分の身体感覚だけで
脳内の像を表現できるようにするのが
日本舞踊という芸。

能でも (「鏡の間」はあるけれど)、
稽古で鏡は使わない。

鏡を使う  :クラシックバレエ
鏡を使わない:日本舞踊、能


鏡を使うと鏡がないと稽古ができなくなる、
という言葉はいろいろ考えさせられる。
何も見なくても表現できる、が大事と。


(6) 扇とおもり
日本舞踊で使う「扇」と
能で使う「扇」との違いについても
実物を並べて丁寧に説明してくれた。
初めて知ったのは、
日本舞踊で使う扇には
要(かなめ)の部分に
「おもり」が埋め込まれている

ということ。

当日の舞踏の中でも
風であったり、花びらであったり、
さまざまな表現に使われていた扇。
その自然でなめらかな動きは、
単に手首の動きだけではなく、
おもりの重力をうまく活かして
作り出されたものだったようだ。


(7) 芸は人を大きく見せる
他にも、
西洋のものは舞踏と言われるように
大地を蹴って跳躍、が基本。
日本のものは下に下に、で田植えの感覚、
といった比較もおもしろい。

跳躍の気分あふれる今回の音楽「春」の
上にひっぱられないように
踊るのがむつかしいところ、と三奈慧さん。

上にの西洋音楽、下にの日本舞踊、能。

「対極のものをぶつけるのがおもしろい」
と企画の本郷さん。

各分野における基本事項や関連事項、
考え方の背景を教えていただいたうえで、
いよいよコラボを体験することとなった。

(c1) コラボ1
 ヴィヴァルディ x 日本舞踊

(c1-a) ヴィヴァルディ作曲/
    「四季」より「春」
(c1-b) 日本舞踊

(c2) コラボ2
 バッハ x 謡「吉野天人」x 日本舞踊

(c2-a) バッハ作曲/
    無伴奏ヴァイオリンのための
    パルティータ
(c2-b) 謡:吉野天人
(c2-c) 日本舞踊


音語り事務局が、(c1)を14秒だけ
ここで公開してくれている。

個人的に印象的だったのは、
(c1)の日本舞踊における
「春」のユニークな解釈と、
(c2)におけるバッハの選曲。

選曲のセンスには敬服しかないが、
バッハの偉大さも改めて痛感。
音楽と謡の融合により
今自分がどこにいるのか
わからなくなるような
独特なトリップ感を味わえる。


もうひとつ、今回の大きな発見は
踊っているときの坂東三奈慧さんが
すごく大きく見えたこと。

小さな空間で集中して観たから
よけいそう感じたのかもしれないが、
踊っているときと、
語りで解説してくれているときの
体格というか、纏う空気の大きさが
あまりにも違っていてびっくりした。

芸は人を大きく見せる、ということか。

もちろん私個人の感触で
物理的にはなにも変わってはいないけれど。

 

くつろいだ空気の中、
今回もほんとうに楽しい演奏会だった。
その場でのパフォーマンスはもちろん、
型の話だって、鏡の話だって、
おもりを活かした表現だって、
上にの西洋音楽、
下にの日本舞踊、能 の話だって、
その先に大きな世界が広がっている
その入口を示してもらえただけでも
大きな価値がある。

「夏」と「春」を経験できた。
本郷さんは
「四季をcompleteしたい」と
おっしゃっていたので、
ぜひまた次回にも期待したい。

 

 

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