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2023年11月

2023年11月26日 (日)

全体をぼんやりと見る

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全体をぼんやりと見る

- 集中すると体を痛める -

 

参加者が実際に体を動かしてみる講習会を
各地で数多く開催している
身体技法研究者の甲野陽紀さんが書いた

甲野 陽紀 (著)
身体は「わたし」を映す間鏡である
和器出版

(以下水色部、本からの引用)

は、
「言葉」と「体の動き」の関係について
いろいろ気づかせてくれる、
ちょっとユニークな視点の本だ。
陽紀(はるのり)さんのお父様は
古武術研究家として知られる
甲野善紀さん。
おふたりとも「体の動き」の
スペシャリストだ。


たとえば、
ここに立っていて下さい
と言われた場合と
ここにいて下さい
と言われた場合、
同じ「立」っていても
体の安定感はずいぶん違うらしい。

「いて下さい」のほうが
安定している。
そんなこと考えたこともなかった。

ある動作をめざして体を動かすとき
それは、運動でも、楽器の演奏でも
なんでも同じだが、
「ほんとうにうまく動けた時」の感覚を

うまく動けたときに限って、
"できた感じ" "やった感じ" が
しない

などと言われると、
自分の実体験に思い当たることもあり
「そうそう、どうして?」
と思わず先を読んでしまう。

そんな中、特に印象的だったのは
理容・美容師さんから聞いたという
次の話だ。

高い技術を持つ人でも
「目を使いすぎる」
やり方をしている方は首や肩、
腰などに負担をかけやすく、
身体を痛めているケースが多い

らしい。

たとえば、ハサミを使うとき、
髪を切っているハサミの動きを
追い続けるようなやり方をしていると、
身体が固まる感じが出てきます

これは
「目を使いすぎている」状態です。

「見る」がかえって体の動きを
固くしている。

では、どうすればいいのか?

話を聞くと、
逆に身体を壊さない人は
ハサミを使っている手元を見ない、
目をやったとしても
パッと見るぐらいで、
ヘアスタイルという全体に
「目線を向けている」

ということなどもわかり、
「目の使い方」について、
私も勉強になった経験でした。

「見る」ではなく、
「目線を向ける」にすると
体が安定して力が抜け
動きのパフォーマンスは
かえって上がる。

そう言えば、以前
舞台の役者さんからも
同じような話を聞いた記憶がある。

一点に集中するのではなく
「全体をぼんやりと見る」

柔軟に体を動かすためにも、
また、緊急時に素早く反応するためにも
そして、体に負担をかけないためにも
ほんとうに重要なキーワードなのだろう。

「いいパフォーマンスのために集中!」
は、疑ってもいいのかもしれない。

 

<おまけ>
本には講習会での体験メニューが
いくつか紹介されているが、
実際にやってみて
特に驚いたメニューがあるので
それだけ紹介したい。

<「ついていく」と「くっつく」>
Aさんは手のひらを上にして手を伸ばす。
Bさんは自分の手のひらを下にして
Aさんの手のひらに重ねる。

その後、Aさんは、
Bさんの手が重なった手のひらを
前後左右、かってに動かすのだが、

その時、Bさんに対して
(1)「Aさんの手についていって下さい」
というか
(2)「Aさんの手にくっついて下さい」
というかで、
Bさんの手の追随性が全く違ってくる。

「ついていく」では
追えずに手が離れるときも
しばしばあるのに、
「くっつく」では不思議なほど
くっついた状態を維持できる。

協力者の得られる方
ぜひお試しあれ。

 

 

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2023年11月19日 (日)

読書を支える5つの健常性

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読書を支える5つの健常性

- 「本好き」たちの無知な傲慢さ -

 

みずからも重度障害者である
市川沙央さんが書いた
重度障害者(井沢釈華)を主人公にした
小説「ハンチバック」は2023年
第169回芥川賞を受賞している。

市川 沙央 (著)
ハンチバック
文藝春秋

(以下水色部、本からの引用)

この小説から引用するなら
やはり本文27ページにある
この衝撃的な一節だろう。

私は紙の本を憎んでいた。

目が見えること、
本が持てること、
ページがめくれること、
読書姿勢が保てること、
書店へ自由に買いに行けること、
5つの健常性を満たすことを
要求する読書文化のマチズモを
憎んでいた。

その特権性に気づかない
「本好き」たちの無知な傲慢さ

憎んでいた。

まさに、その特権性に
まったく気づいていなかった
「本好き」のひとりである私は
ほんとうにドキリとさせられた。

ちなみに、マチズモとは、
デジタル大辞泉(小学館)によると

マチスモ【machismo】
《「マチズモ」とも。
ラテンアメリカで賛美される
「男らしい男」を意味する
スペイン語のmachoから》
男っぽさ。誇示された力。
男性優位主義。

を意味する言葉らしい。

このあたりの言葉の選び方と
出版後の反響について、
著者の市川さんが、
障害者文化論の学者である荒井裕樹さんと
往復書簡でやりとりしているようすが
雑誌「文學界」に載っている。

市川沙央⇔荒井裕樹 往復書簡
「世界にとっての異物になってやりたい」
雑誌 文學界 2023年8月号
文藝春秋

(以下緑色部、本からの引用)

まずは、市川さんの言葉。

ところで、健常者優位主義のルビは
本来ならエイブリズム
とするべきところを、
わざとマチズモとした私の底意は
想定以上の効果を発揮しながら
読者の皆様に
刺さりにいっているみたいで、
実のところ私は今うろたえています。
(「言葉が強い」
 とのご感想に触れるたび、
 そこまで刺すつもりはなかった、
 良心ある人々の心を
 脅かすつもりはなかったと、
 ひたすら申し訳ない気持ちに
 なっています。) 

うろたえつつも、
至らぬばかりの拙作において
唯一会心の出来と言える箇所
やはりそこなのだろうと思います。

エイブリズムではなく
マチズモというルビを振った時点で
私は小説家になったのかもしれません。

それに対して、
「本好き」のひとりであろう荒井さんも、
私が感じた「ドキリ」を
うまく言葉にしてくれている。

それにしても、<健常者優位主義>に
<マチズモ>とルビを振られたのには
驚きました。

紙の本に慣れ親しんでいること。
紙の本に愛着があること。

そんな素朴な感覚に
この言葉を投げつけられ、
私自身胸がしくしくと痛みました

自分は誰のことも傷つけていない。
問題なくスマートに振る舞えている。
そう信じて疑っていない感覚を
鋭く刺されたような思いです


<エイブリズム>より
<マチズモ>の方が
ダメージが大きいのは、
「良心的市民」を装う
私を含めた少なくない人が、
普段この言葉で他人のことを
責めることには慣れていても
(この言葉で誰かを責めることで
「良心的市民である自分」を
演じることには慣れていでも)、

自分自身が責められるなど
夢にも思ってないからでしょう

往復書簡は、荒井さんが

「生きる」ための
福祉制度が整えられる反面、
「生きる」という営みが 
「福祉」という枠の中に、
小さく、狭く、
閉じ込められている
のではないか。

と書き、市川さんが

障害者の読書権の問題をあくまでも
福祉領域のものごととして捉え
押しやろうとする考え方があった

本を読むという普遍的な行為すら、
努力して「獲得」しなければ
ならないこと


何気ない
日常のしぐさであるべき営みが、
「障害等級」や「算定単位数」や
「加算」という用語と時間の
制約に括られ、
福祉サービスとして評価されることで、
失われていく何か

と返信して続いていく。

読書権のことだけでなく
*「生きる」ことが
 「福祉サービス化」してしまった
 ことへの違和感や危機感
*そこで失われていくものへの言及
などなど、自分自身の
「無知な傲慢さ」に気付かされ
内容が続いており、
「ドキリ」だけでは言葉が足りない。

 

 

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2023年11月12日 (日)

バコーンってビッグになる

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バコーンってビッグになる

- 菅原小春さんの言葉 -

 

録画したTV番組を見ていたら
印象的な言葉に出会ったので
今日はそれを残しておきたい。

番組は、毎週3人のゲストが
司会を介さずにトークを展開する
「ボクらの時代」

「ボクらの時代」フジテレビ
2023年10月29日放送
菅原小春×森山未來×関口メンディー

(以下水色部は放送からの文字起こし)

ダンサーとして大活躍の3人。

私は普段、ダンスを積極的に
見る方ではないのだが、
ナン年か前、偶然TVで見かけた
たったひとりの踊りに、
思わず釘付けになってしまったことがある。

「えっ!いったい誰?この人」
その時、初めて知った名前が
「菅原小春」だった。

最初の衝撃が大きかったせいか、以降
自分の中ではちょっと特別な存在に。
その後も、世界的な活躍の話を聞く度に
「さすが、菅原小春さん」
と妙に嬉しい気分になっていた。

その菅原さんが、
ダンスなしにトークだけで登場。

芸能界デビューへのきっかけを
こんなふうに語っていた。

「小6の時に、
 それこそここら辺の原宿で
 スカウトとか
 いっぱいあったんですよ。
 今、どうなんですかね?」

「今もあると思う」

「そん時、当時、
 一回こうやって歩いたら
 7個くらいから・・・」

「すごい、私芸能人になれる!
 と思って。
 芸能人になれる!

 で、すっげぇ上からなんですけど、
 選ばせてもらって、
 スターダストさんに
 入ったんですよ」

「へぇ、えっ、はいったの?」

原宿でスカウトされ大手芸能事務所に。

小6で、歩いているだけで
7箇所から声をかけられるくらいだから
当時から独特なオーラがあったのだろう。

そんな菅原さん、
入った事務所の演技レッスンを
どんな気持ちで受けていたのか。
今日、書き残したかったのは
こんなかっこいい菅原さんの言葉だ。

「入って演技レッスンに行った時に、
 なんか子どもたちが頑張って
 なんか、
 これを覚えることによって、
 大人たちを喜ばせなきゃ

 っていうのが、感じちゃって。

 もし自分が
 バコーンってビッグになるなら
 この大人の人たちを
 ギャフンて言わせないと・・・

 でもそれは、私はこれを覚えて、
 じゃないんだな、って思って

 やめて・・・」

菅原さんにしか表現できない
独特な踊りの世界を切り拓き、
まさに大人たちをギャフンと言わせて、
バコーンってビッグになった菅原さん。

「私はこれを覚えてじゃないんだな」
って思えるなんて。
ビッグになる人は最初から違う。
まさに「さすが、菅原小春さん」。

 

 

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2023年11月 5日 (日)

トラクターのブレーキとアワーメーター

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トラクターのブレーキとアワーメーター

- 生涯平均時速が使えたら -

 

自分のことを「修行中の農業者」
と言っている鎌田さんが書いた

鎌田裕樹
野良の暦 10
トラクター初心者
雑誌群像 2023年8月号

(以下水色部、本からの引用)

を読んでいたら、小さなことながら
初めて知ったことがあったので、
今日はそのことを紹介したい。
農業用トラクターのブレーキと
アワーメーターについてだ。

まず、トラクターだが、

修業中の農業者であるぼくは、
まだ自分のトラクターを
持っていないので
師匠のトラクターを借りている。

クボタの24馬力。全長3060mm。
機体重量1250kg。
これだけ巨大な鉄の塊が、
普通自動車免許で運転できるなんて、
農家になるまで知らなかった。

とあるように、この程度のものであれば
普通自動車免許で運転してもいいようだ。

で、ひとつめ、ブレーキについて。

トラクターのなにがすごいって、
左右のブレーキが
独立している
ところである。

なるほど。そうだったのか。
これなら小回りがきくはずだ。

トラクターのブレーキは
後輪に備わっており、しかも、
ふたつあるブレーキペダルを
踏み分けることで、

左右どちらか一方のタイヤを
停止させることができる。

つまり、四本のタイヤのうち、
ひとつを固定し、
その点を回転の軸にすることで、
小さな半径での旋回が可能になるので、
畑を塗り潰すような動きができる。

もうひとつは、アワーメーター。

自動車のメーターパネルに走行距離が
「km」で表示されるのと同じように、
トラクターにはアワーメーター
というものがついていて、
「h(hour)」の単位で、
稼働時間が積算されていく。

トラクターなどの重機の類は
移動を目的としないので、
距離ではなく、
時間で表すようにできている

新車のトラクターは
びっくりするくらい高いので、
独立に向けて
中古のトラクターを探している。

調べてみると、
稼働時間1000時間で、
自動車でいう走行距離十万キロの
イメージなんだという。

トラクターにはアワーメーターか。

考えてみると、自動車に
アワーメーターがついていないのは
どうしてなのだろう。
足廻りのヘタリ具合はともかく、
エンジンの消耗度を見るためには、
使える指標のような気がするが。

ご存知の通り、
自動車にはODOメーターがあり
これまでいったいどれだけ走ったか、
「総走行距離」がわかる。

もしそこに「アワーメーター」もあれば、
「ODOメーター」と「アワーメーター」の
組み合わせで、その車の
「生涯平均時速」
計算できることになる。

たとえば、
「7.5万km」「3000h(時間)」
なら
「生涯平均時速25km/h」
というように。

この数値を集めて、統計的に処理すれば
 * 首都圏と地方都市
 * 日本と外国
などの走行環境の違いを比較できる
走行環境指標」としても
使えるのではないだろうか。

 

 

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