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2023年10月15日 (日)

作家はカタルシス

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作家はカタルシス

- 言葉あそびでお別れの言葉 -

 

雑誌新潮 2023年5月号が
【追悼】永遠の大江健三郎文学
という特集を組んでいたが、
その中で野田秀樹さんが書いていた

野田秀樹
作家はカタルシス
雑誌新潮 2023年5月号

(以下水色部、本からの引用)

から、メモを残しておきたい。
雑誌の記事って
なぜかすぐに記憶に埋もれてしまうし、
あとから探そうと思っても
難しいことが多いので。

 

野田さんは、ある時、
舞台の新作の
当日パンフレットにおける対談を
大江健三郎さんにお願いし、
快諾を得た。

そして今、敢えてその対談を
読み返さずとも思い出せる
大江さんが残してくれた
強烈な言葉が「触媒」であった。

大江さんは
「カタルシス」= catalysis
という英語の単語でしきりに
「触媒」について語った。

日本語として知っている
「カタルシス」= catharsis
(浄化作用)
とは、
別の単語だ。

野田さんのお芝居は、生の舞台にある
独特なカタルシス(浄化作用)が
最大の魅力だと思っているが、
ここで語られたのは
「触媒」の方のようだ。

(英語の音をカタカナで書くなら、
 「触媒」のほうが近い、と言えるだろう。
 「浄化作用」のほうは、あえて書くなら
 「カサーシス」だろうから)

もちろん、
通常の会話でカタルシスというと
「浄化作用」のことを指すけれど。

何か私は、それ自体が
暗号染みていて嬉しかった。

わかるな、野田、
「カタルシス」だそ。
と言われているようで。

この
「カタルシス」=「触媒」
というコトパは、
私のその作品が「海人」という
能を下敷きにした
現代の犯罪の話ゆえに
出てきたものである。

能の構造も、その私の作品も
いわゆる「依り代」
誰かが取り付くことで生まれる
世界だったからだ。

当日パンフの時点で、
大江さんは私の舞台は
まだ見ていなかったが、
すでに構造を言い当ててしまった。

依り代(よりしろ)」とは、
「神霊が依り憑く対象物のこと。
 御神木、岩石や山など」
注連縄(しめなわ)
囲まれていることも多い領域だ。

舞台の内容までは知らなかった大江さんが、
「依り代」の世界の舞台について
「触媒」をキーに語ったというのだから
偶然とはいえ、
野田さんもさぞ驚いたことだろう。

「読み返さずとも思い出せる」はずだ。

そんな大江さんに野田さんは、
実に野田さんらしい言葉あそびで
お別れの言葉を送っている。

どういうお別れの言葉を
最後にしようと考えていたら、
あ、と思いつきました。

それはきっとあの対談の時に
語っていた大江さんの言葉の
エッセンスでもあります。

作家はカタルシス、
 すなわち、語る、死す、
 そんな触媒。

 だから、作家自身は死んでも
 何も変わらないんですよ
。」

作家は触媒か。

* catalysis = 触媒
* catharsis = 浄化作用
* 依り代(よりしろ)
* 注連縄(しめなわ)

などのキーワードとともに
時々、思い返したい、と
ここにメモを残すことにした。



 

 

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