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2023年9月 3日 (日)

口からではなく皮膚からだった

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口からではなく皮膚からだった

- 免疫寛容は食べることで -

 

椛島(かばしま)健治さんが
皮膚について広く書いている

椛島 健治 (著)
人体最強の臓器
皮膚のふしぎ
最新科学でわかった万能性
講談社 ブルーバックス

(以下水色部、本からの引用)

の中から、アレルギー疾患について
ぜひメモっておきたいトピックスを
紹介したい。

まず、免疫関連の用語について、
簡単に復習しておこう。

抗原
体内で免疫反応を引き起こすもの。

アレルゲン(外来抗原)
アレルギーの原因となる物質。

抗体
特定の抗原に反応して
産生されるタンパク質。
抗体は、
異物(抗原)と結合することによって
抗原の毒性を減弱し生体の防御にあたる。

感作
アレルギー反応が起きるには、
特定の抗原を取り込んで、
その抗原に対し過敏に反応する
「感作」が起きる必要がある。

免疫寛容
抗原を投与しても
免疫反応が起こらないこと。

さて、今日
紹介したいのは次の一節。

すべてのアレルギー疾患の起点に、
皮膚経由で体内に異物が入ってくる
「経皮感作」
があるという
重大な事実です。

長らく、食物アレルギーは、
アレルゲンが含まれる食品を
食べること(経口感作)により
もっぱら生じる
と考えられてきましたが、
近年、むしろ経皮感作がきっかけで
起きることがわかってきました。

食物アレルギーのきっかけは、
口からではなく皮膚から
!?

きっかけは、2003年、
英国の小児科医ラックによる
ピーナッツアレルギーに関する発見。

ラックは二重抗原曝露仮説を
提唱します。

これは、外来抗原の曝露には、
「経皮」と「経口」の2種類があり、
食物アレルギー反応は
経皮感作を通じて発症する
もので、

むしろ経口摂取される抗原は
人体に有用な食品などには
過剰な免疫応答をしない
「免疫寛容」を促すものだと
主張したのです。

小児医学の世界では、
長らく経口摂取による食物が
アレルギーの発症原因と
信じられてきたので、
この仮説は大論争を引き起こしたらしい。

ところが、その後も、
二重抗原曝露仮説を裏付けるデータが
次々に報告される。

その中には、2011年に日本で起きた
「茶のしずく石鹸事件」も。

これまで小麦を食べても
大丈夫だった人でも、
小麦を含んだ食品をとると、
激しい下痢を起こしたり、
皮膚炎を発症したり、
呼吸困難が起きるようになりました。

被害が報告された当初は、
経皮感作の知見が十分でなく、
石鹸で顔を洗うだけで、
なぜ小麦アレルギー反応が起きるのか、
原因がよくわかりませんでした。

アレルギー疾患の起点に
「経皮感作」があることを
裏付ける報告が集積したことで、
論争にはほぼ決着がつき、
いまでは「二重抗原曝露仮説」は
科学的に正しいものと
考えられているらしい。

とは言え、ここ10年、20年での
新しい成果だ。

残念ながら、こうした考え方は
一般の方にはまだ広まっておらず

いまだにアレルゲンの摂取を控える
食事制限療法が盛んに行われています。

しかし、こうした食事制限療法は、
アレルギー疾患を防ぐ「免疫寛容」を
引き起こせなくなってしまうので、
症状がよけいに長く続いてしまう
可能性があります。

食物アレルギーの原因が
「食べること」ではなく
「皮膚から」だったなんて。

しかも、食べることは
逆に免疫寛容をもたらす
ことに
繋がるなんて。

経皮と経口、皮膚と腸内、
意外なものを並べて考えてみたくなる。

皮膚と腸内、と聞くと体の外と内の話、
と考えてしまいがちだが、
よく考えてみると実はコレ・・・
次回に続けたい。

 

 

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