たった一度の相談ごとへの返信
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たった一度の相談ごとへの返信
- 鶴見俊輔さんの回答 -
加藤 典洋 (著)
言葉の降る日
岩波書店
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
において、著者加藤さんが
鶴見俊輔さんについて語っている言葉は、
ほんとうに印象的だ。
前回の
「座礁した船を救う方法」でも触れたが、
おふたりの年齢差を再度紹介してから
引用を始めたい。
加藤典洋さん (1948-2019)
鶴見俊輔さん (1922-2015)
鶴見さんが26歳年上ということになる。
加藤さん、
「苦しさに堪えられず」
一度だけ鶴見さんに
相談ごとをしたことがある。
自分の一身上のことを
相談するような人間ではないのだが、
たった一度だけ、
苦しさに堪えられずに
そうしたことがある。
一身上のことを記し、
いま、自分は苦しいのだと
鶴見さんに書いた。
いただいたお手紙に、ひと言、
自分には何もできません、
という言葉が入っていて、
私は、自分の苦しみが
この人に受けとめられたと思った。
そしてそのときも救われた。
「何もできない」という返信に
「救われた」という加藤さん。
聞きたいのではなかった
(どうすることもできないことは
よくわかっていた)、
ただ、苦しみを誰かに
わかってもらいたかったのだが、
その返事から、そうであったことに
はじめて気づかされ、
助けられたのである。
「何もできない」という返信を読んで初めて
自分のほんとうの気持ちに気づいた
加藤さん。
そしてそれに「助けられた」という。
「何もできない」は
ちゃんと読んだというメッセージとしても
加藤さんに伝わっている。
信頼感に支えられた関係においては、
言葉がその意味を飛び越えて
大きな力となって相手に届くことがある。
小さなエピソードだが、
これはそんなすてきな例だと思う。
埋もれてしまわぬよう
ここに書き留めておきたい。
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