経(たて)糸は理知、緯(よこ)糸は感情
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経(たて)糸は理知、緯(よこ)糸は感情
- 手を返す瞬間に見える色がある -
♪ たての糸はあなた
よこの糸は私
織りなす布は
いつか誰かを
暖めうるかもしれない ♪
「糸」中島みゆき作詞作曲
は、30人以上の歌手に
カバーされているだけでなく、
もはや平成時代のスタンダード
という感じだが、
たての糸、よこの糸ということでは、
染織家の築城(ついき)則子さんが
印象的な言葉を残している。
ちょっと紹介したい。
2022年11月29日朝日新聞の「ひと」欄に
「小倉織」を復元し
特産工芸品に育てた染色作家
築城則子(ついきのりこ)さん(69)
の記事があった。
(以下水色部記事からの引用)
全国で珍重された木綿布の小倉織だが、
昭和の初期、
戦争や工業化の波を受けて消失した。
骨董店で偶然に小布に出合い、
工業試験場の電子顕微鏡で
分析したデータを手がかりに
築城さんは小倉織の復元に挑戦する。
1984年に完成。
極細の糸が幅1センチに60本も詰まり、
鮮やかなグラデーションを生み出す。
築城さんは、11年前
2011年10月3日朝日新聞「be」でも
取材されており、小倉織と染織の魅力を
もう少し詳しく語っている。
(以下緑色部記事からの引用)
アバンギャルドな試みをしていたはず。
同じことを繰り返していたら、
次につながらない。
今の感覚を注ぎ込むことが創造であり、
伝統だと思うのです
そんな築城さんと染織との出合いは
能の装束。
歌舞伎や浄瑠璃、狂言、能に
のめり込みました。
能楽堂には
能装束が展示してあるんです。
静かな舞に、
装束の果たす役割はすごく大きい。
いろんな色を詰め込んであるのに
ゴチャゴチャせず、
一筋の色が見えてくる。
手を返す瞬間に見える色がある。
私も、そんな色の世界を表現したい、
色を染めて織りたい、と思いました。
能の舞の中に一瞬見える色、
「手を返す瞬間」とはなんとも美しい。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の
ミックスした味わいがあるけれど、
小倉織は経糸だけの純粋培養というか、
明確でシャープ。
色の魅力を100%引き出してくれる。
それが私の好みとピッタリ合って。
ヨコシマな気はありません(笑)。
「織りの工程」を考えると
最初に確定されるたて糸と
順に織り込まれていくよこ糸とでは
その役割も表現できるものもずいぶん違う。
よく言います。
緯糸は
思うままに織り進められるけれど、
経糸は
最初からデザインを完結させ、
ねらいを定めないと織れない。
なるほど。
「たて」と「よこ」を表現する
そんな言葉もあるンだ。
♪ たての糸はあなた
よこの糸は私 ♪
ここで歌詞を重ねることに
ナンの意味もないけれど、
一度知ってしまうと
織物の向きが妙に気になってくる。
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