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2022年12月

2022年12月25日 (日)

クリスマス、24日がメインのわけ

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クリスマス、24日がメインのわけ

- 「24日の晩」は「25日当日」 -

 

今年は12月24日,25日が
ちょうど土曜、日曜に重なったこともあり
クリスマスイブ、クリスマスを
思い思いの形で
楽しんだ方も多かったことであろう。

それにしてもクリスマスって
そもそもは25日なのに
クリスマスイブを含む24日が
メインのようになっているのは
なぜなのだろう?

これについては
2020年12月19日朝日新聞
「ことばサプリ」

校閲センターの町田和洋さんが
明確に答えてくれている。
(以下水色部記事からの引用)

キリスト教が生まれた地域で
使われていたユダヤ暦では、
日没が一日の区切りとする
考え方があります。

24日の日が沈んだら
25日が始まっているわけだ。

旧約聖書の創世記、
出エジプト記などに
一日を夕暮れから起算する表現があり、
紀元前5-6世紀ごろには
こうした習慣があったと考えられ、
キリスト教もこの考え方を
受け継いでいるそうです。

24日の日没から25日の日没までが
「クリスマス当日」

クリスマスの夜とは
24日のイブ(晩)しかない。

ヒジュラ暦も
日没で一日が終わり、
夜からは次の一日です。

月の満ち欠けを元にした
太陰暦をベースに月の形を見て
暮らしの指針にした習慣から
自然な流れだったと思います。

ラマダン(断食月)明けが
夜になるのも日没で一日が終わり、
新月を視認して
翌月に移る節目だからです。

なので、イスラム圏で
「○日の夜」という約束をすると
一日ずれてしまうことがあるので
注意が必要、という
中牧弘允国立民族学博物館名誉教授の
言葉も紹介している。

考えてみると
「これまでの慣習を一切無視して、
 『一日の始まり』を好きに決めて下さい」
と問われたら、どこを選ぶだろうか?
少なくとも
今の午前零時を選ぶ気はしない。

最後にひとつオマケ。
こども電話相談室でだったと思うが、
以前こんな詩的な質問が寄せられていた。

「世界は夜から始まったのですか、
 昼から始まったのですか?」

 

気ままに続けているブログですが、
ことしも訪問いただき
ありがとうございました。

皆さま、どうぞよいお年をお迎え下さい。

 

 

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2022年12月18日 (日)

「ノアの大洪水説」を覆す

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「ノアの大洪水説」を覆す

- ダ・ヴィンチの豊かな発想 -

 

以前録音したNHKラジオの番組

 カルチャーラジオ
「過去と未来を知る進化生物学」(2)
「生物とは何か(1)
 昔は地球も生物だった?」
 古生物学者・更科功
        2022年1月14日放送

の回を、
次の3つのキーワードに絞って紹介したい。

<Keyword_1:地球が生きている証拠>
<Keyword_2:ノアの大洪水説を覆す>
<Keyword_3:ボウフラがわく、の意>


内容は番組のメモをまとめたものだ。

 

名画「モナ・リザ」の作者として知られる
レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519)は
今から500年以上も前の
フィレンツェに生きた芸術家だ。

芸術だけでなく科学全般あらゆる分野で
多くの業績を残している。

さて、ダ・ヴィンチ。
彼は当時「地球は生物だ」と考えていた。
これは、特別な考え方ではなく、
当時のフィレンツェの知識層では
そう考えていた人は多かったという。

 

<Keyword_1:地球が生きている証拠>
ダ・ヴィンチは単に
「地球は生物だ」と考えるだけでなく
「生きている証拠」を掴もうとしていた。

「生きているとは何だろう?」

人間の体は
心臓よりも上部をケガしても血が出る。
つまり液体(血液)が下から上に行っている。
このことが、
生物の特徴のひとつなのではないか、
と考えたわけだ。

名画「モナ・リザ」は
手前に女性と背景に大地が描かれている。

「人間の血液の循環と
 地球の水の循環を対比させて
 モナ・リザを描いた」

ダ・ヴィンチ自身が、
手稿に残しているらしい。

当時、
地球の山脈は人間の骨、
地球の水は人間の血液にあたる
と考えられていた。

なので、地球の中には
血管のような水路があるのではないか、
そこでは水が下から上に
上っているのではないか、と
ダ・ヴィンチは考え探した。

ところが、残念ながら地球にそのような
水路を発見することはできなかった

それでもダ・ヴィンチはあきらめない。

当時、万物は次の4つの元素でできていると
考えられていた。
  土、  水、  空気、  火
重さもこの順
  土 > 水 > 空気 > 火

「水」が下から上に行く水路を
見つけられなかったダ・ヴィンチだが、
「水」より重い「土」が
下から上に行く例があれば、
より軽い「水」が下から上に行く
証拠になるのではないか、と考えた。

これは、すぐに見つかった。
山の上で、海に住んでいた貝の化石が
見つかったからだ。

まさに海の底にあった土が
山の上にまで上がってきた証拠だ。

ところが、周りの人は納得しなかった。

当時、貝殻の化石が
山で見つかることについては
別の説明があったからだ


それは「ノアの大洪水」
ノアの洪水によって、山の上まで
貝が流されたからだ、と。

 

<Keyword_2:ノアの大洪水説を覆す>
ダ・ヴィンチは、
この「ノアの大洪水説」を否定する
すばらしいアイデアを提示する。

注目したのは二枚貝。
貝殻は丈夫で簡単には壊れないが、
二枚貝の蝶番部は有機物でできているため
死ぬとたいへんに壊れやすい。
つまり、貝が死んだ状態で流されると
2枚の貝が離れてしまう。
貝がバラバラになってしまうわけだ。

ところが山の上で発見される
二枚貝の化石は、バラバラになっておらず
そのままの状態でみつかるものも多い。

これは、それまで貝が
そこで生きていた証拠。
洪水で流されて来たら
そういう状態では発見されない。

この説明により
「ノアの洪水説」を覆したのだ。

この考え方は、現在の古生物学でも
いまだに使われているという。

 

<Keyword_3:ボウフラがわく、の意>
現在では、
生物は次の3つの条件を満たすもの
 1.仕切りがあること。
 2.代謝を行うこと。
 3.複製すること。
と一般には言われている。

 1は細胞膜、
 2は物質とエネルギーの流れ、
 3は子孫を残す、
で具体的にイメージしやすいが、
実は昔は「子孫を残す」は
生物の要件として
あまり重要視されていなかったようだ。

それは
「ウジがわく」
「ボウフラがわく」
という言葉を見てもわかる。
親がなくても発生する、
の認識だったということだ。

こんな何気ない言葉からも
当時の生命観を
読み取ることができるなんて。

 

 

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2022年12月11日 (日)

経(たて)糸は理知、緯(よこ)糸は感情

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経(たて)糸は理知、緯(よこ)糸は感情

- 手を返す瞬間に見える色がある -

 

♪ たての糸はあなた
  よこの糸は私
  織りなす布は
  いつか誰かを
  暖めうるかもしれない ♪

「糸」中島みゆき作詞作曲

は、30人以上の歌手に
カバーされているだけでなく、
もはや平成時代のスタンダード
という感じだが、
たての糸、よこの糸ということでは、
染織家の築城(ついき)則子さん
印象的な言葉を残している。

ちょっと紹介したい。

 

2022年11月29日朝日新聞の「ひと」欄に

 「小倉織」を復元し
 特産工芸品に育てた染色作家
 築城則子(ついきのりこ)さん(69)

の記事があった。
(以下水色部記事からの引用)

かつて帯やはかまとして
全国で珍重された木綿布の小倉織だが、
昭和の初期、
戦争や工業化の波を受けて消失した。

骨董店で偶然に小布に出合い、
工業試験場の電子顕微鏡で
分析したデータを手がかりに

築城さんは小倉織の復元に挑戦する。

織機や模様の表現に改良を重ねて
1984年に完成。
極細の糸が幅1センチに60本も詰まり、
鮮やかなグラデーションを生み出す。

 

築城さんは、11年前
2011年10月3日朝日新聞「be」でも
取材されており、小倉織と染織の魅力を
もう少し詳しく語っている。
(以下緑色部記事からの引用)

伝統あるものは、その時代において
アバンギャルドな試みをしていたはず。
同じことを繰り返していたら、
次につながらない。
今の感覚を注ぎ込むことが創造であり、
伝統
だと思うのです

そんな築城さんと染織との出合いは
能の装束。

文学部で近世演劇を勉強しようと思い、
歌舞伎や浄瑠璃、狂言、能に
のめり込みました。
能楽堂には
能装束が展示してあるんです。

静かな舞に、
装束の果たす役割はすごく大きい。

いろんな色を詰め込んであるのに
ゴチャゴチャせず、
一筋の色が見えてくる。

手を返す瞬間に見える色がある

私も、そんな色の世界を表現したい、
色を染めて織りたい、と思いました。

能の舞の中に一瞬見える色、
「手を返す瞬間」とはなんとも美しい。

普通の織物は
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の
ミックスした味わいがあるけれど、
小倉織は経糸だけの純粋培養というか、
明確でシャープ


色の魅力を100%引き出してくれる。
それが私の好みとピッタリ合って。
ヨコシマな気はありません(笑)。

「織りの工程」を考えると
最初に確定されるたて糸と
順に織り込まれていくよこ糸とでは
その役割も表現できるものもずいぶん違う。

「経糸は理知、緯糸は感情」って、
よく言います。

緯糸は
思うままに織り進められるけれど、
経糸は
最初からデザインを完結させ、
ねらいを定めないと織れない。

なるほど。
「たて」と「よこ」を表現する
そんな言葉もあるンだ。

♪ たての糸はあなた
  よこの糸は私 ♪

ここで歌詞を重ねることに
ナンの意味もないけれど、
一度知ってしまうと
織物の向きが妙に気になってくる。

 

 

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2022年12月 4日 (日)

自然は何を使うかを気にしない

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自然は何を使うかを気にしない

- 生命体の中か外かさえ -

 

"Being There"は1998年に発表された
Andy Clarkによる
認知科学の記念碑的名著。

その邦訳が、文庫になって復刊した。
約100ページの付録を含めて
総ページ数630ページ強。
文庫とはいえ、持ち歩くにはちょっと重い。

アンディ・クラーク 著
池上高志、森本元太郎 監訳
現れる存在: 脳と身体と世界の再統合
ハヤカワ文庫NF

(以下水色部、本からの引用)

名著と言われるだけあって、
本文はもちろんおもしろいのだが、
この本に関しては「付録」も見逃せない。

クラーク先生を囲んでの
セミナーの様子が収録されているのだ。
開催は2011年3月8日 東京大学駒場。

そこで紹介されている「人工進化」の話は
森田真生さんの本でも引用されており
以前ここでも紹介した。

簡単に復習したい。
90年代後半、
「異なる音程の二つのブザーを
 聞き分けるチップ」の設計を
人間の手を介さずに、人工進化の方法だけで
やろうとした研究がある。

結論だけを書くと、
およそ4000世代の「進化」の後に、
無事タスクをこなすチップが得られた。

ところがそこで生成されたチップは
100ある論理ブロックのうち、
37個しか使っていなかった。
これは人間が設計した場合に
最低限必要とされる論理ブロックの数を
下回る数で、普通に考えると
機能するはずがない。

さらに不思議なことに、たった37個しか
使われていない論理ブロックのうち、
5つは他の論理ブロックと
繋がってさえいなかった


なのにこの5つのどれかを取り除くと
回路として機能しなくなってしまう。

調べてみるとこの回路は電磁的な漏出や
磁束を巧みに利用していたのである。

普通はノイズとして、
慎重に排除されるそうした漏出
が、
回路基板を通じて
チップからチップへと伝わり、
タスクをこなすための
機能的な役割を果たしていたのだ。

なんて興味深い結果だろう。

「ハードウェアの細かな物理的性質の
 すべてが、問題解決に一斉に
 駆り出されているように思われた。
 時間遅れ、寄生静電容量、混信、
 メタスタビリティによる拘束など
 低レベルの特性のすべてが
 進化したふるまいの生成に
 使われているのであろう」。

ここに表れている考え方は、
自然は何を使うかを気にしない
ということです。

その後、2002年の実験では、
「振動性の信号を生成する回路」を
進化させている。

彼らが発見したのは、回路それ自体
クロックをもっていないものの、
近くにある
デスクトップコンピュータから
クロックの情報を盗み取る
無線受信機を進化させている
ということでした。

環境にはすでに
完璧に良くできたクロックがあって、
もっとも簡単な解決は
自分自身でクロックを
進化させることではなく、
それを盗み出すことだった

というわけです。

なるほど。今度は近くの
コンピュータにあるクロックを
盗んで使っちゃおうというわけだ。

このことが教えてくれるのは、
自然は本当にこだわりがない
ということです。

自然はそれによって
問題を解決できるとみなしたことなら
何でも利用するでしょう。

まさに、リソースとノイズに
はっきりした境界はない
のだ。

それは

何が生命体の中にあって、
何が外にあるか
などということにも縛られません。

使えるものは何でも使う。
それが生命体の中か外かすら
全く気にしない。

自然が採用している進化の
おもしろさ、不思議さ。

本を手にした際は、
この「付録」を読むことも
お忘れなく。

 

 

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