和菓子の色が表現するもの
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和菓子の色が表現するもの
- 物だけでなく四季や自然も -
前回、
食べ物の色について深く語っている
久野 愛 (著)
視覚化する味覚-食を彩る資本主義
岩波新書
(以下水色部、本からの引用)
を紹介したが、
本文中のコラム「和菓子の美学」に
印象的な言葉があったので
ここで紹介したい。
季節感を抽象化したものとともに、
自然を摸したものが多い。
動植物の姿形を真似たり、
自然現象(春霞など)や
風景を表現したもので、
カラフルな色づけがなされたものも
多くみられる。
例えば、
透明感のある水色は涼しさを伝え、
朱色の紅葉に似せた菓子からは
秋を感じることができる。
つまりここでの色は、
同じ「自然の色」と言っても
完熟のオレンジの色、といったものとは
違う「自然の色」だ。
実際には食べられない自然
(例えば川の流れや金魚など)も
含まれており、
必ずしも「おいしそうな」色として
作られているわけではない。
この意味で和菓子は、
自然のミニチュア化だといえる。
菓子そのものを花や動物、
自然現象などの自然に見立て、
見る人・食べる人に四季や自然を
感じてもらうためのものである。
菓子で、
草花や動物といった物だけでなく、
季節や自然現象をも
表現しているところが
まさに和菓子の奥深い魅力だ。
その色・形に留まらず、
菓銘や、見る・食べる人の
教養や感性をも含めたものだといえる。
例えば茶席では、
菓子の意匠・菓銘の意味や趣向について
会話を交わすことも
重要な茶の湯の楽しみの一つである。
教養、感性といった
素養に支えられて
色と自然を感じ、愛でる美学は
さらに深まっていく。
以前、
和菓子のおいしさを表わす言葉
の中で、
和菓子の魅力を「水」「季節」「名前」
などの観点から語っていたコラムを
紹介したが、
あの小さな和菓子には
「見た目の美しい美味しい菓子」
を越える大きな魅力が詰まっている。
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