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2022年2月 6日 (日)

痛みの原因は体を守ってくれてもいる

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痛みの原因は体を守ってくれてもいる

- 鎮痛剤の原理解明は発売の70年後 -

 

山本 健人 (著)
すばらしい人体
あなたの体をめぐる知的冒険
ダイヤモンド社

(以下水色部、本からの引用)

から

* エピジェネティクス
* 深部感覚と白衣の色

について紹介したが、
今日は鎮痛剤について学びたい。

古代ギリシャ、ローマの時代から、
ヤナギの葉や樹皮は
痛みや発熱を抑える目的で
長く使われていたらしい。

1800年代に、ヤナギの有効成分である
「サリチル酸」が抽出され、
のちに人工的に
化学合成できるようなった。
サリチル酸の名は、
ヤナギの学名「Salix(サリクス)」に
由来するものだ。

だが、
サリチル酸には大きな欠点があった
胃の不快や吐き気、
胃潰瘍などの副作用が
あまりに強かったのだ。

1897年、
ドイツの製薬会社バイエルのホフマンは
サリチル酸をアセチル化することで、
胃への副作用を軽くできることを発見。

1899年にバイエル社は、
この「アセチルサリチル酸」の
錠剤を発売した。
商品名は、「アスピリン」である。

世界的に大ヒットとなるアスピリンだが、
「なぜ痛みがおさまるのか」
については長らく不明
だったという。

解明はなんと1971年。
アスピリンが発売されてから70年以上も
あとのこと
だったなんて。

なぜ、痛みに効くのか?

固有名詞をそのまま書くと
長いうえに難しくて読みにくいので
以降、略号で書くことにする。
必要に応じて
 PP:プロスタグランジン
 CC:シクロオキンゲナーゼ
に置き換えて読んでもらいたい。

まず、
アスピリンの主な作用は、
「炎症」を促す物質であるPPを
産生する酵素CCを阻害することである。

「炎症」とは・・・

毛細血管が拡張して血液が集まるため、
赤く腫れて熱を持つ

白血球とともに血管内の液体が
血管の壁を透通して滲出液になり、
これが白血球の「死骸」と混ざって
ドロドロした膿になる

ブラジキニンと呼ばれる、
痛みを引き起こす物質が産生され、
傷口はズキズキと痛む
こうした一連のプロセスが
「炎症」である。

PPはこの炎症を促進する方向に働き、
また、体温調節中枢に働きかけ
体温を上昇させる。

なので、そのPPの産生を抑えると、
痛みは軽くなり、熱が下がる。
「解熱鎮痛薬」と呼ばれる理由は
まさにこのしくみにある。

ところが、このPP、
炎症を促すだけでなく
胃や十二指腸の粘膜を
胃酸の強酸性から保護するという
大事な役割も果たしているらしい。

なので、PPの産生が抑えられると、
粘膜の保護が弱くなり、
胃や十二指腸の壁が
傷つきやすくなってしまう


「解熱鎮痛薬」正確には
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を
長期間の服用の際、
胃薬で潰瘍を予防する必要があるのは
このためらしい。

まさに、
あちらを立てればこちらが立たず

痛みや発熱の原因ともなっているPPは、
本来、体になくてはならない、
いつもは体を静かに守ってくれている
物質なのだ。

不都合の原因は一方的な悪とは限らない。
薬に限らず、いつも忘れてはならない
大事な視点のひとつだろう。

 

 

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