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2022年1月23日 (日)

エピジェネティクス - 世代をこえて

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エピジェネティクス - 世代をこえて

- 生後に獲得した性質は子に伝わらない? -

 

山本 健人 (著)
すばらしい人体
あなたの体をめぐる知的冒険
ダイヤモンド社

(以下水色部、本からの引用)

を読んでいたら、
たいへん興味深い記述があったので
今日はその部分を紹介したい。

よく知られているように

激しい筋力トレーニングをして
筋骨隆々になれば、
筋骨隆々の子が生まれるわけではない。

美容外科手術を受けて鼻を高くすれば、
鼻の高い子が生まれるわけではない。

子に伝わるのは、原則として
DNAに書かれた遺伝情報だけ
である。

遺伝子情報が書き換わってしまう
いわゆる「進化」を
世代間が年単位の長い生き物で
観察することは難しいが、
分単位で次の世代を生み出す細菌類では
その観察も可能だ。
「がん」についても同じことが言える。

がんは抗がん剤によって
一時的に小さくなるが、
完全に消えてしまうことは少ない。
あるときから抗がん剤は効かなくなり、
再びがんは増大に転じる。

(中略)

特定の抗がん剤から
逃れるしくみを身につけ、
耐性を獲得したがん細胞に
置き換わっている
のだ。

偶然生まれた耐性細胞は、
抗がん剤によって自然選択され、
多数派の座を奪ったのである。

より環境に適応できる特徴は
「自然に選択されてきた」結果ではあるが、
そこには必ず遺伝子レベルでの変異がある。
まさに「進化の過程」だ。

ところが、これらの説明のあと、
やや小さな文字でこんな記述があった。

近年、環境因子が遺伝子に影響を与え、
これが次世代に引き継がれる現象
存在することがわかってきた。

これを「エビジェネティクス」という。
限定的ではあるが、
生後に獲得した性質は子に伝わらない、
とする説明は
必ずしも正しくないことが
わかっている

つまり、生後に獲得した性質が
DNAの遺伝子情報の変化を介せず
子に伝わることがある

ということだ。

エピジェネティクスについては

(1) 国立環境研究所
(2) 遺伝性疾患プラス編集部

などで初心者向けに
やさしく説明してくれている。

(2)のリンク先には

エピジェネティクスとは、
DNAの塩基配列を変えずに
細胞が遺伝子の働きを制御する
仕組みを研究する学問です。

とあるが、
塩基配列を変えずに
遺伝子を制御するしくみ
の研究が
進んでいるようだ。


エピジェネティックな変化とは、
遺伝子のオン、オフを制御するために
DNAに起こる化学的な修飾となります。

「修飾」という言葉が
特殊な意味で使われている。

エピジェネティックな修飾は、
細胞の分裂に伴って
細胞から細胞へと保たれることがあり、
場合によっては世代を超えて
継承されることもあります

DNAの塩基配列が変わることなく、
生後に獲得した性質が
子に伝わることが
DNAへの「修飾」によって
実現される場合があるようだ。

なんて不思議で
おもしろそうな世界なんだろう。

私自身はもちろん専門外で
詳しいことは何も知らないが、
今後、注目すべき単語として
「エピジェネティクス」を
メモしておきたい


たとえ詳細はわからなくても、
こういう感度のアンテナが増えることは
読書のたのしみのひとつだ。

 

 

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