深部感覚と白衣の色
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深部感覚と白衣の色
- 人体と医療に関する軽い二題 -
山本 健人 (著)
すばらしい人体
あなたの体をめぐる知的冒険
ダイヤモンド社
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
から前回は
「エピジェネティクス」という
興味深い学問分野があることを書いたが、
今日は軽い話題を2件紹介したい。
(1)深部感覚・固有感覚
右手で握りこぶしをつくり、
親指を立てる。
この状態で目をつむり、
何も見ずに左手で右手の親指を
つかんでみてほしい。
親指の位置を
探し当てるまで時間がかかった、
などという人はいないだろう
そんなことは当たり前だ、
とつい思ってしまうが、
目で見なくても体の各部の位置がわかる、
というのは考えてみると
不思議なことだ。
何かのありかがわかるというのは、
その「何か」が「ここにいる」
という情報を
(視覚以外の)何らかの方法で
発信している以外にありない。
これは、
「深部感覚」や「固有感覚」
と呼ばれる感覚である。
温度覚や痛覚、触圧覚などと比べると、
普段から意識されにくい感覚だ。
意識されにくいどころか、
言われないと意識したことすらない。
骨の表面や関節、筋肉、腱などにある。
この受容器が受け取るのは、
関節の曲げ伸ばしの程度、
筋肉の収縮・弛緩の具合、
それぞれの位置に関する情報である。
これらの情報を、
脊髄を通して脳に伝えることで、
私たちは自分の体の位置や姿勢を
認識しているのだ。
体が常に
「位置情報」を発信しているからこそ
誰かとじゃんけんをしても、
相手が何を出したのかは
決してわからないが、
自分が何を出したかだけは
正確にわかる。
わけだ。
(2)白衣の色
医療従事者は「白い」ものを
着ていることが多い。
使い捨ての物品となると、
断然「青系統」のものが多くなる。
ドラマの手術シーンを思い浮かべると
わかりやすいが、マスクや帽子、ガウン、
手術台にかかったシーツなど、
あらゆるものが薄い青~緑色である。
緑色の白衣、という言葉は
考えてみるとちょっとヘンだが
白くない白衣を目にすることは確かにある。
色にもなにか理由があるのだろうか?
血液を見る機会の多い処置では、
医療従事者は赤色を
じっと見ることになる。
もしシーツやガウンが白いと、
視線を移した際、そこに
青緑の残像がちらついて見えにくく
なってしまう。
これを補色残像現象という。
そこで、補色である青系統の物品を使い、
残像による視野の妨害と
目の疲れを軽減するのだ。
なるほど。
補色残像現象の低減に
あの色は効果を発揮しているということか。
薄い青~緑色とは別に
ピンク系の白衣も目にするが
あれにもなにか特別な理由が
あるのだろうか?
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