新たな3つの音楽メディア
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新たな3つの音楽メディア
- 増えているのはネット配信だけではない -
前回
烏賀陽弘道 (著)
「Jポップ」は死んだ
扶桑社新書
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
から「著作権使用料徴収額」の総額を
1998年と2016年の比較で見てみた。
<表A 著作権使用料徴収額>
CDを中心とした
オーディオレコードの著作権使用料は
ほぼ1/3に減っているが
成長している分野もある。
表Aにおいて増えている
「通信カラオケ」と「ビデオグラム」
にはどんな背景があるのだろう?
そこに詳しく触れる前に、
著作権使用料を稼ぎ出している曲、
上位には具体的にどんな曲があるのか
見てみよう。
著作権使用料の分配金額ベスト3を
JASRAC賞の金・銀・銅賞として
発表・表彰している。
著作権使用料の多寡を元にした
「ヒットチャート」だともいえる。
そのランキングを見て
「ほんと!?」と目を疑ってしまった。
2015年-2017年の上位3曲は・・・
①「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)
②「進撃の巨人BGM」(アニメ映画の背景音楽)
③「ルパン三世のテーマ'78」(アニメのテーマ曲)
2016年
①「R.Y.U.S.E.I.」(三代目J Soul Brothers)
②「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)
③「糸」(中島みゆき)
2017年
①「糸」(中島みゆき)
②「名探偵コナンBGM」
③「ドラゴンクエスト序曲」
この記事を書くきっかけになった前回の
大野雄二作曲「ルパン三世のテーマ」は
ここに登場している。
「ルパン三世のテーマ」は1977年、
「糸」は1992年に発表された曲。
どちらも名曲とはいえ、
38年前、24年前の曲が
ベスト3に入っているということは
いったいどういうことだろう?
まずは「ルパン三世のテーマ」。
これがまさに「ビデオグラム」の代表選手で、
「ビデオグラム」とは、
「大半がパチンコ・スロットマシン」
のことらしい。
アニメや歌手の動画や音楽を
再生する機能をもったパチンコ機
(スロット機を含む)を、パチンコ業界では
「版権もの」「タイアップもの」と呼ぶが、
これらが著作権使用料をもたらしている。
「音楽再生機」として、
日本人にとって重要なマスメディアに
なったということだ。
長引く不況に苦しんでいるとはいえ
パチンコ業界(貸玉料基準売上)
1995年 30.5兆円
2015年 23.2兆円
75倍という巨大な国民的娯楽なのだ。
そして著作権使用料額でいえば、
パチンコは通信カラオケの約2倍の金額を
著作権者にもたらしている。
「なんだ、パチンコか」と
軽視してはならない。
「巨大な音楽マスメディア」。
それが現在のパチンコの姿である。
「糸」のほうはどうだろう。
著作権使用料を専門に扱う
「ISUM」(アイサム)
という団体がある
ロシア人のアブラモフさんが
2013年に立ち上げた一般社団法人だ。
「新郎新婦が安心して人生の
スタートの記録を残せるよう、
権利処理の代行をする。
それがISUMです」
結婚式で使われる音楽についても
記録として残されるビデオも含めて
著作権使用料が回収される仕組みが
今はしっかり機能している。
ちなみにどの程度の費用がかかるかと言うと
5分未満の曲を使うと、
一曲あたり著作権料200円+
著作隣接権料(複製、演奏・歌唱など)2000円
=2200円である。
ISUMは手数料として
その10%=220円を取る。
最終的には一曲2420円を払う計算
もうひとつカラオケ関連で
見逃せないトピックスがある。
カラオケボックス等の施設は
2005年 22万施設
2015年 17万施設
と減っているが、
「老人ホーム」「高齢者住宅」
「デイケア施設」などの
「高齢者介護施設」は増えているのだ。
カラオケは、
誤嚥の改善にも効果があると
「娯楽産業」から「医療・福祉分野」に
進出しているとも言える。
上記見てきた通り
姿を現したのが
「パチンコ」
「結婚式」
「高齢者用カラオケ」
だった
増えているのはネット配信だけではない。
著作権料から見ていくと
音楽メディアの変化が
意外な角度から見えてきて
新たな発見、驚きがある。
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