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2021年11月14日 (日)

検索の落とし穴

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検索の落とし穴

- 言葉が変われば見えなくなる情報がある -

 

「検索すればなんでもすぐに見つかる時代」
そんな言葉を聞くようになって久しいが、
実際には「なんでも」と言うにはほど遠く、
広い視野から眺めれば
検索できるものはかなり限定されている。

もちろん
検索対象も広がってきてはいるが、
一方で
検索の行為自体に「落とし穴」も多い。

そんな「落とし穴」の中でも
特に気をつけないといけないのが
「言葉」だ。

本人は「正しく」検索したつもりでも
場合によっては、思ってもみない誤解に
結びついてしまう場合がある。

陥りやすい
典型的な事例が新聞にあったので
忘れないようメモっておきたい。

朝日新聞 2021年8月28日
「メディア空間考」
というコラムに
津田塾大学で非常勤講師もしている
原田朱美さんが書いていた記事。
(以下水色部、記事からの引用)


ある大学生のリポートを読んでいて、
手が止まった。
「2000年ごろ、LGBTのために
 動こうという動きは日本になかった
とあった。

原田さんは、大学で
情報リテラシーの授業を持っており、
さまざまなテーマで調べ物をするのを
課題としてだしているらしい。

人気ドラマで性同一性障害が
話題になったのが2001年だった、
ということを取り上げるまでもなく、
LGBTの支援・啓発活動は、
もちろんもっと前から日本にあった。

なのに、なぜ「なかった」という
結論になってしまったのか。

しばらく考えて合点がいった。
言葉だ。

文字通り「LGBT」で、
過去の記事をネット検索したのだ。

LGBTという言葉が
広く使われ始めたのは15年ごろのこと。
だから、それ以前については
過去記事がない=社会に動きがない
と誤解したようだ。

これは検索の落とし穴の
ほんとうにわかりやすい例だ。

LGBTが広く使われる前は
たとえば「性的マイノリティー」などの
言葉を使って活動は記事になっていた。

そういう関連付けや、
関連ワードに関する知識が
検索対象に対して絶対に必要なのだ。

でも、20歳前後の学生にとって
LGBT以前の呼び方はなじみがない。

時代が変われば言葉は変わる。
言葉が変われば、見えなくなる情報がある
両方の言葉を知り、検索しなければ、
その事実にも気づけない。

対象世界に関わる単語の
時代的な変遷と
それらがどうつながっているのかの
多層的な理解。

それらが検索する側に構築されていないと
ググっただけの結果を並べても
「へぇ」だけで、なにも見えてこない。

でも逆に、見えてきたとき、
それは多層的な理解を持ったものだけの
発見の大きな喜びになる。

 

 

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