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2021年11月21日 (日)

『プシコ ナウティカ(魂の航海)』

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『プシコ ナウティカ(魂の航海)』

- イタリアでの精神病院廃絶の物語から -

 

寡聞にして全く知らなかったのだが、
イタリアでは、1999年に
イアリア全土の公立精神病院が
すべて閉鎖されたという。

1978年に成立した
180号という法律が契機となって
精神病院を廃絶。

その過程と背景を丁寧に追いながら
単なる制度の改革だけでなく、
 正常と病(やまい)、
 精神と身体、
 地域と社会、
 抑圧と自由
などについて深く考察している

松嶋 健 (著)
 プシコ ナウティカ
 ―イタリア精神医療の人類学
世界思想社

(以下水色部、本からの引用)

は、読み応えのある良書だった。

その中から、
印象的な言葉をいくつか紹介したい。

 

まず最初に書名。
「プシコ ナウティカ」って何?

書名に限らず、本書はその内容が
イタリアでの話ゆえ、当然ながら
すべてがイタリア語ベースになっている。

松嶋さんはその都度
丁寧に説明してくれているが
日本語、英語とは違った
言葉のグルーピングや
背景を感じることも多く、
それだけでも新しい発見がある。

もちろん医療そのものが言語、
つまりイタリア語に
依存しているわけではないが、
医療制度の整備もその変革も
イタリア語が持つ発想に支えられて
進められてきたわけで、
松嶋さんは
そういった言語が持つある種の価値観にも
細かく神経を配っている


で、最初の疑問に戻るが
プシコ ナウティカ(psico-nautica)は
イタリア語で「魂の航海」を意味する

らしい。

生きていくことそのものが、
目的地も知らないまま
人々のあいだで続いていく
航海である
といえるだろう。

そうした、
人間の「生」そのものとしての
航海のアンソロジーであり、
同時に航海術でもありうるような
ものとして本書は書かれている。

最終的に精神病院の全閉鎖に繋がる物語は、
「社会」中心から「人間」中心への
転換の物語として捉えることもできる。

「人々のあいだで続いていく」
という言葉が、全編を読み終わった後、
改めて深く響いてくる。

そう、生きていくって
目的地も知らない航海なのだ。

イタリアでの出来事を通じて、
航海とそこから見える景色に
新たな角度から光があたる驚きを、
発見を、新鮮さを、
しばし楽しんでみたい。

次回に続く。

 

 

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