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2021年11月 7日 (日)

『新しい料理の教科書』

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『新しい料理の教科書』

- 食材は変化しているのに調理方法は同じ? -

 

料理のレシピを見ていると、
今となっては理由は定かではないのに
昔からの常識として長く信じられている
調理方法がいくつもあることに気づく。

レシピが考案された当時の食材に対しては
どれもそれなりの理由があったのだろう。
しかし、
食材も流通経路も今は昔と大きく違う。
調理方法だけが「昔から同じ」
というのはおかしいのではないか、

「食材にあったベストな料理方法は
 時代によって違うのでないか」

その視点で、現在の食材を見ながら
定番となっている
調理方法の「当たり前」を
見直そうというのが、

樋口直哉 (著)
定番の“当たり前”を見直す 
新しい料理の教科書

(以下水色部、本からの引用)


実にreasonableな発想だ。

ハンバーグを例に具体的に見てみよう。

肉に塩を加えて練ると
ミオシンというタンパク質
溶け出します。
ミオシンは綱目構造をつくり、
肉汁を中に閉じ込めてくれます。

つまり、肉を練る目的は
ハンバーグをジューシーな
仕上がりにするためです。

と、練る必要性の説明から始まるが、
練りすぎを避けたほうがいいことも
後に理由を添えて説明している。

で、定番の見直し、という点では以下。

戦後に発表された
ハンバーグのレシピには、
ほぼすべて卵が入っています


これは昔、流通していた挽き肉が、
鮮度の悪いものばかりだったので
不足した結着力を補うために
入れていたのでしょう。

結着力のある今の挽き肉を使うのであれば、
「卵を使わない方が肉の味がしっかり出る
と卵を使わないレシピを推奨。

また、パン粉についても

既存のレシピの多くには
「パン粉は牛乳に浸す」
とありますが、
それはパン粉が乾燥しすぎて
固かった時代の話


最近のパン粉であれば
そのまま加えたほうがいいでしょう。
牛乳に浸してしまうと
肉汁を吸う効果が
なくなってしまいますからね。

また、よく聞く
「中心を凹ます」についても

昔のレシピには
「ハンバーグを成形するときは
 中心を凹ます」と書かれていますが、
その必要もありません。

凹ます理由は
「焼いている最中に
 中心が膨らんで
 火が通りにくくなるから」
とありますが、実際には
そんな事態は起きないからです。

中心が膨らむ理由は
外側の肉が縮むからで
主に肉種の練りすぎによるもの

今回のレシピ通りにつくれていれば、
中心が膨らんで困るようなことは
ありません


それよりも成形するときには
表面を滑らかにしておくことが重要です。

表面を滑らかにしておくと、
さきほど説明したミオシンが膜になって
肉汁をとどめてくれます。

合い挽き肉についても
実用的なコメントが添えられている。

豚肉は脂の融点が低いため、
少し混ぜると冷めても味が落ちない
というメリット
もあります。

お弁当に入れる場合には
特に豚肉の割合を増やすといいですが、
出来たてを食べる場合であれば、
豚肉の量は25%くらいまでに
抑えたほうがいいでしょう。

豚肉の割合が増えすぎると牛肉
香りが弱くなってしまいます。

こんな感じで、
定番の家庭料理の調理方法を
今の食材をベースに見直している。

 

昔からの調理法が
食材に合わせて変化しないのは
家庭料理の世界に限らないようだ。

2021年10月3日の朝日新聞GLOBEでは
三ツ星レストランのシェフ
岸田周三さんがこんなことを言っていた。

「100年も200年も前に
 フランスで作られたシステムを
 いまだに『これが本物だ』と
 言い張っていること自体が思考停止だ」

この100年の間に
 調理技術も機材も進化した


 今まで1週間かかって届いていた食材が
 半日で届くようになったのに、
 なぜ昔と同じ香辛料をかけて
 臭み抜きをするのか

 

理由もよくわからないまま
昔からの方法が盲目的に信じられている、

状況に合わせて
方法も変化させたほうが
いい結果に結びつくはずなのに
確立された「方法」に固執し
変化した状況との「組み合わせ」で
方法を見直そうとはしない、

それは、
それこそ料理の世界に限った話ではない。

 

 

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