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2021年10月 3日 (日)

絶えず欠乏を生み出している

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絶えず欠乏を生み出している

- あらゆるものを「商品」にするために -

 

雑誌「中央公論」2021年9月号 に、
 豊かな未来のための
 「脱成長」戦略

とのタイトルで
独立研究者 森田真生さんと
大阪市立大学准教授 斎藤幸平さん
との対談が載っていた。
(以下水色部、本からの引用)

おふたりの主な研究分野と生年を書くと、
森田さんが  数学で1985年生まれ、
斎藤さんが経済思想で1987年生まれ、
と、研究分野が大きく違う
若き二人の対談だ。

その中にこんなやりとりがあった。

森田:
斎藤さんのご著書を読み、
読み、僕自身、自分がいかに
「商品」という発想に
縛られてきたかを痛感しました。

特に印象的だったのが、
カール・マルクスが若いころ、
地元紙に木材盗伐についての記事
何度も書いていたという話です。

木材盗伐の記事とは・・・

斎藤:
マルクスが1842年に
『ライン新聞』主筆になったころの話
ですね。

当時は資本主義という
新しいメカニズムが、
ドイツの人々の暮らしを
激変させていました。

その象徴が、
森で枝を拾い集める行為を
「窃盗」と断じる法律が
できた
ことです。

貧しい人々が煮炊きをしたり、
暖をとったりする
薪の材料だった枝は、
マルクスが「富」と呼ぶ、
みんなの共有財産=コモンでした。

それを地主が私有財産として
囲い込んだ。

マルクスはこの法律を
何度も新聞で取り上げ、
資本家が「富」を
「商品」におきかえて
利益を独占する資本主義システムを、
痛烈に批判しました。

元来、土地も森林も河川も、
人々の間で共有・管理される「公」
だったはずだ。
それが、資本主義の勃興期、
私有地として囲い込まれ、
その後、無償だった自然の恵みも
次々と「商品化」されていくことになる。

斎藤:
私たちは資本主義が豊かさを
もたらしてくれると
思い込んでいますが、
実際のところ、
資本家が追求するのは利益であり、
そのために商品の「希少性」が
人工的に生み出されます


土地や物を囲い込み、
あらゆるモノに希少価値をつけて
利益を得ようとする結果として、
豊かさどころか、
絶えず欠乏を生み出している

作られた希少性から導き出された
「商品」の「価値」は
たとえそれが高価であったとして
「豊かさ」ではない。

あらゆるものを「商品」とみなす考え方に
あまりにも慣らされてしまっているが、
改めて「価値」や「豊かさ」について
考えてみたくなる象徴的なエピソードだ。

 

 

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