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2021年9月 5日 (日)

「ノヴェンバー・ステップス」決闘と映画音楽と

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「ノヴェンバー・ステップス」決闘と映画音楽と

- 新しい試みのうらにある交友関係 -

 

立花隆 (著)
「武満徹・音楽創造への旅」
文藝春秋

(以下水色部、本からの引用)

から、
「ノヴェンバー・ステップス」初演前のリハーサル
「ノヴェンバー・ステップス」指揮者のひと言
「ノヴェンバー・ステップス」2週間の事前合宿

と名曲「ノヴェンバー・ステップス」
初演にむけて様々なエピソードを
紹介してきたが、
曲そのものは専門家の眼から見て
どううつっていたのだろう。

ここにリンクを貼った
演奏を聞いていただければわかる通り、
その特徴はなんと言っても、
尺八と琵琶が作りだす独特な世界だ。

小澤さんもこう語っている。

特にあの深い精神性に打たれました。
精神と音楽が
くっついているという感じだった。

そして、つくづく思うんですが
あの曲は二人の合奏というより、
二人の決闘みたいなものですね


西洋人にもそれがわかるんです。

二人の闘いが
火花を散らせば散らすほど、
聴衆が沸く。

ぼくなんかいってみれば、
決闘の介添人みたいなものです。

どうしても強烈なソロの2楽器に
目を奪われてしまうが、注意して聴くと
オーケストラも新しい響きに溢れている。

やっぱり、尺八や琵琶と
対話させるというので、
オーケストラの側にも
新しい音を出させたい
ということ
だったんじゃないかな。

(中略)

ブラスの強い持続音なんかも、
明らかに尺八を意識してるんですね。
西洋のオーケストラ楽器の持っている
いろんな機能とか、コードとか、
リズムとか、持続音とか、
あらゆる要素を駆使して、
武満さんは新しいオーケストラの音を
作っているんです

 

一方で、作曲した武満さんにとっては、
音楽における「時間構造の探求」という
流れの中に位置づけられる作品でもあり、
武満さん自身

小澤君は、
『これは対話だね』
と言っていたけれども、
そういう意味じゃないんだ、
対話なんかできっこないんだ。
まったく違うものを、
二つ同時にやるんだ

とかなり刺激的なコメントをしている。

演奏時『縦が合わなくてもいい』
と言うような作品を発表したり、
一つの曲の内部に複数の時の流れを
持ち込もうとしたり、武満さんは
まさにさまざまな試みに挑戦している
ころだった。

一つの作品の中に
異質の時間の流れを
持ち込んでみたら
どうなるか
というのが、武満の問題意識だった。

 

ところで、武満さん、
こういった演奏会用の作品だけを
自分が思うままに
自由に作っていたわけではない。

なぜなら、ご本人曰く

作曲家というのは、
 自分の音楽作品だけでは
 絶対食えません


 どうしても、食うためには、
 映画やテレビの
 いわゆる劇伴の仕事を
 やらざるをえないんです」

だからだ。

「ノヴェンバー・ステップス」発表前の数年
じつに精力的に映画音楽の仕事をしている。

「食べるために
 やりたくない仕事までやる
 という意味なら、それはありませんが、
 結果的に
 自分が満足できない作品に終る
 ということは、映画の場合ありますよ。

 映画は台本の段階で
 やるかやらないか決めるわけです。

 すると、台本はよかったけど、
 できたものはどうしようもない
 ということがあります。

 それから、
 監督と意見が合わない場合
 どうするかという問題もあります」

担当した映画の監督には、
大島渚、市川崑、勅使河原宏
小林正樹
といった名前が並ぶ。

そのひとり、篠田正浩さんは
こんな思い出話を披露している。

-そうやって次々に仕事を
 いっしょにするようになると、
 日常生活でもよく会ってたわけですか。

「ええ、武満が
 赤坂に住んでいたころなんか、
 ほとんど毎日のように
 会ってましたよ。

 よく篠田桃紅とか、寺山修司が
 いっしょでした。

 武満と一柳(慧)と湯浅譲二と
 四人でマージャンをしたり、
 なんだか毎日
 不思議な取り合わせの人間で、
 しょっちゅう会ってました

篠田正浩、篠田桃紅、寺山修司
一柳慧、湯浅譲二、武満徹

なんともすごいメンツだ。

いったいどんな話をしながら
卓を囲んでいたのだろう。
お互い、新しい試みに向けて
刺激しあっていたに違いない。

 

 

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