内に向かっていく無限もある
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内に向かっていく無限もある
- 植物観察家からのメッセージ -
「植物観察家」を名のる鈴木純さんの
鈴木純 (著)
そんなふうに生きていたのね
まちの植物のせかい
雷鳥社
(以下水色部、本からの引用)
は、たいへんおもしろい本だ。
植物に対する〝私の視線〞を
表現するという、
全く新しいつくりの本です。
まちなかで
植物を見つけるところから始まり、
私がなにを
どのように面白そうと思ったか、
あるいは疑問に感じたかをご紹介し、
そのあとに植物を拡大して見たり、
触れたり、嗅いだりしながら
驚きの発見をしていく、
植物観察のアイデア集のような本です。
と最初にある通り、
まちでよく目にする植物を
とにかくよぉーく見て、
徹底的に楽しんでしまおうという
ユニークな視点で構成されている。
アスファルトの隙間でよく目にする
「ツメクサ」のような
身近で簡単に見つけられる植物が
数多く登場するが、私などは、
普段いかに何も見ていないかを
痛感させられる。
* 葉柄内芽(ようへいないが)
* 花外蜜腺(かがいみつせん)
* 托葉(たくよう)
* 雌雄異熟(しゆういじゅく)
* 唇弁(しんべん)
* 花粉塊(かふんかい)
といった植物の生態や生存戦略に関わる
専門用語の解説も含まれてはいるが
本の中心にあるのは
とにかく植物をよぉーく見ること。
中のコラムにこんな一節があった。
”葉っぱテスト”という試験があった。
キャンパス内で見られる樹木180種を、
葉の特徴だけで
見分けられるようにするという
ものなのだが、
これが1年次の前期の課題で
行われるのだからさぁ大変。
農大というと、
さも自然好きな人間が集まる
学校のようなイメージがあるが、
現代の農大生はいたって平凡。
これまでに植物の名前を知ろうなんて
考えたこともない生徒が大半だ。
180種の樹木を葉の特徴だけで見分ける、
いい試験だ、というよりも
これができたらなんてステキだろう。
新入生に木の名前を教え込んでいく。
らしい。その過程で、鈴木さんは
植物観察のおもしろさに目覚めていく。
植物の不思議な生態の詳細は本書に譲るが
この本の魅力は、
図鑑的な植物に対する知識ではなく、
「観察」自体がもつ楽しさや発見の
ワクワク感がどのページからも
伝わってくることだ。
植物に対する驚きや感動の気持ちが、
まだ自分の中に瑞々しく
残っていることだと思っています。
今だから書ける、いえ、
今しか書けない植物観察本である
という意味では、自信を持って
楽しく書かせていただきました。
鈴木さんは、
「内に向かっていく無限もある」
という言葉を使っているが、
ごくごく身近にも
無限の世界が広がっていることは、
植物観察という窓を通じても
こんなふうに気軽に味わうことができるよ、
と語りかけてくれているようだ。
遠くに行くから世界が広がるわけではない。
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