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2021年8月22日 (日)

「ノヴェンバー・ステップス」指揮者のひと言

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「ノヴェンバー・ステップス」指揮者のひと言

- ようやく迎えられた初演本番 -

 

前回、
「ノヴェンバー・ステップス」初演前のリハーサル
と題して

立花隆 (著)
「武満徹・音楽創造への旅」
文藝春秋

(以下水色部、本からの引用)

から武満徹さん作曲の名曲
「ノヴェンバー・ステップス」
初演前のリハーサルの様子をお伝えした。

作曲者の武満さんにも
尺八の横山さんにも
琵琶の鶴田さんにも

「こんなに不真面目なやつらと
 やれるかと思いました」

「うまいけれど、
 音楽やるのはメシの種という感じで、
 真剣みが
 あんまり感じられなかった」

「自分のやり番のときだけ
 指示された音を忠実に出す。
 それが終ると
 また勝手なことをしている。
 ああいうのは
 いやだなと思いました」

という思いを抱かせてしまった
ニューヨーク・フィルの面々。
指揮者の小澤さんはこういった状況に、
さてどう対応したのだろう。

武満さんはこう語っている。

そしたら小澤さんが、
『まあいいや、みんな
 きょうは練習やらなくてもいいから、
 鶴田さんと横山さんに
 日本の伝統的な曲をやってもらおう

といって、まず、
『ノヴェンバー・ステップス』の
ソロ・パートを
二人に弾いてもらったんです。

さすが指揮者、さすが小澤さん。
あの曲のソロパート、
初めて聞いたらそりゃぁ驚いたことだろう。

(演奏へのリンクは
 前回の記事に貼りましたので
 ご興味のある方は
 そちらから聞いてみて下さい)

さて、ニューヨーク・フィルの反応は?

そしたら
やっぱり向こうも音楽家ですから、
わからないにしろこれはいい音楽だ。
素晴らしい演奏だと感じるところが
あったんですね

みんな『ブラボー!』といって、
それからはうまくいったんです。

もちろん、全員の賛同が
得られたわけではなかったようで、
リハーサルが終わってから

『しょうがないから吹くけど、
 おれはお前のこんな音楽は
 大っ嫌いだ』

と言ってきたオーボエ吹きもいたようだ。

指揮の小澤征爾さんも、
当時はまだ32歳。

 

そうして迎えた初演本番。
小澤さんは「棒ふり一人旅」に
こう書いている。

演奏が始まると、はじめ好奇心で
なんとなくざわついていた会場が、
音楽の真実さ、強さ、
美しさにひっぱられて、
みなシーンとしちまうのが感じられる

会場には大物作曲家も聴きに来ていた。

聴きに来ていた作曲家の
ペンデレツキ(ポーランド)や
コープランド(アメリカ)は
真赤な顔をして、感激、興奮していた。

二日目に来たバーンスタイン
『まあ、なんという強い音楽だ。
 人間の生命の音楽だ』
と涙を流していた。

感激したバーンスタインは、
武満さん、小澤さん、
鶴田さん、横山さんの4人を
自宅に招待して、さらに
尺八や琵琶の演奏に触れることなる。

ニューヨーク・タイムズや
サン・フランシスコ・クロニクルなどの
批評も上々で、
結果的に初演は大成功をおさめた。

小澤さん自身にも

この音楽は、
ぼくの血の中で、肉の中で、心の中で、
またぼくがこれまでに得た
音楽教養の中で、
いちばんしゃべりたかったことを
しゃべっている

と響いていたようだ。

小澤さんのリハーサル時のひと言が
団員の心を動かす
大きなきっかけであったことは
間違いないが、
実は小澤さん、
「ノヴェンバー・ステップス」
成功のためにもっともっと
周到な準備をしていたのだ。

(次回に続く)

 

 

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