ラ行で始まる単語がない。ロシアはオロシアに。
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ラ行で始まる単語がない。ロシアはオロシアに。
- キャンベルさんの言語感覚 -
田中克彦 (著)
ことばは国家を超える
―日本語、ウラル・アルタイ語、
ツラン主義
ちくま新書
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
から
* フロマージは元フォルマージ
* ロシア語には「熊」がない
* 女帝エカテリーナの偉業
を紹介したが、
目に留まったトピックスの紹介
もう少し続けたい。
アルタイ諸語、アルタイ語族についての
詳しい説明はここでは省略するが、これらは
トルコ、中央アジア、モンゴル、
そしてロシアの一部と、
まさにユーラシア大陸を広く横断し、
そこには日本語や朝鮮語も含まれることが
提案されてきた重要な言語群だ。
田中さんも日本語について
と慎重に書く一方で
いつくものアルタイ的特徴が
濃厚に認められるから
基本的にアルタイ語だと考えている。
とも書いており、基本的に
アルタイ諸語にグルーピングされて
話は進んでいる。
そんなアルタイ諸語の特徴について
こんな特徴の記述があった。
「ラ」行(r-)ではじまる単語がない
子どものころ、しりとりをすると
いつもラ行で苦戦していたことが
急にありありと思い出される。
そうか、もともと単語がなかったのか。
日本人は自分では作れず、
ほとんどが外国語からの借用である。
なので
無理して発音すれば、
その前にどうしても母音が入って、
たとえばロシアはオロシアとなる。
幕末から明治を舞台にしたドラマに
よく登場するあの国の名前が
いつもオロシアとなっているのは
こんな理由があってのことのようだ。
いまでもロシアをオロス(Orosz)と言い、
これはモンゴル語も同様である。
「ラ」行(r-)ではじまる単語がない
こんな共通点があるなんて。
この件に関して、
こんなエピソードまで添えている。
新しい元号が発表されたとき、
私は、こんなラ音ではじまる
本来の日本語にはなかった発音様式は、
「国粋的」ではない、
困った名づけだと思った。
するとあるとき、深夜のラジオで
ロバート・キャンベルという
アメリカ人の日本文学の研究者が、
レイワは、外国人が
発音するには問題がないけれど、
日本人にはどうでしょうかと
話していた。
(中略)
キャンベルさんは明らかに、
古代日本語の音韻体系を
念頭に入れて話していたのだ。
こういった日本語の
歴史を含めた言語感覚までをも
身につけてしまう才能、
表面的ではない深い学習内容。
以前、本ブログでも
キャンベルさんと井上陽水さんとの
対談を
ただあなたにGood-Bye
と題した記事で取り上げたりもしたが
キャンペルさんの日本語の知識と
その言語感覚には驚かされるばかりだ。
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