称賛されるペットの特徴は、
(全体の目次はこちら)
称賛されるペットの特徴は、
- 「殺処分」だけがペット問題ではない -
動物と人間の関係を
200冊以上の引用文献を駆使し、
*ペット
*動物虐待
*屠畜と肉食
*動物実験
*動物の福祉・解放
などの視点から見つめ直している
生田武志 (著)
いのちへの礼儀
筑摩書房
(以下水色部、本からの引用)
から、
* 人類が他の動物に食べられていたころ
* トキの「復活」?
* 侵略的外来種「ネコ」
について紹介したが、今日は
もう少し身近なペットについて
考えてみたい。
ドーベルマンなどの「犬種」は、
生物学的には(オオカミの亜種である)
イエイヌの「変種」です。
こうした犬種は、
手近な図鑑にあるものだけでも
500種近くありますが、
それらは自然に発生したのではなく、
近親交配など人為的方法によって
作り出されてきました。
もとは「牛(ブル)いじめ」という
見世物用に開発されたブルドッグも
1835年の動物虐待防止法で
「牛いじめ」が禁止されると
番犬、愛玩犬として飼われるようになり
身体的特徴が
ますます強調されるようになる。
ブルドッグの健康に大きな問題を
もたらすことになりました。
まず、ブルドッグは
あまりに頭が大きいため
母親の産道を通ることができず、
出産はふつう、
人の手による帝王切開になります。
また、鼻先が短すぎるので
うまく呼吸ができず、
生涯にわたって睡眠時無呼吸など
酸素不足に悩まされます。
このため体温調節も難しく、
呼吸不全や心不全で
若死にしやすくなっています。
これらに対し、
ペンシルベニア大学
「動物と社会の相互作用に関するセンター」
所長のジェームズ・サーペル氏の
こんな言葉も紹介されている。
遺伝子組み換えの産物だったなら、
西欧世界全域で抗議デモが
巻き起こっていたことだろう。
まちがいない。
ところが実際には
人の都合に合わせた交配によって
作られたので、
その障害は
見過ごされているばかりか、
場所によっては
称賛されてさえいる」
こういった生体改造は、もちろん
ブルドッグだけではないし、
犬に対してだけではない。
関節疾患や外耳炎になりやすい構造を
持たせてしまったダックスフント、
頭蓋骨が小さすぎて脊髄や
脳の障害に苦しむことが多い
キャバリア・キング・チャールズ・
スパニエル、
猫に関しても、
短頭のため呼吸困難、眼病、
涙管奇形になりやすい上に
死産の確率が高いヒマラヤン、
軟骨に奇形があり、
若い時から重い関節痛を発症しがちな
スコティッシュ・フォールド
などなどいつもの例を挙げている。
ペットの問題というと、
人間の身勝手な振舞いが原因となっている
「殺処分」が話題になることが多いが、
こうしてみると、
かわいいペットが欲しい、という
「人の都合に合わせた」生体改造が
生物としての種そのものに
様々な問題を引き起こしていることが
よくわかる。
しかも、
そういった強調された身体的特徴は、
まさに
「場所によっては
称賛されてさえいる」
わけだ。
称賛されるペットの特徴には、
生物として健全に生きる権利を
奪っている側面もあるのだ。
「殺処分」だけがペットの問題ではない。
(全体の目次はこちら)
« 侵略的外来種「ネコ」 | トップページ | あの政権の画期的な動物・自然保護政策 »
「ニュース」カテゴリの記事
- 実戦でまだ指されていないものが定跡!?(2022.08.28)
- 『違和感ワンダーランド』の読後感(2022.05.15)
- 恥ずかしいから隠すのか、隠すから恥ずかしくなるのか(2022.03.06)
- あの政権の画期的な動物・自然保護政策(2021.05.09)
- 称賛されるペットの特徴は、(2021.05.02)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 全体をぼんやりと見る(2023.11.26)
- 読書を支える5つの健常性(2023.11.19)
- トラクターのブレーキとアワーメーター(2023.11.05)
- 「歓待」と「寛容」(2023.10.22)
「科学」カテゴリの記事
- 養殖の餌を食べ始めた人工知能(AI)(2023.10.01)
- AIには「後悔」がない(2023.09.24)
- 対照的な2つの免疫作用(2023.09.10)
- 口からではなく皮膚からだった(2023.09.03)
- 研究者から見た「次世代シークエンサ」(2023.04.30)
コメント