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2021年4月 4日 (日)

「名著」ではなく「名書」の視点から

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「名著」ではなく「名書」の視点から

- 書物が内容を光り輝かせる -

 

自治体の公共図書館のうち、
「電子書籍貸出サービス」を実施している
図書館は、
電子図書館(電子書籍貸出サービス)実施図書館
で簡単に調べることができる。

2021年01月01日現在
 ・実施自治体 143自治体
 ・電子図書館 139館
で電子図書を利用できる。

驚くべきはその増加数。
3ヶ月前の2020年10月01日との比較で
 ・実施自治体 +29
 ・電子図書館 +28
とまさに発展途上。

もちろん、書籍の電子化には
多くのメリットがあるが、
電子書籍の話がでるたびに
ずいぶん前に
作家の荒俣宏さんが言っていた
「名書」(名著ではない)
の話を思い出す。

古いエッセイだが、
ちょっと振り返ってみたい。

以下、水色部
 荒俣宏
 「もしも書物の海があれば」

 雑誌「太陽」1989年6月号
からの引用。

エッセイは、国会図書館の貸出し窓口での
荒俣さんのこんな体験談から始まっている。

たとえば19世紀初頭に刊行された
クルーゼンシュテルンの
「世界周航図録」や、
18世紀の名作
「ラ・ペールズ世界航海記」
などを借りだそうとする。

だが、最近の本ならば専用昇降機で
上まで運ばれてくるのに、
これら200年前の巨大書物は、
わざわざ人間の乗るエレベーターを
使って運ばれてくる
のだ。

係員が
大汗かいて貸出し台へ持ってきて、
私をジロリと睨む。

人間の乗るエレベータでなければ
運べない本とは!

(今日の主題である「本」そのものとは
 直接関係ないが、ここに出てきた
 「ラ・ペールズ世界航海記」については、
 本ブログでも4年前に
 「日本海、浅い海峡と小さな遭遇」
 なるタイトルでその「内容」に関する
 驚くべきエピソードを紹介した。
 ご興味があればこちらもどうぞ。)

ナポレオンの東方遠征が生んだ
学術的成果の傑作といわれる
26冊にもなる「エジプト誌」についても

ちなみに、この「エジプト誌」は
冊数だけでなくサイズまでが
人並はずれた大きさで、
ちょっとした団地用カーペットのように
幅をとる。

この本を
ひらけるだけの広さがある机なぞ、
最近の事務機器店では
お目にかかれない

と、さすが荒俣さん、すごい本が並ぶ。

そういった驚くような本を紹介したうえで、
こう話を続けている。

われわれは名著を数多く知っている。

しかし、<名書>というべきか、
fine booksと呼べる書物の代表作を、
ふしぎにもまったく思い浮かべられない

わずかに、洋書に通じた人であれば、
ウィリアム・モリスの刊行した
ケルムスコット・プレスの印行本ほか、
いくつかの世紀末私家本か、
あるいはグーテンベルク時代の
初期印刷本を
挙げることができるかもしれない。

また、日本の
たおやかな書物に範をとるとすれば、
奈良絵本や江戸期の木版多色刷り本を
考えることができる。

改めて言うまでもないが、
巨大な本がいいと
言っているのではない。

書物が内容を
光り輝かせるのである。

と言っている通り、
書物そのものの価値に
目を向けているのだ。

本は書いてある「内容」に
目が行きがちだが、
「書物」そのものを
見ようではないかと。

以降、

第一に名書は
読む者を呑みこむ吸引力を
持たなければならない。

などなど、荒俣さんの
名書についての持論が
展開されているが、
本エッセイが
いつまでも記憶に残っているのは、

 「名著」ではなく
 「名書」の視点から
 本を考えてみよう、

という機会を与えてくれたことの
意義が大きかったからだろう。

電子書籍の登場で
「名書」の存在は
ますます遠くなってしまっているけれど。

 

 

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