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2021年4月11日 (日)

人類が他の動物に食べられていたころ

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人類が他の動物に食べられていたころ

- 生得の武器がない -

 

今週は、2つの驚く記事を目にした。

(1) 人類は「肉を食べ尽くしたあと」雑食に移行したと判明
  人はもともと肉食動物だったが、
  過剰狩猟のため、その後、
  植物性の栄養源を取り入れるようになり
  次第に雑食化していったとのこと。

  詳しい内容は、
   American Journal of Physical Anthropology
  に。

(2) 素粒子物理学の根幹崩れた? 磁気の測定値に未知のずれ
  素粒子物理学の基礎である
  「標準理論」で説明できない現象
  捉えたと、
  米フェルミ国立加速器研究所が
  2021年4月7日、発表した。
  素粒子ミューオンの磁気的な性質が、
  理論で想定される値から
  大きくずれていたという。

  理論が想定していない力が働いていたり、
  未知の素粒子が影響
したりしている
  可能性がある。

  元となる発表はこちら。
   First results from Fermilab’s Muon g-2 experiment strengthen evidence of new physics

どちらもこれから精査が必要だろうが、
長く広く信じられていたことが
書き換えられるかもしれない発表には
ドキリとさせられる。

仮に100%の新発見でなかったとしても、
そこにはこれまで見落としていたような
大事な視点や事実が
含まれていることも多々あるし。

今後の検証報告等に気をつけていきたい。

 

これらのニュース、特に(1)を耳にして
思い出した本があるので、
今日はその本について触れたい。

 

動物と人間の関係を
200冊以上の引用文献を駆使し、
 *ペット
 *動物虐待
 *屠畜と肉食
 *動物実験
 *動物の福祉・解放
などの視点から見つめ直している

生田武志 (著)
いのちへの礼儀
筑摩書房

(以下水色部、本からの引用)

は、

「いのちへの礼儀」という書名が
ある意味「救い」とも言える
実に重い本だった。

特に、畜産業(本では工業畜産とか
動物工場とかの言葉を使っているが)
における動物の扱いの実態は
読むことさえ辛い。

もちろん、肉も卵も食べているのだから
その恩恵は目一杯受けているし、
逆に、本来は知らなくてはいけないこと
なのかもしれないが、
やはり「残酷」と思える現実からは
どうしても目をそむけたくなる。

ただ、この本の価値は
そういった現実を
単に読者に知らせることにはない。

動物と人間との関係を
広く、冷静に見つめ直すことで
読者に「いのちへの礼儀」を
改めて真摯に考える
きっかけを与えてくれていることにある。

なので、客観的な事実がどうか、
という情報の問題だけでなく、
新たに気付かされることも多い。

450ページほどの内容豊かな本から、
そんな点に絞って
いくつか言葉を紹介したい。

最初はやはりこれ。

肉食しなくても生きていけるのに、
なぜわたしたちは
わざわざ動物を殺すのでしょうか

明確な解があるわけではないのだが、
まさに通奏低音のように
本を読んでいる間じゅう
静かに流れ続ける問いだ。

まずは歴史を振り返ってみよう。

ジャングルに住む
初期の人類は草食でしたが、
サバンナに進出した後、
250万年ほど前から
少量の肉を食べ始め、
200万年前には
肉食が定着したようです。

そんな古い食性がどうしてわかるのか?
化石骨から読み取れるようだ。

250万年前から200万年前の
オーストラロピテクスの
化石骨の分析では、
食性の70%が植物性、
30%以下が動物性となっています。

動物性は、昆虫や
トカゲなどの小型の脊椎動物を
食べていたことに由来するらしい。

そもそも、人類の
大きく平たい切歯と臼歯という特徴は、
「肉食」動物でも「草食」動物でも
「雑食」動物でもなく
「果実食」であることを示しています
(三浦慎悟(2018)
 『動物と人間 関係史の生物学』
 東京大学出版会)

 

さて、ここで話を次の段階の
「狩猟」に発展させようとすると
あることに気づく。

一般に、体重が150キログラムより
軽い動物は捕食されやすく

それ以上の体重の動物
(スイギュウ、サイ、カバなど)は
ほとんど捕食されないことが
知られています
(タンザニアの
 セレンゲティ国立公園での
 40年間の調査による)

そう、人間自体が
大きな動物の獲物だったのだ。

人類はほとんど生得の
武器のない生き物です。

ライオンやヒョウのように
時速70キロメートルで走れず、
鋭い牙もかぎ爪もありません。

チンパンジーは鋭い犬歯があり、
握力も約300キログラムあり、
ゴリラも150キログラムの体重で
握力は500キログラム程度ある
とされますが、それでも
現在の野生の霊長類は
年間「4匹中1匹」が
捕食されている
のですから
人類もそれに近い程度
食べられていたと考えられます
(事実、動物に食べられた
 跡の残るホモ・サピエンスの骨格

 各地で発掘されています)

まさに

人類は「狩人」であると同時に
他の動物たちの「食べもの」

だった時期があるわけだ。

ホモ・サピエンスが
「出アフリカ」を果たすのが
約6万年前、
船、弓矢、針などを発明するのが
約7万年前から3万年前、
狩猟具を身に着け
食物連鎖の頂点に立つようになるのには
かなり時間がかかったことになる。

「食べられていた」ころの記憶が
体のどこかに残っているのであれば
他の動物に対してもう少し
優しくなれるような気がするのだが。
残念ながらそこからも時間が経ちすぎた
ということなのだろうか。

 

 

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