侵略的外来種「ネコ」
(全体の目次はこちら)
侵略的外来種「ネコ」
- 生態系にとっての悪の枢軸!? -
動物と人間の関係を
200冊以上の引用文献を駆使し、
*ペット
*動物虐待
*屠畜と肉食
*動物実験
*動物の福祉・解放
などの視点から見つめ直している
生田武志 (著)
いのちへの礼儀
筑摩書房
(書名または表紙画像をクリックすると
別タブでAmazon該当ページに。
以下、水色部は本からの引用)
から、
* 人類が他の動物に食べられていたころ
* トキの「復活」?
について紹介したが、今日は
「ネコ」についての
ちょっと意外な数字を紹介したい。
まずは侵略的外来種の説明から。
「外来種問題」があります。
外来種とは、
もともとその地域にいなかったのに、
特に人間によって
他の地域から移入させられた生物で、
その中でも、
地域の自然環境や生物多様性を
脅かすおそれのあるものを
「侵略的外来種」(侵略的外来生物)
と呼んでいます。
現在の生物多様性減少の最大の原因は
生息地の減少・破壊
(特に熱帯林の破壊)ですが、
外来種問題は二番目の原因とも言われ、
過去400年間の種の絶滅の半分は
外来種によるとされています。
(Courchamp, Franck.(2006)
「世界の島嶼地域における
侵略的外来種問題」
『哺乳類科学』vol.46(1)85-88.)
では、侵略的外来種と言えば
具体的にはどんな生物だろう。
なんと
代表的な侵略的外来種の一つはネコ
だという。
たとえ飼い猫のように
食べ物が充分にあっても
「おやつ」や
「娯楽」のために狩りをし、
多くの動物を殺すことです。
(「過剰捕食」[hyperpredation]と
呼ばれます)。
この点、ネコはわたしたち
ホモ・サピエンスとよく似ています。
仮に過剰捕食があったにせよ、
ネコと「侵略的」という言葉が
どうも結びつかない。
オーストラリアを例に
少し具体的な数字で見てみよう。
2000万匹とされる野良猫がいますが、
このネコたちは今までに
100種以上の鳥類、
50種以上の哺乳類、
50種の爬虫類、
多くの両生類や無脊椎動物を
絶滅させました
(Courchamp, Franck.(2006)
「世界の島嶼地域における
侵略的外来種問題」
『哺乳類科学』vol.46(1)85-88)。
過去だけではない。今後も...
ネコは一日に
7500万の固有種の動物を殺し、
35種の鳥類、
36種の哺乳類、
7種の爬虫類、
3種の両生類を
絶滅させようとしています。
にわかには信じられないような数字だが、
ネコのことを
「暴力と死の津波」、
オーストラリア野生動物
管理委員会委員長は
「生態系にとっての悪の枢軸」
と呼んでいる関係者の言葉は
まさに数字を裏付けるようだ。
なのでこの現実に対して
「1800万匹の野良猫の根絶」を宣言し、
金属製のトンネルに猫をおびき寄せて
毒ガスを噴射するわなや
毒入りのソーセージなどを開発して
駆除を進めてきました。
2015年には、環境大臣があらためて
「2020年までに200万匹の
野良猫を殺処分する」計画を
発表しています。
もちろんネコの問題は
オーストラリアだけではない。
* ニュージーランドのラウル島で
数十万羽いたセグロアジサシが絶滅、
* 亜南極のケルゲレン諸島で
年間約125万羽の海鳥が殺される、
などなど
持ち込まれており、
「島の動物相を破壊するスピードでは、
ネコの右に出るものはいない」
(ソウルゼンバーグ ウィリアム.(2010)
『捕食者なき世界』野中香方子訳,
文藝春秋)
と言われる例を並べている。
「個としての動物」たちの
命や苦しみよりも
「生態系」の保護が優先されるという
大義名分のもと、
外来種を駆除してしまっていいのか、は
簡単な問題ではないが、
ネコに対して
かわいいペットのイメージしか
なかったせいか
上記「破壊力」の数字には
ほんとうに驚いてしまった。
備忘録代わりにメモっておきたい。
(全体の目次はこちら)
最近のコメント