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2021年1月 3日 (日)

「クーデター本部に顔パス」の外交官

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「クーデター本部に顔パス」の外交官

- プロがプロを取材して -

 

明けましておめでとうございます。

備忘録を兼ねた
まさに気ままなブログではありますが、
今年もボチボチ続けていこうと
思っていますので
今後ともどうぞよろしくお願いします。

 

昨年末2020年12月27日の朝日新聞
「Reライフ 輝く人」に
作家 佐藤優(さとうまさる)さん
記事が出ていた。

佐藤さんが、自らの逮捕、勾留の体験を
感情的にならず冷静に記述している
(おそらく最初の著書)

はたいへんおもしろい本だったが、
あれから15年、
記事には
「これまでに出版した著書は
 900冊を超える」

とある。
 900 / 15 = 60
共著でお名前を拝見することも
多いとはいえ、年間60冊で15年、
900冊はなにかの間違いではないだろうか?

ともあれ精力的な活動の一方、
「心からつきあえる人は、
 5人もいれば十分」

先が見えてくる50代以降は
「消極主義」で生きるべきだ
と話している。

 

佐藤優さんというと
忘れられない新聞記事がある。

産経新聞
2002年3月1日第一面

020301sankeisato

彼の力量 誰が認めたか
前主任分析官「佐藤優」を考える

との見出しの記事。
(以下水色部、
 産経新聞の記事からの引用)

記事はこう始まっている。

ソ連の要人の家に連日、
 夜討ち・朝駆けを続けている
 日本大使館員がいる
」。

モスクワでこんなうわさを
耳にしたのは、
ゴルバチョフ政権下の
ペレストロイカ(再編)が
軌道に乗り始めた
1987年秋のことだった。

この外交官が当時まだ27歳で
いわゆる「ノン・キャリア」の
三等書記官「佐藤優」

なる人物であることはすぐに知れた。

ソ連の要人に夜討ち・朝駆けという
古典的手法でアプローチを試みる
若き外交官。

その対象は驚くべき広範囲に渡っていた。

佐藤に会い、度肝を抜かれた。

夜討ち・朝駆けの対象は
ソ連の政界、経済界、学会、
マスメディア、ロシア正教会、
国家保安委員会(KGB)関係者、
果てはマフィアの親分
・・・と、
表と裏世界の隅々にまでおよび、
しかもその手法は
新聞記者の私も全く顔負けだった。

早朝、出勤前に平均二人、
真冬の凍てついた夜でも
ウオツカを手に深更まで
昼間仕込んだ住所を探しあて、
二人、三人、四人と
相手のアパートの扉をたたき続けた。

佐藤のこの粉骨砕身の
地道な努力が培った
幅広い人脈は数年後、
赫々たる成果を生んでいく

たとえば、どんな成果か?
ちょっと見てみよう。

1991年1月、
リトアニアのテレビ塔を死守する
独立派民衆に
ソ連軍の戦車が襲いかかり、
13人の犠牲者を出す
「血の日曜日事件」が発生。

戦車は「独立運動の砦」
・リトアニア最高会議に
次の攻撃の照準を定めていた。

現地入りした佐藤は人脈をフル利用し
攻撃側の
リトアニア共産党・ソ連派幹部と
独立派幹部の間を
何度も行き来して説得工作を繰り返し、
ついに戦車の進軍を阻止したのである。

最高会議には数百人の民衆が立てこもり、
武力衝突は大流血を意味していた。

「バルト三国の民族衝突拡大は
 ソ連全体の行方を一段と不透明にし、
 これを阻止することは
 日本の国益に合致すると必死でした」。
佐藤はのちに記者にこう述懐した。

ソ連派幹部と独立派幹部の間を
何度も行き来して、
戦車の進軍を阻止したなんて。

 

同年8月、当時のソ連大統領、
ゴルバチョフを
クリミア半島に一時軟禁した
ソ連共産党守旧派(左翼強硬派)による
クーデター未遂事件が起きるや、
佐藤はモスクワ・スターラヤ広場の
ソ連共産党中央委員会に陣取る
「クーデター本部」に
顔パスで潜入した


ゴルバチョフの生死が
世界中の関心を呼んでいたときに、
佐藤は
「ゴルバチョフは生きて
 クリミアにいる。
 表向きの病名はぎっくり腰だ」
との情報を世界に先駆けてキャッチ、
至急報の公電を東京に送った。

クーデター本部に顔パス!とは。
いったい、どんな人脈を
築いていたのであろう。

スパイ小説のようなことが
ほんとうにあるのだ。

 

佐藤さんの異国での驚くべき行動力には
ほんとうに頭が下がるが
この記事は別な意味でも
強く印象に残っている。

最後に(モスクワ 斎藤勉)とある通り、
斎藤記者の署名記事となっているが、
斎藤さんが佐藤さんのことを
実に丁寧に取材していることがよくわかる
記事だったからだ。

記者が取材して書くなんて当たり前、
と言いたいところだが、
最近の(と言っても
この記事自体20年近くも前のものだが)
新聞記事で
「ちゃんと取材して書いているなぁ」
と思えるものは
残念ながら驚くほど少ない。

プロの記者さん、
まさにプロの仕事をお願いします。

今年はそんな記事が
一本でも多く読めますように。

 

 

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