ここから出せと叫ぶ力
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ここから出せと叫ぶ力
- あなたが書かなければ存在しない -
雑誌 すばる2020年11月号
集英社
を読んでいたら
たまたま
「第45回すばる文学賞 原稿募集」
のページが目に留まった。
もちろん文学賞に
応募しようとしていたわけではない。
本を読むことは大好きだが、
書くのは備忘録を兼ねた
こんなブログでさえ精一杯なので。
おもわず読んでしまったのは、
選考委員の名前を見たからだろう。
「へぇ、この方が選考委員なンだ」
と思いつつ、それぞれの方が
どんな作品を期待しているか、
の短いコメントを
興味深く追ってしまった。
選考委員は以下の5名の方々。
奥泉光さん
金原ひとみさん
川上未映子さん
岸本佐知子さん
堀江敏幸さん
コメントを見てみたい。
(以下水色部、雑誌からの引用)
新人に限らず、作家に期待されるのは、
小説なるものの通念に捉われぬ
「文」の力の貫徹であり、
「なんだこれは?」と
読者をして呟かせるような
作品を書くことだ。
どんな方向でもよいから
徹底的なものを待つ。
「なんだこれは?」は
おもしろい作品に出会ったときに
たしかに思わずつぶやいている気がする。
なんか面白いもの書けちゃった。
そんなノリで送ってください。
なんとも金原さんらしいコメントだ。
応募できるほどのものを
「書けちゃった」と思えるときは
いいデキなのは間違いない気がする。
遠いものでも近いものでも
世界のどこが
何が書かれてもよいけれど、
あなたの作品にしかあらわれない
角度や光景を読ませてほしい。
それはあなたが書かなければ存在しない
世界のさまざま。
あなたが書かなければ存在しない、とは
なんとも嬉しい励ましではないか。
小説とは、頭蓋を内側から圧迫して
ここから出せと叫ぶ力。
以前訳した小説の中に出てきた、
忘れられない言葉です。
醜くても変てこでも
臭くてもかまいません。
頭の中の、
そんなものを見せでください。
これは強烈。
頭蓋から出せと叫ぶ力とは。
それで飛び出したものとは
いったいどんなものなのだろう。
全力で暫いたというのではなく、
全力で書かれてしまった、と
考えるしかないような文章のあつまり。
書き手の気持ちの壁を越えて
眼の前にあらわれた
「小説」との対話を、
楽しみにしています。
いい作品は、一方通行ではなく
対話ができる気がするものだ。
だからこそ読書はやめられない。
さすが選考委員の皆様、
短い中に魅力的な作品が持つ力を
上手に表現するものだ。
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