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2020年12月13日 (日)

「ヒトはどうして死ぬのか」(4)

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「ヒトはどうして死ぬのか」(4)

- アクセルが踏まれているのか、ブレーキが効いていないのか -

 

田沼靖一 (著)
ヒトはどうして死ぬのか
―死の遺伝子の謎
幻冬舎新書

(以下水色部本からの引用)


を読みながら、
新しい「死」の考え方を学ぶ4回目。

「遺伝子にプログラムされた細胞死」である
アポトーシスの発見は、
病気の治療方法に関しても
大きな発想の転換を引き起こすことなる。

アポトーシスの概念が
広がっていなかった頃、
臨床医学の分野では
「異常な細胞・組織を取り除くこと」
「正常な細胞・組織は保護すること」
が治療の基本
と考えられていました。

しかし
「遺伝子にプログラムされた細胞死」が
あるとわかったことで、
病気の根本的な治療法として
「アポトーシスを
 いかに制御するかが重要だ」

と発想の転換が起こってきたのです。

実際、多くの深刻な病気は、
多かれ少なかれ
アポトーシスの異常という観点から
とらえ直すことができます。

生または正のコントロールではなく、
死または負のコントロールから
考える病気治療。

もう少し詳しく見てみよう。

ガンや自己免疫疾患は、
本来死ぬべき細胞が死なない
ために起こる病気と言えます。

一方、
アルツハイマー病やパーキンソン病、
劇症肝炎などは
細胞が急速に死んでしまう
ことが病態と密接に関わっているのです。

 

たとえばの例で
ガンについて見てみよう。
最初に、ガンについての基礎情報から。

ガン細胞が
身体のなかで成長する場合と、
試験管のなかで
培養された場合を比較すると、
成長する速度は、
試験管での培養のほうが
圧倒的に速いのです


(中略)

しかし実際には、
多くのガンは何年もかけて
ゆっくりと成長していきます。

これは、ガン細胞が体内で増殖して
ガンを発病したとしても、
免疫細胞によるアポトーシスの誘発で
死んでいくガン細胞が
相当数にのぼることを示唆しています。

つまりガンの成長は、
ガン細胞の増殖とアポトーシスによる
歯止めのバランスによって、
その速度が決まる

考えられるわけです。

増殖と歯止め、そのバランスが
ガンの成長速度を決めている。
つまり、一方的に増殖することだけで
決まってくるわけではない、ということだ。

加齢によって
ガンを発症する割合が高くなるのは、
遺伝子のキズが蓄積してくることと、
免疫力が落ちてくるために
ガン細胞がうまく除去できず、
生き残ったものが塊となり、
悪性化するリスクが高まるためなのです。

高齢でのガンの発症が増えるのは、
歯止めのほうが
弱くなってしまっている
ことが
原因と考えられるわけだ。

フォーカスすべき領域に
「発想の転換」を引き起こした
アポトーシス。

かつて、ガンの研究は
「なぜ細胞が異常増殖するのか」
「細胞がどのようにして
 異常なガン細胞に変わっていくのか」
が二大テーマ
とされていました。

細胞増殖に関係する
遺伝子の異常が注目され、
「発ガン遺伝子
 =細胞を異常増殖させる遺伝子」を
特定しようという方向

研究が進められていたわけです。

しかし、遺伝的に
ガンを発病しやすい家系の人の
遺伝子を調べたところ、
異常が見られたのは
「ガン抑制遺伝子=細胞に
 アポトーシスを起こさせる遺伝子」
であることがわかってきた
のです。

このことを、著者田沼さんは、
以下のようなたいへんわかりやすい言葉で
表現してくれている。

ガンには必要条件として
「細胞が異常に増殖できること」、
十分条件として
「細胞がアポトーシスを
 抑制できること」が挙げられ、
必要十分条件がそろった場合に
初めてガンになるわけです。

ときおり「ガンが消えた」
という話を耳にしますが、
これは腫瘍にアポトーシスを
起こすカが残っており、
何らかの刺激や免疫細胞の攻撃によって
萎縮したり死滅したりしたケースと
言えるでしょう。

 わかりやすくたとえると、
発ガン遺伝子はアクセルで、
ガン抑制遺伝子はブレーキ
と言うことができます。

細胞が異常に増える理由を考える際、
「アクセルが踏まれて
 増殖のスピードが速まる」
ことだけでなく
「本来踏まれるべきブレーキが
 かからない」
ことに目を向けなければ、
ガンのメカニズムを
正しく理解することはできません

この視点、単純に病気の治療だけでなく、
あらゆる出来事を
客観的に分析するときに応用できる
かなり重要な視点だと思う。

「アクセルが踏まれて
 スピードが速まるっているのか」
「本来踏まれるべきブレーキが
 踏まれていないのか」

ものごとは
常にバランスの中で動いている。

 

 

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