「主因」「素因」「誘因」
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「主因」「素因」「誘因」
- 「全体的に見る目」を失っていないか -
久松農園代表の久松達央さんが
「スーパーで売っている
きゅうりの皮はなぜ硬い?」
という記事の中で、
現在の農作物の流通とその栽培について
語ってくれている内容は、
農業という範囲を超えて
いろいろ考えさせられるものがあった。
記事全文はこちら。
(下記水色部は記事からの引用)
忘れないうちに重要なキーワードを
メモっておきたい。
「値が付きやすい規格のものを、
いかにたくさん安定して採るか」
に尽きるわけです。
具体的には「耐病性」とか
「曲がりの少なさ」といった要素が
大切になります。
と、具体的に
優先順位の指標を示してくれている。
久松さん自身は「おいしい」きゅうりを
目指しているわけだが、
安定供給をミッションとする農家を
まったく責めたりはしていない。
「その目的のために
最適な行動をとっている」と。
おいしさの一点だけを
追求しているわけではなく、
「おいしさ」と
「栽培のしやすさ」の間で
ウロウロとしているんです。
「安定供給」であれ
「おいしさ」であれ
優先順位や目的を決めたからといって
農作物を相手にすると
簡単にはいかないことが
よく伝わってくる。
そんな中、有機栽培について語った
次の部分は特に印象深かった。
まずは農作物の病害について学ぼう。
「主因」「素因」「誘因」の
3つがあるとされています。
例えば「べと病」という病気が
あるんですが、
主因としてはカビがそれにあたります。
素因は品種だったり、
その植物自体の話です。
そして誘因は
土壌や風通しなどの環境です。
寡聞にして
「主因」「素因」「誘因」
という見方を初めて知った。
なるほど、これらの組合せによって
はじめて病気になるわけだ。
すべてに目を向ける必要があります。
けれども、
農薬を使うことを前提にすると、
どうしてもその主因のカビを
取り除くことばかりに
目が向いてしまって、
その個体はどうなのかという素因や、
土作りは適切なのかという誘因への
意識がおろそかになりがちです。
カビなんてどこにでもいるものなので、
それを取り除くことに意識が集中すると、
他が見えなくなってしまいます。
逆に有機栽培は
それらを全体的に見る目が
強く鍛えられるわけです。
「主因のカビを
取り除くことばかりに
目が向いてしまって」
は示唆に富む指摘だ。
「全体的に見る目が
強く鍛えられるわけです」
有機栽培実践によるメリットを
こんな角度から耳にしたのは初めてだ。
実践者自身の言葉ゆえ説得力がある。
振り返って、現在のコロナ禍。
手当り次第の無差別な消毒は
「主因のウイルスを
取り除くことばかりに
目が向いてしまって」
いるからだろう。
病気には「主因」のほかに
「素因」も「誘因」もある。
盲目的な「マスク絶対」が
世間的には大手を振っている中
「息子が通う幼稚園では、
園の中では先生たちも
マスクをはずすことになった」
というつぶやきを目にした。
幼い子どもたちは
大人の表情と、発する言葉から
社会性や情操を育んでいく。
その表情をマスクで覆っていてはよくない、
と園長が判断したとのこと。
先生がマスクをすることで
表情が読み取れず
戸惑っている子どもたちを目にして、
子ども自身が持つ「育つ力」や
生き生きと生活することによる免疫力を
総合的に判断しての決断らしい。
そもそも気をつけないといけない病気は
コロナだけではない。
まさに主因のみに囚われていない
好例だと思う。
「主因」「素因」「誘因」、
「全体的に見る目」を失っていないか、は
忘れてはいけない問いかけだ。
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