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2020年5月 3日 (日)

「遺伝子組み換え」の技術的課題

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「遺伝子組み換え」の技術的課題

- 2つの大きな問題点 -

 

近い将来、とんでもないことを
ひき起こすかもしれない技術、
という意味で、
個人的な興味ながら
「AI(人工知能)」と
「ゲノム編集」からは目が離せないと
思っている。

今日は、以下の本を参考書に、
「ゲノム編集」に繋がる
遺伝子回りの操作技術について
少し学んでみたい。

小林雅一(著)
ゲノム革命がはじまる
DNA全解析とクリスパーの衝撃
集英社新書

(以下水色部、本からの引用)

 

遺伝子を組み換える、という技術には
半世紀近い歴史があるし、
「遺伝子組み換え作物(GMO)」などの言葉を
目にするようになってからも
四半世紀ほどは経つ。

ところが、「ゲノム編集」の登場により
ここ数年、遺伝子回りの話題は
文字通り恐ろしいほど加速している。

以前からある「遺伝子組み換え」と
近年脚光を浴びている「ゲノム編集」とは
何がどう違うのだろうか。

まずは「遺伝子組み換え」から
少し詳しくみてみよう。

こうした遺伝子組み換えは、
基本的に 
「バクテリア(細菌)」や
「植物」、あるいは「動物」など
他の生物が持つ遺伝子を、
(特殊なウイルスやバクテリアの
 感染力を使うなどして)
目的とする植物や動物など(のDNA)に
組み込むことで実現される。

本文から、具体的な例を
ピックアップして列挙すると

(1) 遺伝子組み換えトウモロコシ
トウモロコシに
殺虫性バクテリアの遺伝子を導入することで、
「害虫への抵抗性を備えたトウモロコシ」が
実現される。

遺伝子組み換えトウモロコシに
代表されるような
遺伝子組み換え作物(GMO)は、
その種子だけで全世界で
年間約400億ドル(4兆円前後)もの売上
記録する一大産業になっている。

(2) バイオ医薬品
正常にインスリンを分泌する
人の遺伝子を取り出し、
これを大腸菌に組み込むと、
この大腸菌が人型インスリンを
生産するようになる。

これは糖尿病の患者に授与される
「バイオ医薬品」として広く使われている。

(3) ノックアウト・マウス
マウス(小型ネズミ)に、あえて
本来とは異なる遺伝子を導入することで、
実質的にその遺伝子を破壊したのと同じ
マウスを実現できる。

(これがノックアウト・マウスで、
 主に分子生物学や医学、
 あるいは神経科学などの分野で
 実験用動物として使われている。

 具体例をあげると、
 特定の遺伝子を破壊したことによって、
 そのマウスが何らかの病気を
 発症したとすれば、
 その遺伝子が病気を抑える役割を
 果たしていたことが判明するなどして、
 医療研究に資することになる)


その是非はともかく、
一見成功しているように見えるこの
「遺伝子組み換え」技術が持つ
大きな問題点とは何なのだろう?

【問題点その1: 精度(成功率)が低い】

まず一つは技術の精度に関する問題である。

簡単に言えば、
従来の遺伝子組み換えでは、
これから導入しようとする遺伝子を
(ターゲットとなる生物のDNA上の)
狙った場所に組み入れるのが
容易ではなかった。
つまり科学者らが何度試みても、
間違った場所に遺伝子を
組み入れてしまうことが多かったのだ。

たとえば、
ノックアウト・マウスを
作ろうとするときには、研究者が 
「マイクロインジェクション」
と呼ばれる作業を100万回以上も
繰り返す必要があった

その作業を通して、ようやく1回だけ
狙った通りに成功する、といった
極めて成功率(的中率)の低い技術
だったらしい。

このため、十分な訓練を積んだ
ベテラン研究者でさえ、目的とする
ノックアウト・マウスを作るために
1年以上も要することが珍しくなかった。

GMOやバイオ医薬品についても同様。

稲の遺伝子を組み換えて、
収穫量の大きな新品種(GMO)を
作り出そうとした場合、
変異が(DNA上の)正しい位置に入る確率は
1万分の1程度と言われた


バイオ製品も
組み換え精度の問題などによって、
製品化までに極めて長い開発期間と
膨大な費用がかかっていた。

【問題点その2: 汎用性に乏しい】

たとえばノックアウト・マウスを
作るために使われた組み換え技術は、
あくまで
マウスだけに通用する技術であって、
マウスよりも大きな
「ラット(大型ネズミ)」で
同じことをやろうとしても
上手くいかない。

 

100万回だの、1万分の1だの
驚くような数字が並んでいるが
以上、
従来の遺伝子技術が持つ2つの問題点
【 精度(成功率)が低い 】
【 汎用性に乏しい 】
を挙げたのち著者小林さんは、
こうコメントしている。

要するに
従来の遺伝子組み換え技術は、
「組み換え」
という言葉から連想される
自由自在なイメージとは裏腹に、
実は様々な問題や限界を抱えた
不自由な技術だった
のだ。

 

こういった問題を抱えていた
従来技術に対して、
「クリスパー」に代表される
新しい「ゲノム編集」の技術は
どう優れているのか?

この話、次回に続けたい。

 

 

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