« ニュースや数字を通して考えると | トップページ | 胎盤はウイルスのおかげ »

2020年5月31日 (日)

ICU学長からの問いかけ

(全体の目次はこちら



ICU学長からの問いかけ

- 改めて「不公平」について考えてみよう -

 

noteでこんな記事を目にした。

あべまおこさんという方が書いていた
「話してもわからん」をひっくり返したある日の学長からのメール

記事へのリンクは
筆者の承諾をいただいているので、
詳しくは
リンク先の記事を読んでいただきたいが
簡単にその内容をまとめると

(1) 新型コロナウイルスの感染拡大により
  国際基督教大学(ICU)は
  春学期における全ての授業を
  オンラインで行うこと等
  緊急の対応を決定した。

(2) すると、ある学生が、
  期待される従来の教育環境で
  授業が受けられないのであれば
  学費の一部である
  施設費を減額してほしい
  との内容を含む署名運動を開始した。

(3) 最終的に集まった署名が
  提出されたかどうかは不明だが
  学生の要求・疑問に答える形で
  岩切学長が学生にメールを発信した。

という一連の流れの報告になっている。

全体に、たいへんに知的でかつ冷静な文章で
さすがICU生、と思わせるいい記事なのだが、
ご本人も書いている通り、
ICUつまり岩切学長の返答が
紋切り型のYes/Noではなく
実にいい内容だったので、きょうは改めて
そのことについて紹介し、考えてみたい。

 

学生の要求の詳細、および
大学側の回答の日本語版の全文は
上のリンク先にあるので、
ご興味があれば参照いただきたいが、
私が特に感銘を受けたのは
学長からのメールの以下の部分だ。
(以下、水色部は
 学長からのメールの引用)

図書館は、論文執筆中の学部6卒生と
大学院生には、送料大学負担で
図書の貸し出しを行っています
(学期中、1回、1人5冊まで)。

これは、このサービスを
受けられない学生からすると、
不公平な対応に見えるかも知れません。

ある意味では確かにそうです。

皆さんにはぜひ、
この「不公平」について考えて
みることをお願いしたいと思います。

改めて「不公平」について
考えてみてほしい、と投げかけている。

 

学生全員に同じ対応をするのは
財政的にも人手の面からも不可能です。

大学として採った措置は、
それをしないと
極めて大きな不利益を蒙る人

(ここでは、論文が書けなくて
 卒業できなくなってしまう人)
にたいして特別な手当てをする
というものです。

今あなたがその対象者ではなくても、
ある日、あなたが、
図書の貸し出しとは別のことで、
そのような類の不利益を
蒙りそうになったときには、
大学は適切なサポート体制を整える、
ということを覚えていてください


大学も市民社会と同じで、
全体で支え合うという精神で
運営されています。

限られたリソースしかないとき、
それをどこに投入するのか、
どう配分するのか。
リーダーとして決断を迫られる
厳しい場面だ。

岩切学長は、
それが一般的には不公平と呼ばれることを
承知のうえで
「最も困っている人に投入する」
という決断をした。

広く薄く全員に、ではなく
困っている人にだけしっかり


そして、ここがすばらしいところだが、
学長は
「あなたは、今は(助けられる)
 対象者ではないかもしれないけれど、
 もし今後、
 あなたが困る状況になったときは
 大学側は今度はあなたを助けます
と添えている。

単純な「機会の公平」のみの視点で
公平・不公平を考えていないか、と
厳しい問いを投げかける一方、
同時に
「あなたが安心して学べる環境を
 大学側はいつでも
 最大限提供しようとしていますよ」
とのメッセージまで伝わってきて
ICUの学生でもないのに
なぜか胸が熱くなる。

2020年5月24日の朝日新聞EduAには
岩切学長へのインタビュー記事があった。
それによると
昨年秋の香港での大学閉鎖の経験を踏まえ
授業のオンライン化は3月12日には
決定していたという。

『The education must go on』の考えのもと
学内に「コロナ対策室」をつくり、
教職員が協働してオンライン授業の
サポート体制を整えたらしい。

教員向けの研修会を開き、
経済的な理由から
自宅にWiFi環境が整っていない学生には
大学が費用を負担し、機器を提供した。
非常勤講師にも機器を貸し出したという。

「極めて大きな不利益を蒙る人にたいして
 特別な手当てをする」
「もし今後、
 あなたが困る状況になったときは
 大学側は今度はあなたを助けます」

こういったブレない考え方が
基本指針として明確にあったからこそ
各々の問題に
いち早く対応できたのであろう。

 

形だけの「公平」が
いかに期待に反する施策を生むかは、
「一住所に2枚のマスク」をみても明らかだ。

結果的に、学費の減額要求自体は
丁寧な説明のもと退けられている。

しかし、もし私が学生であったら、
結果に対して「なにぃ!」と怒る前に、
再度メールをゆっくり読み返して
みたことだろう。

そして、「公平とはなにか?」を
改めて考えさせられると同時に、
「困ったら今度はあなたを助けます」
の言葉に、ある種の「安心感」すら
抱いて驚いたに違いない。

サポートというのは、
お金だけではない。

それぞれの学生が、
自分を信じてくれる人たち、
自分を励ましてくれる人たち、
そういう人たちが
そばにいることを実感でき、
環境に関わらず
「ここなら安心して学べる」
と心から思えるなら、
それは最大のサポートであり、
公平なサポートでもある。

 

気がつくと、公平さだけでなく、
サポートの価値についても
改めてあれこれ考えている。

いい文章は、
世界をどんどん広げてくれるものだ。

 

 

(全体の目次はこちら

 

 

 

 

« ニュースや数字を通して考えると | トップページ | 胎盤はウイルスのおかげ »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

言葉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ニュースや数字を通して考えると | トップページ | 胎盤はウイルスのおかげ »

最近のトラックバック

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ