ポケベルのサービス終了
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ポケベルのサービス終了
- 携帯電話の普及と比較して -
前回、
1995年のラグビーワールドカップ
南アフリカ大会での
日本対ニュージーランドの試合について
古い新聞記事を参照したが、
その日の新聞を見てみると、
ポケットベル(ポケベル)の
大きな広告が目につく。
たとえば、NZ戦を報じた
1995年6月5日の朝日新聞にある広告。
ちょっと大きくしてみると
機能をかなり無理やり拡張して
差別化を図っていることがよくわかる。
数字だけではなく、文字だったり
イラストメッセージだったり、
カタカナ定型伝言分だったり、
バイオリズムが見られる、
なんていうのまである。
実は、この1995年
(正確には1995年度)は
ポケベルの契約件数が
ピークを迎えた年だった。
ちょっと確認してみよう。
「無線呼出し(ポケットベル)の
加入契約数の推移」
のタイトルで、総務省のここから
データを簡単にダウンロードできる。
ただ数値だけではわかりにくいので
グラフにしてみた。
1995年度の棒には目印のため
黄色い線を入れている。
ポケベルの加入契約数の推移
ご覧の通り統計値のある1988年から
グングン契約台数は伸びており、
1995年度末の契約台数1061万台で
ピークを迎えている。
興味深いのはそのあと。
急速に契約数は減っていき、
2006年度末には
なんと16万台にまで減ってしまう。
1995年度末のわずか1.5%、
たった11年で98.5%減ということになる。
理由はもちろん携帯電話の普及だろう。
同じ総務省のページに
「携帯・PHSの加入契約数の推移」
のデータも公開されている。
年度末 | ポケベル | 携帯・PHS |
---|---|---|
1994年 | 935万台 | 433万台 |
1995年 | 1,061万台 | 1,171万台 |
1996年 | 1,007万台 | 2,691万台 |
1995年は、ものすごい勢いで
「携帯・PHS」の契約台数が
「ポケベル」の契約台数を抜き去る
時期でもあったわけだ。
1988年から2000年までで
ポケベル=青、携帯・PHS=茶
両方の動きを
一枚のグラフにしてみよう。
「ポケベル」と「携帯・PHS」の加入契約数の推移
携帯の契約数の伸びが
いかに早いかがよくわかる。
期間を2018年まで拡張するとこんな感じ。
「ポケベル」と「携帯・PHS」の加入契約数の推移 2018年度末まで
契約数が1億8千万台にまで伸びた
携帯と並べると、
最高でも1000万台程度のポケベルは、
グラフの左下に小さく、
の存在になってしまう。
それにしても、契約数が1億8千万台とは。
利用年齢層を考慮すると
ざっくり平均してすでにひとり2台!
実際には「1台しか持っていない」
という人がかなりいることを考えると、
(会社携帯等も含むとはいえ)
3台以上持っているひとも、
珍しくないということになる。
今回、ポケベルの広告に目がいったのは、
日本がアイルランドに勝った翌々日
2019年9月30日、
「ポケベルのサービス停止」のニュースが
流れたからだ。
1990年代にブームとなった
無線呼び出しサービスを、
全国で唯一展開していた
東京テレメッセージ(東京)が
9月30日にサービスを終了する。
半世紀にわたり続いたが、
携帯電話に取って代わられ、
通信手段としての役目を終えた。
東京テレメッセージは
9月30日深夜から10月1日にかけて
ポケベル用の電波を順次止める。
折り返しのための電話番号を伝える
「数字表示エリア」を
無理やりとも言える語呂合わせや創意工夫で
「メッセージエリア」として使い、
コミュニケーションツールとして
ブームを作り出していたのは
主に当時の女子高生たちだった。
4649 | よろしく |
889 | はやく |
8181 | バイバイ |
3470 | さよなら |
くらいならなんとか意味が伝わりそうだが、
0906 | おくれる |
14106 | あいしてる |
5731 | ごめんなさい |
1871 | 会えない |
にいたっては、おじさんはほぼギブアップ。
当時、無理やりの数字メッセージを
牽引していた女子高生の柔軟な発想には
感心するばかりだ。
でももう、それらも完全に役目を終えた。
1995年:
ポケベル全盛、1000万台超の契約。
NZに惨敗。
24年後、
2019年:
ポケベルのサービス終了。
強豪アイルランドに勝利。
台風19号による甚大な被害が
次々と明らかになっていく10月13日、
スコットランドにも勝って
ラグビーW杯で初のベスト8進出。
並べることにナンの意味もないけれど、
ごちゃごちゃとすべてを乗せて
時代は流れている。
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