島根県の民藝めぐり(2)
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島根県の民藝めぐり(2)
- 出西窯とobjects -
島根県の民芸めぐりの2回目。
今日は、
島根民芸の代表選手のひとり、
出西(しゅっさい)窯から訪問したい。
参考図書は今回も
私の好きな民藝
鞍田崇 他著
NHK出版
(以下水色部は本からの引用)
【出西(しゅっさい)窯】
(写真はすべてiPadで撮影)
この大きな建物は
「くらしの陶・無自性館」。
窯元に隣接している販売展示館だ。
吹き抜けを備えた2階建てで
多くの作品を一覧できる。
この出西窯、
戦後間もない昭和22年(1947年)に
農家の5人が始めたものらしい。
河井寛次郎や濱田庄司に会い、
民芸運動に参加することを一同決心。
民芸の巨匠らの指導を受けつつ、
手仕事による、
実用的で美しい器作りを目指します。
以来70年、
郷土の土や釉薬の原料にこだわり、
土作りから一貫して工房内で生産。
縁に鉄砂引きを施した
呉須釉(ごすゆう)の器は、
出西窯を代表する製品で、
深みのある青は
「出西ブルー」と呼ばれている。
焼くことで浮かび上がる
まさに焼き物ならではのブルーだ。
いくつかお目当ての作品があったのだが、
鳥取の岩井窯同様
希望するサイズのものは
残念ながら
連休前半で売れてしまっていた。
工房では「登り窯」も公開されている。
50年以上も使っているという
歴史のあるものだが、
今でも年に数回、
火を入れられるらしい。
この棚いっぱいとなれば
相当な数が焼けることだろう。
共同体の形をとり、
器を共同製作しているのも
この窯の特徽です。
「分業ではなく、陶工の各人が
決められた種類の器を、
成形から釉掛けまで
受け持っています。
効率的かどうかは別として、
分業だとつまらないでしょう」
とは、出西窯代表多々納さんの言葉。
現在は研修生を含め
13名が陶器の製造に携わっているという。
販売展示館には
次々と客がやってきていて、
観光地並に大賑わい。
工房と販売展示館の裏には、
出西窯の器を使ったBakery&Cafe
「ル コションドール出西」があり
焼き立ての美味しそうなパンの匂いが
駐車場にまで流れてきていた。
客の動きを見ていると、駐車場から直行、
このパン屋さんだけが目当ての客も
結構いるようだ。
もう一箇所、
出雲松江藩の城下町として栄えた
松江市内で寄ったのは
【objects:オブジェクツ】
ここも倉吉のCOCOROSTOREと同様
古い建物をリノベーションして
店舗にしている。
もとはテーラーだったらしく
レジを兼ねたカウンタは
テーラーの時のものを
そのまま利用している。
窯元が点々とあって、
各々の風土に合ったものを
作ってきました。
例えば石見(いわみ)は、
採れる土がきめ細かく
よく伸びることから、
水甕(みずがめ)などの大物を。
一方、出雲は
藩主の松平不昧(ふまい)公が
茶人だったので、
茶陶の伝統があります。
それぞれ特徴は異なりますが、
全般に道具として
しっかりしたものが多いのは、
民芸運動が与えた影響が
大きいからだと思うんです」。
とは店主の佐々木さんの弁。
扱っているのは
湯町窯や出西窯、森山窯、岩井窯といった
山陰の窯元をはじめとする焼き物のほか、
岡山の漆器やガラス器、
真鍮のカトラリーなど。
トーンの違う様々な焼き物を
上手に展示してあり、見ていて楽しい。
温泉津町の森山窯の
素敵な皿との出合いがあって一枚購入。
objectsのあるエリア、
他にも古いレトロな建物が多い。
ちょっと怪しい店も含めて
散策するといろいろおもしろいことが
発見できそうな味のあるエリアだ。
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