足立美術館(1)
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足立美術館(1)
- 16年連続日本一の庭園 -
足立美術館は、実業家の
足立全康(ぜんこう1899-1990)さんが
生まれ故郷の島根県安来市に
1970年、71歳のときに開館した美術館だ。
島根県松江市から車で約30分。
横山大観をはじめ近代日本画を
メインに蒐集している美術館だが、
この美術館の名を
内外に轟(とどろ)かせているのは、
なんといってもその庭だ。
枯山水庭、苔(こけ)庭、池庭など
複数の「庭」を目当てに
訪問する観光客が多い。
丁寧に手入れされた庭は、
米国の日本庭園専門誌
『The Journal of Japanese Gardening』の、
「2018年日本庭園ランキング」で
第一位に選ばれている。
しかも、
全国の日本庭園900か所以上を対象にした
同誌のランキングにおいて
今回の選出により
「16年連続日本一」をも達成しているのだ。
ちなみに
2018年日本庭園ランキング
ベスト5は
1位 足立美術館(島根県)
2位 桂離宮 (京都府)
3位 皆美館 (島根県)
4位 山本亭 (東京都)
5位 京都平安ホテル(京都府)
となっている。
日々変化し続ける庭において
16年連続日本一とは。
いったいどんな庭なのだろう?
我々夫婦も期待いっぱいで
入館の列に並んだ。
おもしろいのは
美術館なのに入館した人は皆、
まずは庭の眺めを探して
キョロキョロしていること。
実は慌てずとも、入り口から
巡回コースが作られており、
館内を順に歩くだけで、
各所から庭を眺められる構造に
なっている。
(写真はすべてiPadで撮影)
私が訪問したのは
改元に伴う連休中だったため
バスでやってくるような団体客も含めて
まさに多くの訪問者で賑わっており、
「ゆっくり愛でる」
という雰囲気ではなかったが
それでも庭の美しさには
たちまち目を奪われた。
「ゆき届いている」
この言葉が最初に浮かんだ。
全体のレイアウトだけでなく、
ゴミはもちろん、枯れ枝や落ち葉さえ
一本一枚も落ちていないほど、
手入れが行き届いている。
そのうえ、
借景も含めた遠近感の設定が絶妙で、
空間がどこまでも広がっていくような
不思議な開放感がある。
この美しさ、どう表現すればいいのだろう。
歩くに従い少しずつ角度を変えて
違った顔を見せてくれる。
パノラマ写真を使って
広角的に池の周りを写すとこんな感じ。
館内には窓枠を額縁に見立て、
庭園を絵画のように
眺められる仕掛けもある。
縦長に切り取ればまさに掛け軸だ。
この「生の掛け軸」となる
「壁の穴」は、
足立さんが師と仰ぐ、
「米子商工会議所の名誉会頭だった
故坂口平兵衛さんの発想を
頂戴したもの」
と足立さん自身が自伝
『庭園日本一
足立美術館をつくった男』に
書いている。
本によると
「床の間に穴を開けるなんて」と
猛反対する職員や大工を前に、
足立さん自らがカナヅチを持って
壁をぶち抜いてしまったらしい。
それにしても、これほど完璧な庭、
いったいどんな人が、どんな思いで
日々の世話をしているのであろうか?
ここの庭師の方の話が
以前少し詳しく新聞に出ていたことがある。
次回、その話を紹介したい。
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