伯耆富士「大山」一日登山
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伯耆富士「大山」一日登山
- 海抜ゼロメートルが見える山頂 -
今回の旅行では、知人の薦めもあり、
鳥取県大山(だいせん)の登山に
トライしてみることにした。
我々夫婦は登山に関しては
完全にド素人。
でも、大山観光局のHP
鳥取大山(だいせん)観光ガイド
を見てみると、
「お子さま~初心者ならコチラ」
と、夏山登山のルートを示している。
時間も往復約6時間。
「なら、大丈夫か」と
天気予報をこまめにチェックし、
旅行期間中のベストな天候の日を
「登山日」とすることにした。
「初心者用」と案内が出ていて、
「6時間」と書いてあるのだから、
我々夫婦のようなド素人でも
6時間あれば往復できるのだろう、と
出発前は疑いもなく信じていた。
なので朝食もゆっくりとって、
その日、
登山口近くの駐車場に到着したのは
午前9時すぎ。
連休中、かつ天気も上々だったので、
駐車場では、リュックを整えたり、
靴を履き替えたり、
準備をしている人たちが何組もあった。
いよいよ出発。
大山の頂のひとつ
弥山(みせん)山頂1710mまで
標高差約950mの登山開始だ。
登り始めてまもなくすると、
登山道右手奥に阿弥陀堂の案内が。
知らなければ
そのまま通り過ぎたと思うが、
出発前、宿の人が妙に強く立ち寄ることを
薦めてくれていたこともあり、
ちょっと寄り道してみることにした。
(写真はすべてiPadで撮影)
いやぁ、これ
独特な風格と品があり、
確かに一見の価値がある。
建物も中の仏像も
共に国の重要文化財に
指定されているらしいが、
教えて下さった宿の方に感謝。
登山道に戻って登山を続ける。
この基本ルート、
ほとんど平坦部がなく
ただひたすら上り坂が続く。
連休中のせいか、登る人も多いが
我々のような素人グループは
歩く速度も休憩の間隔も似ているので、
抜いたり抜かれたりが何度も続く。
なので、
そのたびに同じ人たちと同じ挨拶を。
双方
「あれ、さっきもしましたね」
と苦笑い。
登山道はよく整備されているが、
岩がゴロゴロしていて、
階段状ながらじつに歩きにくい。
5合目あたりまでは、
ブナやミズナラ、ケヤキなどの
林の中を進む。
5合目を過ぎたあたりから
ようやく視界が開けて来た。
雪の残る北壁が美しい。
岩ゴロゴロの道が続くので、
「底の硬いトラッキングシューズに
履き替えておいて
ほんとうによかったなぁ」
を実感する。
スニーカや運動靴では足への負担が
かなり増していたことだろう。
歩いていると山の中腹で
なぜか小さく音楽が聞こえてきた。
「こんなところでどうして?」
見ると、
腰に小さなスピーカをぶら下げて
そこから音楽を流しながら
登っている人がいる。
うーん、これはイカン。
同じ「音を出しながら」でも、
熊よけのベルの音を
響かせながら登る人はなぜか許せるのに
こっちはダメ。
止めろ、とも言えないので、
まずは先に行ってもらい、
音が聞こえなくなってからまた歩きだす。
今回の登山では一日往復する間に
そんな「スピーカさん」に
3人も遭ってしまった。
Bluetoothスピーカの登場が
きっかけだろうが、
どうか、流行(はや)りませんように。
7合目を過ぎたあたりからは、
登山道の一部に雪が残っており、
さらに慣れない動きをすることに。
大人たちはへっぴり腰だが、
子どもたちはスイスイ行く。
ケガには要注意だ。
こまめに休憩をとりながら、
ようやく8合目あたりまで来た。
このあたりまで来ると
見事な景色が眼の前に広がってくる。
疲れた体を励ましてくれる、
とはまさにこのこと。
海抜ゼロメートルとなる
日本海と海岸線が遠くに見える。
日本海まで含めて全景色を独り占め、
そんな気分になる。
8合目から山頂までは
国の天然記念物
ダイセンキャラボク群落
の中を抜けていく木道が続く。
残雪とのコントラストもいい。
いよいよ山頂が見えてきた。
山頂に到着すると、
南側への展望が一気に開け
まさに360度の大パノラマ!
大山の他の頂(いただき)、
剣ヶ峰、天狗ヶ峰方向へと
連なる峰々、そして
これまで見ることができなかった
南側斜面が一望できる。
雄大な景色と
ひんやりとした風を楽しみながら
なんとか登れた達成感と共に、
遅めの昼食をゆっくりとった。
山頂でのおにぎりの味は格別だ。
「大山頂上1710.6m」の碑と共に
記念写真を一枚。
ガイドでは4時間になっていた上りに
結局5時間かかってしまった。
我々登山ド素人夫婦の実力としては
こんなもの、ということだろう。
山頂には山小屋があり
500mlのペットボトルのお茶が
500円で売っていた。
買ったわけではないが、
「自分で運んで売る」で考えると
あの坂を運んで来て500円は安い。
私にはとても500円では売れない。
さぁて、いよいよ下りのスタートだ。
そのまま空に飛び立てるのではないか、
と思えるような木道が
吸い込まれるように景色の中に延びてゆく。
山頂付近は残雪も多い。
残雪と雄大な北方向の景色。
左上小さな点は登山者だ。
下りも険しい岩の道が続く。
山頂山小屋の人が薦めてくれたこともあり
下りは途中から
「行者コース」を採ることにした。
5合目あたりから下、
長い長い階段が続く。
木々がまっすぐ上に伸びることができず、
こんな状態になってしまうのは、
雪のせいなのだろうか。
以前、
志賀高原でも同じような光景を見た。
「行者谷」と呼ばれるあたりにくると
行者コースならではの景色に
出会うことができる。
もちろん山の新緑も美しいが、
なんと言っても、ここでは
ドーンと目の前に広がる
「大山北壁の大パノラマ」がすばらしい。
雪の残る雄大な北壁を前に、
「あの右側の頂まで登ったンだ」
と思えると、十分、達成感というか
自己満足に浸れる。
行者コースは、
大神山神社のところにある
「登山口」に下りてくる。
奥宮が美しい。
奥宮前の石垣が崩れかかっており、
付近は、立ち入り禁止になっていた。
「崩れかかった石垣」を見る機会は
ありそうで意外にないが、
実際に眼の前で見るとちょっと怖い。
「登山口」まで戻ってきても
駐車場まではまだ20分ほど、
坂を下らなければならない。
大山神社、大神山神社奥宮
への参道ともなっている、
これまた石の道が続く。
今日はもう8時間も歩いているのに
一番の希望は
「土の上を歩きたい」
ようやく駐車場に戻ってきた。
午後5時半。
思わず夫婦ふたりで
登った頂を仰ぎ見てしまう。
山頂で昼食タイムを取ったとはいえ、
結局往復に8時間かかってしまった。
スピードを競うものではないけれど、
大山観光局HPにある
「6時間」で往復することは
少なくとも今の我々夫婦には絶対にムリ。
正直言って、そうとうバテた。
ド素人が登るとは、こういうことか。
素人ながら、装備について感じたことを
忘れないうちに
備忘録代わりにメモっておきたい。
(1) トレッキングシューズ
やはり足は基本。
今回は8時間も山を歩いていながら
途中で「土の上を歩きたい」と思うほど
岩の道が続いたせいもあるが、
だからこそトレッキングシューズ等
底の厚くて硬い靴の有効性は高かった。
(2) 手袋
岩場だったり、雪が残っていたり、
寒さ対策というよりもケガ防止の意味で
手袋はかなり役に立つ。
登るときに踏ん張るために岩を掴んだり、
滑りそうになったときに、
岩なり木なり枝なりを
身を守るために掴んだり、
「安心して掴める手」は身を守るために
重要だ。
(3) サングラス
紫外線から目を守るだけでなく、
眩しさ低減は
疲労低減にもつながる。
若いときはそれほど気にならなかったが、
中年オヤジになると
その有効性をより強く感じる。
その夜は、登山口の駐車場から
車で30分ほどの、日本海に面した
皆生(かいけ)温泉に泊まった。
大浴場に向かうわずか数段の階段で
夫婦ともに足を引き摺るさまに
お互い笑いあう夜。
まさに温泉とビールが
「くぅーっ」と沁みた夜だった。
ちなみに本記事のタイトル「伯耆富士」は
「ほうきふじ」と読む。
伯耆とは伯耆国(ほうきのくに)、
旧国名のひとつだ。
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