鳥取県の民藝めぐり(1)
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鳥取県の民藝めぐり(1)
- 吉田璋也(しょうや)の功績 -
大山登山で嬉しい達成感を味わえたうえ、
皆生(かいけ)温泉の恩恵にも浴したものの、
登山ド素人の我々夫婦は、予想通り、
足の筋肉痛を避けることはできなかった。
というわけで、登山の翌日は
「あまり歩かなくてもいいコース」
で動くことにした。
今回の旅行では、大山登山のほかに
もうひとつ、
ぜひやりたいと思っていることがあった。
それは、
「民藝の焼き物を見て回ること」。
というわけで、登山の翌日は、
「鳥取県の民藝に触れる一日」
とすることにした。
鳥取県の民藝を語るうえで欠かせないのが
「吉田璋也(1898-1972)」だ。
まずは、彼が作った
「民藝美術館」から話を始めたい。
なお、参考図書は、
鞍田崇 他著
私の好きな民藝
NHK出版
(以下、水色部は本からの引用)
【鳥取民藝美術館】
吉田璋也さん、
どんな人だったのだろう?
大きく貢献した吉田璋也(しょうや)。
開業医だった璋也は、
「民芸のプロデューサー」を自任。
地元の手仕事の伝統をもとに、
職人たちを指導して、
新しいデザインの民芸品を作らせ、
また職人の集団「鳥取民藝協団」も
組織しました。
こうした「新作民芸運動」を背景に、
璋也は昭和24年(1949年)、
自分が蒐集した民芸品を展示する
鳥取民藝美術館を開設した。
JR鳥取駅からすぐのところにある。
(写真はすべてiPadで撮影)
1階には、璋也がデザイン
もしくはプロデュースした民芸品を
メインに展示してある。
焼き物に限らず、家具や障子の桟や
コンセントカバーのような小物まで、
吉田璋也のセンスが感じられる。
2階には、蒐集した民芸品。
コレクションは鳥取地方に
限定されたものではなく、
日本はもとより中国等海外からのものもある。
この美術館の目的は
伝えることだけでなく、
職人たちに民芸の美の基準を
示すことにありました。
ここにあるものを手本に、
新しい民芸品を
作ってもらおうと考えたのです。
民藝美術館のとなりには、
昭和7年(1932年)に吉田璋也が開いた、
日本初の民芸店「たくみ工芸店」がある。
この民芸店、開店の理由が感動的だ。
璋也は職人たちの生活のため、
自分が作らせたものを
すべて買い取ったんです。
それを売るための場所が
必要だったんですね」
と美術館の理事が語っている。
さらにその隣には、
昭和37年(1962年)
民芸の器で郷土料理を提供する、
「たくみ割烹(かっぽう)店」を
オープンする。
こちらは実際に
民芸品を使っている姿を見せ、
その使い勝手を知ってもらう場所、
と位置づけられている。
写真左から
「美術館」「たくみ工芸店」「たくみ割烹」
の3棟が並んで建っている。
今回訪問した時には、
割烹店の前(写真右下)には
入店のための行列ができていた。
ちなみに美術館の人の話によると、
通りを挟んだ反対側ある
吉田歯科医院は
吉田璋也のお孫さんがやっている
歯医者さんらしい。
美の実例・基準を提示するだけでなく、
職人に作らせたものをすべて買い取って
それを売る場、使う場を設けながら
新しい作品を作る機会を与えていく。
「民芸のプロデューサー」として
なんという実行力だろう。
エピソードと共に話を聞くと
忘れられない名前になる、吉田璋也。
最後に、人柄を偲ぶため
民藝館の入館パンフレットの写真を
添えておきたい。
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